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仮定のアーリィは今日も異世界の空を飛ぶ  作者: 田園風景
世界最大の街キョウスティン
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第四十二話 報酬

  ルシードとアレクシス様には「冗談冗談」と言ってあげたら、二人とも愕然とした表情を浮かべて轟沈していた。

 そんな二人を放置して、今回の結果をマーク様より聞いたのだ。


  騎士達の多大な被害と引き換えに、集落ハフナーは盗賊より解放された。とはいえ、集落の被害は甚大。住民の半数以上が殺害され、生き残った人も傷を負い酷く疲弊している。建物が破壊され食料や物資も盗賊達により酷く消耗されていた。

 いっそハフナーを放棄して街に保護しようという話も出ていたが、長い話し合いの結果、集落を再建することとなったそうだ。

 残された住民を助ける為、警護と力仕事の為に騎士達が集落に滞在。街からも職人が協力し物資も供給され、直ぐにとはいかないが、半年以内には人口は兎も角、集落として復興を果たすものと思われる。

 ここまで手厚く街が援助するのは、今回の復興作業を復興のテストケースとしたい思惑もあるそうだ。復興作業にあたり、どんなことが問題になりそうか、今回で確認するということだね。

 マーク様は、漠然ではあるが最近の不穏な流れを感じている。もしかしたら、街や集落が災害を受ける可能性だってある訳だ。なので、余裕のある今の内から、出来る事をしておきたいそうな。

 立派です、マーク様。

 そうそう。私達が捕らえた盗賊の一人。推測の通り只の盗賊では無かったようだが、拷問に耐える訓練を受けていたようで、とかく口が堅く有益な情報が何も入手出来ていないだそうな。時間を掛けての取り調べとなるだろうとの事。

 こんな所かな?




  私が起きた時点でもう動くのに問題無い状態ではあったのだが、念のためという事で更にもう一日医務室で休むこととなった。

 その間に尋ねて来たのはアベリックさんとセイドさんだ。特にセイドさんは、足に木片を生やされるという怖い状態になっていたが、尋ねて来た時には元通りになっていた。どうしたのか聞いてみると「該当部分を切り離して治療魔法で治した」と、聞くだけで痛そうな対処方法だった。


「あ、あの。痛く無かったんですか? 足はちゃんと動きますか?」

「心配してくれてありがとう。勿論、処置後は後悔するほど痛かったが、仲間が助けてくれると信頼していたからの。なんとか耐えることが出来た。今は足もこの通り動いておるよ。騎士として活動するには、かなりの養生期間が必要になりそうじゃがの」

「ああ、それでも良かったよ。アベリックさんもありがとう」

「気にしない。騎士として指示されたってのはあるけど、色んな経験が色々出来て良かったと思ってるよ。キミと一緒に居られたってのもあるけどね」


  アベリックさんは顔も性格も良いのに、そのナンパ気味な所を直さないと、そのうち刺されちゃうよ。

 後ろからルシードが睨んでいるし、つっこみにならない内に、あははと笑って誤魔化し話を終えておこう。




  半ば無理やりに押し付けられた今回の依頼であったが、報酬はマーク様より頂いている。


「この手紙はヒョーベイ運営の責任者に渡して欲しい。今回の事情説明と、お主達が大いに助けになった事への感謝を書いてある。それと、報酬金と装備一式を貰ってくれぬか?」

「有難く、頂戴します」


  貰ったお金は相当な大金だ。そのまま持ち帰っても良いが、この街に預金としても良いとの事だったので、万が一のことを考えて、報酬の半分を預金として預かって貰うことにした。


 装備一式は騎士装備ではなく、私達の様式に合わせたものであった。


 ルシードは動きの妨げにならない、要所のみ鉄板で保護したレザーアーマーと白いマントだ。着てみても違和感なく、これまで着ていた黒い皮ジャケットとマントを重ね着した格好は、黒と白が合わさって最強に見える。ただ、ちょっと暑そうではあるが。

 剣も、比較的細く、軽さと鋭さを重視した剣と、丈夫さを重視した剣。この二本の剣は重ねる溝が彫られており、重ねて持つことで一本の剛剣となる細工が施されていた。この辺りはルシードがとても気に入っている。

 私の装備は鋼線で補強されたレザードレスだ。各所に剣のアクセサリーが縫いこまれており、かなりオシャレである。空を飛ぶ時も考慮してベルトが追加されており、ベルトを締める事で強い風の中でも問題無いようになっていた。

 剣はいままで使っていた練習用のイワシ剣のように、刃の無い剣である。ただ、見た目は凄くキレイ。

 装備の見えない所にはこの街キョウスティンのマークが入っており、このマークを見せる事で、この街の騎士や兵士が協力してくれるとの事。


 いや~、色々貰っちゃったねぇ。今回の苦労分として遠慮なく活用させて貰おう。


「良かったらアーリィ嬢。アレクシス卿に嫁がぬか? あれも結構お主を気に入っているようじゃし、夫人となればこの街の貴族になれるぞ?」

「折角のお誘いなのに申し訳ありませんが、遠慮します」

「う、うむ。えらくあっさりと断るのぉ」


  ヒョーベイでも貴族へと誘われたことはあるけど、私には地球日本に帰るという目的があるからね。お誘いは嬉しいけど、それに乗る訳にはいかないのだ。いや、アレクシス様は嫌いじゃないよ。寧ろ好意的な印象だってある。それでも断るんだから、きっぱり断った方がアレクシス様の為にも良いでしょ。


「仕方ない。じゃが、気が向いたらいつでも言うのじゃぞ。儂らは歓迎するぞ」

「その心遣いに感謝します」

「さて。この後はどうするつもりじゃ? ヒョーベイにすぐ戻るのかの?」

「いえ。折角なのでこの街に少し滞在します。その後ですが、ちょっと行ってみたい所があるのです」


  盗賊頭目のゲルトルが言っていた街ヒルビン。彼奴は私に似た顔の事を言ってから「報告のあったヒルビンに居るという奴」と言っていたのだ。私に似た顔と言えばガリアちゃんかベクトのどちらか。そのどちらかが居る可能性が有るのだ。


「という訳で、ヒルビンに寄ろうと思っています。ルシードも良いよね?」

「ああ。俺は良いが……ヒルビンか」

「どんな所か知ってるの?」

「ああ。闘争の街と呼ばれる所だ。強ければ正義というとんでもない所と聞いている」


  とっても世紀末な街なのね。そんな街にあの二人が居られるのだろうか? 私だと簡単に排除されて追い出されそうではあるね。


「あの街、元は魔獣や魔物に対抗するために戦う力を重視していたのじゃが、時経つ内に力自体が目的になってしまったのじゃな。あの街にはキョウスティン王宮も干渉できん。覇権の傾向が全く無いというのが救いじゃな。」


  なんと、マーク様ですら伝手が無いとは……とりあえず行ってみるしかないかな。行くまでにルシードに戦いの稽古を付けて貰おう。せめてルシードが戦うことに専念できるようにね。




  こうしてキョウスティンでの短い滞在は終わった。とはいえ、この世界に影響力のある人に伝手が出来たのは良かったと思う。それに私に似た人が居るかもしれない居場所も知ることが出来たしね。

 この雲一つない晴れた青空のように。これからの旅も気持ちよく続けることが出来れば良いのだけどな。

ここまでお読み頂き有難うございました。


閑話の不定期投稿を挟んでから、次章に移ります。




宜しければブクマや評価等を宜しくお願いします。


本作品を書き続けるモチベーションとなりますので。

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