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第六十六話 閑話:さよならライブ

  街ヒルビンを去る前に、私とベクトがお別れライブを開くこととなった。

 最初は知っている事を聞き出そうと話し合うつもりだったのだが、何故かアイドルの話になり、こうなったのだ。


  アイドルというのは、確かに私も持っていた夢の一つだ。

 とは言っても「なれたら良いな、やってみたいな」程度に思っていた事柄。みんなもそうやって想うぐらいの時はあったよね?

 ベクトは「それを実現する機会があったのでやった」との事だ。


  この街に来てから私はバックダンサーぐらいしかしていないのだけど、そんな素人がやって良いものなの? とは思う。

 が、ベクトは大丈夫と気楽なものだ。


「今回のライブはお金を取らないから、素人のアーリィでも大丈夫……ま、少し練習ね」


  と、的確なベクトの指導の下、たった数時間で今回の流れとやるべき事だけを体と頭に捻じ込められたのだった……ナニヲサレタカ、オモイダシタクナイデス……

 私に色々と捻じ込んでいる時に、ちょくちょくベクトはどこかに行っていたのだけど、どうやら、私達の衣装とライブの場所確保をしていたとの事。

 ベクト、有能過ぎない?




  と、色々やっていたら、何時の間にか私は衣装を着て、ベクトと一緒にステージに立っていた。

 観客は大入り満員御礼というやつだ。つい半日前にやろうと言ったばかりなのに……ベクト恐るべし。

 ちなみに、最後尾の柱の陰にルシードとルクリュイーズ少年が居るのを、私は見逃していないぞ。


「ヒルビンのみんな、急なのに集まってくれて有難う!」


  ベクトの声に、観客……大会で出ていた闘士もちらほら居るな……が割れんばかりの声援で答える。

 「ベクトちゃんの為になら!」「気にしないで!」「ベクトちゃん結婚してくれー!」

 と好意的な声だ。


「ちょっと紹介するね。この子が……私の親戚のアーリィ! 先日の魔物が乱入した大会の時に見た人も居るかもしれないね」


  親戚か……ベクトとファミリーネーム違うし、そんな所が妥当かな?

 え? みんなに挨拶しろって?


「あ、え~と。アーリィです! ベクトを探してこの街にやってきました。宜しくテンキュー!」


  訳の分からない挨拶になってしまったが、それなりに受け入れたくれたようだ。


「それでちょっと思い立って、急だけどライブを開くことにしました。ちなみにアーリィは素人で練習も殆ど出来てないけど、温かい目で見てくれると嬉しいな」


  あははと笑い声と共に「いいよー」「がんばれー」とか言ってくれている。

 そもそも、アイドルというのはまだまだ始まったばかりなのだ。アイドルを長くやっている子でも、まだ一年も経過していない。

 言うなればみんな素人なのだ。だから、こんな私でも受け入れてくれる。


「それじゃ始めましょう! ミュージックスタート!」


  魔法による演出でステージが彩られる。さあ、ここからは一生懸命歌えば良いのだ。

 聞き惚れるような歌声でなくても良い。目を奪うような踊りで無くても良い。

 観客に、私の心と気持ちを届ける気持ちでいれば良いのだ。

 評価なんて気にしなくていい。



静かな夜にキミの声が 今も心の奥で響いてる


夜空の下で交した約束 永遠に忘れない


涙の雫が頬を伝うけど 君の笑顔が私を支える


別れの時が来ても 再開の夢を胸に抱いて


たとえ触れる事が叶わないとしても 心は一つ 君と私の未来は輝いている


夜明けの光が導く道を 共に歩む日を信じて……



  別れと再会の希望を、今日夜遅くまで、ベクトと一緒に歌い続けた。

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