第五十話 序の口武闘大会
二日後の朝。街の中に数多くある闘技場の一つに、私とルシードはやって来た。
この闘技場はかなり小さい作りになっているが比較的新しく作られた所で、快適に戦えるし観戦も見易いと評判が良い。
「ルシード。今日の体調に問題ない?」
「ああ問題無い。今日の大会にどれぐらいの強者が出てくるか判らないが、やれるだけやるさ」
「怪我に気を付けてね。観客席の高い位置でルシードの活躍を見てるから」
「期待に応えられるよう、頑張るさ」
ルシードは笑顔と共に拳を突き出し、私の期待に答えてくれる。
大会の規模は小さいながらも、観客は結構入っており賑わっている。客層は老若男女と幅が広い。
後方の席はポツリポツリと空いていたのだが、何となく挟まれて座るのを避けて、柱に背を預けて、私は立ち見だ。出店で買った飲み物を適当な出っ張りに置いてある。コップの底に埃が付くのは少し汚い感じがするが、まあ我慢だ。
それに、こういう位置での観戦は、偵察に来たライバルみたいで良いじゃない。っと、大会が始まるようね。
「ようこそ皆さま! 今回はこのヒルビン定例武闘大会をご観戦頂きますことに感謝します」
という訳で、この大会は定期的に開かれている大会の一つで、実力下位の者や初めて挑戦するような者が出場する大会のようだ。定期的に開くことで、実力に恵まれなかった者にも日の目となる舞台に立つ場を与えている様子。とはいっても侮るなかれ。新人が実力を試す機会でもあり、時々この定例大会から大規模大会の上位に食い込むような隠れた強者も出ているのだ。
という訳で、この大会はベクトは出てこないようでハズレだったね。次の大会に繋がるよう、ルシードに頑張って貰いましょうか。
「本日はこの八名が参加者となっております。いつも通り、既に行った抽選でトーナメントを組んでおりますので、後程ご覧ください」
ルシードは……居た居た。特に緊張しておらず、寡黙な中二スタイルを取りながら周囲を観察していた。
他の参加者は、筋肉マッチョから剣士、格闘となかなかバラエティに富んでいる。私が見ればどの人も強そうに見えるのだけど、ルシードから見ればどうなんだろうか?
予定としては、一回戦は午前中に全て行い、準決勝、決勝を午後と一日で全て完了する。
発表されたトーナメントを見ると、ルシードは午前中最後の対戦だ。対戦相手はメラッドとかいう人。どの人がそうなのか、全然判らないなぁ。ま、誰が相手でもルシードが勝ってくれるでしょ。なんたって、ヒョーベイギルド期待の冒険者なんだから。
早速始まった武闘大会。実力というのはどんなもんじゃろなと様子見だ。
ちなみに、私の実力参考はルシードが一番。ヒョーベイならトムさんやドミニク姉さん。キョウスティンなら騎士のアベリックさん等、それなりに高い敷居のはず。
その参考と比較して考えて、誰もがそれ以上ではないが、見劣りしないものであった。
特に、背の低い少年。魔法と剣技を組み合わせた攻撃で、私から見て参加者の中で実力が抜きん出ているように見える。順当に進めば、ルシードとは決勝で当たる相手だけど、ルシードは大丈夫かな?
一回戦だけでも見ごたえがあったが、とうとうルシードの出番だ。
「一回戦最後の対戦は、メラッド選手vsルシード選手。特にルシード選手は飛び入りのこの街で初参加と実力が未知数です!」
相手のメラッドさんは……パワータイプの斧使いのようだ。あれって、もしマトモに当たったら即死だよねぇ……大丈夫かな? ルシードの実力は知ってるけど、メラッドさんは知らないから、少し不安を覚える。
ルシードとメラッドさんが対峙する。ここからじゃ判らないけど、何か会話を交わしているようだ。恐らくメラッドさんが挑発し、ルシードはそれをスルー、メラッドさんが癇癪を起しているといった所か。
「始め!」
開始の合図と共に動いたのはメラッドさん。斧を力任せに振り下ろす。その筋力により攻撃スピードと破壊力は恐るべきものがあり、爆発でも起きたかのような音と衝撃を発生させた。
もし受けていれば、防御とか関係無しに死に至るような攻撃だった。しかしルシードはメラッドさんの後ろへ移動している。
メラッドさんが背後だと気づいた瞬間、斧を振り回そうとしたが全くルシードの速さに追いついていない。ルシードが稲妻を思わせる速さでメラッドさんを駆け抜けると、メラッドさんの背に大きな二刀の傷が付けられていた。
傷の痛みに呻き、派手な音を立てながら斧を落とし、ゆっくりとメラッドさんが倒れた。
「そこまで! 勝者、ルシード選手」
歓声が上がる。この闘争の街でもルシードは実力を示したのだ。その実力に対する期待がこの歓声だ。私も何だか誇らしい。
観客席の最前列に居た若い女の子たちが、ルシードに好意の歓声を上げ、ルシードは何気にその歓声に手を振って応えていた。
「何デレデレしてるのかなールシードは。まだ一回戦だよー」
何となく引き攣った声が出てしまいました。失礼。




