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第四十七話 何やってるの!?

「街の中でお前の姿が危うい立場になっている可能性も有る。念のためフードを深く被って顔を隠しておけ。暑さを凌ぐ為で話は通るだろ」

「確かにそうかも」


  良くあるパターンなら、犯罪を犯して追われているベクトか私に似た人が私とすれ違い、誤認されて私が追われたり投獄されるのよね。私は無実を訴えるけど、聞き入れられず獄中生活は続く。そうこうしている間に第二の犯行が起こってしまい~っと、ここまでにしよう。私は自制できる女なのだ。

 フードを深く被る。これで私の顔は陰で隠れてしまっているはずだ。が、これ結構熱気が籠るなぁ。


「どう、ルシード? これで分からないと思う?」

「確か、体格は違うんだよな?」

「そうそう。なんとなくは似てるけど、そもそもサイズが違うのよね」

「なら大丈夫だ。これなら俺でも一目だけじゃ気が付かないだろ」

「よし。それじゃ行きますか」


  街ヒルビンの門自体は他の街と大して変わらない様に見える。だが、壁に刻まれている傷や強い衝撃を受けたような跡、謎のシミが薄っすらと残っている所を見ると闘争の街の名に恥じ無さそうなさそうだ。

 門に控えている門兵は一人。陰の中で休みながらの為その表情はここから読み取れないが、屈強な上半身をさらけ出し、どっしりとした下半身が体を微動だにさせずに支えている。よく筋肉重視の体格はスピード不足で翻弄され、その力を生かしきれずにカマセになってしまう事が多いが、この人はどうだろうか?

 その門兵にルシードが近づく。


「……最近はこの街にやってくる奴は珍しくなっていたんだ。この街に用か?」

「ああ。後ろに居る奴の行方不明だった知り合いがこの街に居るかもしれないって情報があってな。邪魔になるかもしれないが、暫くこの街を見学させて欲しいんだ」

「この街の事は知っているんだろ?」

「知っている。だが、俺達にその気は無い」


  門兵さんは鋭い眼光をルシードに向けていた。恐らくルシードの強さを測っているのだろう。

 もしかしたら、この街の中では喧嘩をふっかけられるのは当たり前なのかもしれない。強ければ正義という所だ。案外、この門兵さんは私達の心配をしてくれているのかも。

 門兵さんはニヤリと笑みを浮かべた。


「お前たちにその気は無くても……実際体験すれば考えを変えるかもな。良いぜ入りな」

「俺達が何処から来たとか調べなくて良いのか?」

「お前らが何者でも構わんよ。調子に乗っておさわりとか、変な事をしてたらその時潰すだけだから安心しな」


  捕まえるとかじゃなく、即潰すのね。恐ろしい所だわ。

 ん? おさわり?


「通行料を払ってもらう。二人分だな」

「ちょっと高くないか?」

「一回分のチケットも兼ねてるからな」

「チケット?」

「ああ、チケットだ。っと、お前らはタイミングが良いな丁度時間だ。ついでだから案内してやるよ。とりあえず名乗っておこうか。俺の名はタグ・パパリア。ま、宜しくな」

「俺はルシードだ」

「私がアーリィ。宜しくね」


  がしっとルシードと私の肩を掴むタグさん。余りに脈絡なく掴まれたので、思わず「うひ!」っと変な叫び声を小さく上げてしまった。


「ああ、女だったか? すまんすまん。だが、ちょっと来い」


  見た目通りの強い力で、問答無用に私とルシードを連行する。向かっている先は……小さなコロシアムだろうか? は! まさか、早速「力を見せてみろ」とかの展開になるのだろうか? キョウスティンでマーベルさんに教えて貰った基本の型の練習を続けてはいるが、実践はまだまだなのだが。

 入ってみると既に大勢の観客が埋まっていた。

 思っていたのと違うことが一つ。皆が何やらどこかで見たようなピンク色の半被を着ていた。筋肉モリモリなので余り似あってはいない。ルシードも想定と何か違う様子でどうすべきか迷っているようだ。ただ、万が一逃げ出すために私の手を握ってくれているのが、ちょっと嬉しい。

 っと、ここまで私達を連れてきたタグさんも、同じくピンク色の半被を着ている。思わず私が声を掛けた。


「タグさん。これは一体?」

「それは勿論……ベクトちゃんのライブに決まっているだろ!」


  ざわめきが急に静まり、コロシアム中央の場に少し冷たい霧が拭き流れる。

 その霧の中に人影が現れると左右に小さな爆発が吹き上がり、銀と金のテープが宙を舞い、場……もうステージと言おう。ステージをキラメキで彩る。再び風が吹き流れ霧が晴れると、そこにポーズを決めて立っていたのは……


「何やってるの、ベクトぉ!」


  ベクトは青を基調とした、可愛さとカッコ良さを併せ持つ衣装を身に纏い、何処からともなく流れる曲に合わせて、踊り歌っていた。



愛の魔法で 心を照らす光


君と踊りたい この夢のステージ


キスのリズムで 愛を奏でよう


私たちの歌声 世界を包むメロディ……



  観衆の声援を一身に受けて、ベクトはアイドルやってました。

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