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第五十八話 強者選別闘技祭 準決勝後編

  晴天の中の準決勝。

 盛大な声援という戦士にとっての祝福と、戦いを物語として描く歌声をBGMに、ルシードと少年の戦いが繰り広げられていた。

 負傷はルシードが受けた頬から首筋にかけての負傷のみで、まだ勝負を決するものではない。だが、勢いはルクリュイーズ少年が押していた。


  距離を空ければ少年の魔法攻撃によって流れを取られてしまう。しかし、ルシードの本領は突撃からの一撃離脱だ。

 今はルシードと少年が距離を離さず剣劇を演じている。ルシードの方が体格、経験、力、そして双剣というのも有利で少年を押しているのだが決め手に欠けるようだ。少年は必死に耐えながらも鋭い目線を配り、反撃のチャンスを伺っている。


  剣劇の最中、ルシードが双剣を振り切って脇腹に明らかな隙が生まれた。

 恐らく誘い。だが少年は敢えてその誘いに乗るようだ。


「おお!」


  普段からは想像もつかない程少年は熱くなっていた。気合の叫びと共に、ルシードの誘いと解っているスキに打ち込んだ。いや、ただの剣ではない。いつの間にか詠唱した魔法の刃を剣に乗せていた。

 恐らく受け止めようと横から逸らされようと、触れる全てを破壊する。魔法的力技だ。


  どうするのかルシード! その瞬間、この会場の観客の誰もがルシードを見失った。

 魔法ではない。何をしたのかは直ぐに分かった。

 大きく下がっただけ。

 ただそのスピードが余りに早かった為、遠目の私達にすらその姿を見失ったのだ。


  少年の攻撃が空ぶる……いや、魔法の刃が飛んでいた。

 破壊力以外にも、避けられた場合に遠距離攻撃となるように考えていたのだろう。少年は自身の攻撃がルシードを超えたとか考えず、油断していなかった。


  ルシードは迫る魔力の刃に対して、一刀を投げ付ける。

 甲高い音が歓声はおろか、謎魔法で拡大された少女隊の歌声さえ掻き消し、魔力の青白い光が二人の前を激しく炸裂した。


  剣の訓練をしているとはいえ、素人に毛が生えた程度の私がルシードの動きを追えたのは、きっと何時もルシードを見てきたからだろう。ルシードならきっとこう動く。

 炸裂した光の中に飛び込んだルシードは、先程の少年の突きに対して、本物の突きはこうだと言わんばかりに突きを放った。


  散った魔法の光を切り裂き、光の尾が少年を通り越して描かれる。

 少年は、まるで車に勢いよく撥ねられたかのように飛び、倒れ伏した。

 もしかしてやっちゃった? ……いや、少年は肩に大きく負傷を負っているが、生きていた。

 後でルシードに聞いたら、剣先は肩にずらして、肩タックルで思いっきり吹き飛ばしたんだそうな。


「そ、そこまで! この勝負はルシード選手の勝利とします!」


  司会の人も、少し戦いに魅入っていたらしい。少し判定が遅れた。

 凄い勝負だった。観客の誰もがそう思っていると、この歓声が伝えている。

 少女隊も歌を止めて拍手していた。ちょっと悔し涙が混じっていたのは仕方ないね。


  ルシードが少年をお姫様抱っこしている。少年の治療の為に、スタッフが来るより先に連れて行きたいのだろう。

 少年はルシードの顔を見て、苦痛に顔を顰めながらでも照れている気がする。


腐……


  いやいや、私はその気は無いよ。

 腐教活動なんてしないから、安心してくれ諸君。




「ルー君、大丈夫!?」

「凄くカッコ良かったよ!」

「うん……みんなルー君は凄いって言っていた。私もそう思う」

「ニナ、エミリー、そしてアエニス。ありがとう。僕は悔いは無いよ。それに師匠に一瞬だけど本気を出させることが出来たんだ。次はもっと強くなってみせるよ」


  病室のベットで休む少年に少女隊が囲んでいた。

 少年の負傷は治療魔法でほぼ塞がっている。ただ、流れてしまった血や失った体力や筋肉までは戻らないので暫く安静が必要だ。

 少年は負けたが、その表情に陰りは無い。これからどうなろうと少年は大丈夫だろう。


「ルシードもお疲れ様。凄く頑張ったね。私が褒めてあげよう」

「ありがとうアーリィ。しかし俺ものんびりは出来そうもないな。少しでもサボればあいつに追い抜かれそうだ」


  結果で言えばルシードの勝利であったが、前半の事を始め見た目より余裕があった訳ではないようだ。頬の治療を受けた後は、私が持ってきたレモン水を一気に飲み干すと、疲れで動けなくなっている。


「その前に明日超えないといけない相手が居るでしょ?」

「ベクトだな……」

「勝てそう?」

「……正直判らない。けど、少年が今日これ程の動きを見せたんだ。それに勝った者として恥じない戦いをして見せないとな」


  この後、ベクトの準決勝が行われた。相手はルシードにも劣らなそうな強い人であったが、これまでと同じように攻撃を全て回避し、最後は強烈なカウンターでベクトの勝利となっている。

 明日の決勝。ルシード対ベクト。

 ベクトは何を知っているのだろうか? 何を聞き出せるのだろうか?

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