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仮定のアーリィは今日も異世界の空を飛ぶ  作者: 田園風景
世界最大の街キョウスティン
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第三十九話 ヴェタリー猛攻

  ヴェタリーの武装はシンプルに両刃剣だ。そこらの盗賊も同じ剣を持っていたので、恐らく特別なものではない。

 防具は付けていない。先程まで盗賊に紛れていたので、粗末な服装のみだ。

 対峙しているのはルシードとセイドさん。ルシードの二刀とセイドさんのショートソードで激しく攻め立てるが、その攻撃全てがヴェタリーの体を透過してしまう。ヴェタリーは一切躱そうとせず、乱雑に剣を振るってきた。


「くそ! こいつは一体何なんだ!?」

「被害者の殆どは殺されているので、ヴェタリーに関する情報が少ないのです。成程、スキル持ちでしたか……」


  透過するスキル? そんなのどうやって倒せば良いんだろうか?

 まてまて。まだ慌てるような時間じゃない。細かく考えてみよう。

 ヴェタリーは攻撃は透過しているが、自分の武器や服は透過していない。何でも透過するのなら何も持つことが出来ず、いや~ん、えっちぃっな話になるだろう。いや、青年男性のそんな姿やセリフは見たくないが。

 つまりは、透過する物としない物を何らかの方法で判別しているに違いない! ではその判別方法は……解らん。ちょっと私が考えた程度で解るのなら、今対面しているルシードやセイドさんが何か掴みそうなものよね。


「セイドさんは、そのまま本体を!」

「判った! そっちは任せるぞ」

「くっ……うざったい手を」


  おや、私が考えている間にヴェタリーを追い詰めていた。

 その戦法はある意味単純。ヴェタリーの持つ剣を強く打って、無防備にしようとしている。体は透過しちゃうが、剣は普通に当たるのだ。であれば、まずはそこからという事ね。セイドさんが体を攻撃するのを続けるのは念のため。

 ルシードの二連撃が、とうとうヴェタリーの剣をその手から弾き飛ばす。


「ちぃ! やるな」


  ヴェタリーは壁際に下がって、落ちていた他の盗賊の剣を拾おうとするが、それを阻止しようとするのがセイドさん。手を狙って突きを繰り出した。手への攻撃は透過するが拾おうとしていた剣は弾き飛ばし、再び素手となる。


「このまま取り押さえます!」


  セイドさんとヴェタリーが揉み合いになり転がる。素手ならヴェタリーは透過しない? と思ったらセイドさんを透過してヴェタリーが立ち上がる。

 セイドさんは……立ち上がれないでいた。足に木片が生えている為だ。ゲルトルの口に木の板が突然生えた時と同じだ。突き刺した感じは無く、血も殆ど流れていない。


「……思った以上にやるな。腹に入れてやるつもりが、躱されて足になるとはな。ま、とりあえずは動けないだろ」


  しかし、武器を飛ばしたと思ったら素手でも十分に危ない奴だった。こうなると攻める方法も無くなってしまい、どうしたものか。

 ヴェタリーは再び拾った木片をお手玉しながら、ゆっくりとルシードに近づく。


「好みとしては剣で切り刻む方で、埋め込む方はそれほどでもないんだよ。ま、一応は口を封じるって事だから仕方ないか」


  これはどうやって倒せば良いんだろうか? ヴェタリーの伸ばす手を避けながらルシードは攻撃を続けているが、未だに有効打は与えられていない。ヴェタリーが見えていない攻撃も透過している所を見ると、意識外からの不意打ちも無駄になりそうだ。

 攻撃を完全に無視して詰め寄るヴェタリーに、とうとうルシードが部屋の角に追い詰められる。


「ちょこまかと動きは早かったが、これで終わりだ。ま、良くやった方だと思うぞ」

「くっ……」

「ちょ……待ちなさいよ!」


  私が出た所で何も出来ないのは解っているが、思わず飛び出してしまった。が、それを押し留め代わりに飛び出した人が居た。アベリックさんだ。


「セイド! 与えられた使命に従って二人を守るぞ! 這ってでも動け!」


  アベリックさんはヴェタリーの後ろから体当たりするが、同じように透過する。透過した先に居たルシードと合流した。

 ちなみに、人質にしていた盗賊は、拘束を増やし、もはや動けない状態にして端に転がされている。


「ルシード。アーリィさんを連れて逃げてくれ。盗賊の頭目を倒すという目的は達成しているんだ。後は、二人が無事に逃げるだけだ」

「お前一人じゃ殺されるだけだ。二人で……」

「悔しいが、倒すのは無理でも時間稼ぎ程度は出来る。いや、して見せる! 私とセイドに与えられた使命は二人の無事の確保だ。使命を果たさせてくれ」

「アベリック……」


  そのやり取りを悠長に見ていたヴェタリーは、木片を持って詰め寄る。


「話終わった? じゃ、順番変わるけど、先お前からね」


  頭を目掛けて木片を突き出すヴェタリー。アベリックはルシードの前に立ち、頑として動かない。

 私達はヴェタリーに押されていて気が付いていなかったが、外から激しい足音を立てて応援が近づいていた。蹴飛ばされて激しい音を立てるドアに、皆が思わず其方へ向く。


「部屋の中に居る者! 全員動くな!」


  応援とは、盗賊ではなくキョウスティン王宮騎士団であった。大勢の騎士が部屋に雪崩れ込んできて、最後に『最強』のアレクシス様が入ってくる。皆、鎧の至る所に銃弾による物と思われる傷が付いていた。特に持っている盾はボロボロだ。外での戦闘がどれほど激しかったかが窺い知れる。機能を損なっていても盾を捨てないのは騎士としての矜持なのだろうか。


「あれ、外はもう突破されたの? 銃があるとはいえ、盗賊じゃ最強様相手は無理あったか」


  アレクシス様と大勢の騎士団と対峙しながらも、全く焦りが無いヴェタリー。ただ、ルシードとアベリックさんに攻撃する気配が無くなったのは助かった。

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