第三十七話 あの作戦、そうアレだよアレ
状況を整理しよう。拳銃を持った男は状況から盗賊の頭目か、かなり重要な地位に居るようだ。今は剣も抜いて応援に来た二人に指示している。応援に来た二人は剣も持っているようだが抜刀せず、アサルトライフルのような銃を構えてこちらに向けている。
今は三人だが、その内応援が駆けつけてくるかもしれない。直ぐにでも何とかしないと、状況は悪くなるだろう。だが、単純に飛び出せば恐らく蜂の巣。
なら、これならどうだ。
「いつでも良いぞ、アーリィ!」
「行ってらっしゃい、ルシード」
ルシードが持った私の剣をスキルで操り飛ばす。天井すれすれを伝い、三人の後ろの壁に突き刺さった。
私のスキル:フロートソードの飛行だが、速度だけに集中すれば相当な速さで飛ばせることが出来る。音速とかじゃないけど、人が反応するにはちょっと難しい速度だゾっと。
「ぐぇ……」
その速度で飛ぶ剣を掴んでいたルシードは、瞬く間に三人の背後に移動していた。移動ついでに一人の胸に剣を刺し埋め込んでいた。ひゃー痛そう。
「てめぇ!」
残った二人が銃を向けるが、ルシードは刺し埋め込んだ剣を振り回し、まだ僅かに息のある男を振り飛ばした。
ルシードの盾となって男が蜂の巣になり流石に息絶える。一方、陰を這うようにしてアベリックさんが距離を詰めていた。
「ほら、不注意だ!」
アベリックさんのショートソードを肩に受け、痛みのあまりにアサルトライフルを落とした。続いてのヤクザキックで壁際に叩きつけられダウン。アベリックさんは取り押さえに入った。
残り一人。拳銃に加え剣も抜刀した最初の男だ。
「無力化させて貰うぞ!」
双剣で攻めるルシードに対し、拳銃と剣で捌き、僅かな隙に銃を打ち込み剣で払う。かなりの攻防、周りに細々と物があるせいでルシードがスピードを出せないのもあるけど、思ったよりこの男は強い。
「奇襲には驚いたが、どうした? 早くしないと俺の仲間が駆けつけるぞ」
「くそっ、盗賊なんかに負けん!」
速度では完全にルシードが上回っているが、男は守りに入っており、なかなかその守りを崩せないでいた。時間さえ掛ければ倒せそうだが、今回は時間が惜しい。何時盗賊の応援が駆けつけるか判らないのだ。
早く倒そうと、ルシードは無理な攻撃を加えるが、その焦った攻撃を男に躱され、反撃を受けてしまっている。
ならば、ここでフォローを入れよう!
「ルシード! アレ行くよ!」
「判った!」
ルシードを送った剣を再び操り、男の足を払うように剣を回転させながら飛ばした。
「また空飛ぶ剣か!」
男は、私とルシードのやり取りを聞いて何か来ると備えていたのだろう。不意を突いたはずの私の剣を跳ねて回避した。
しかし、その跳躍は大きな隙だよ。ルシードは勢いを付けて跳躍し、男に双剣を思いっきり叩きつける。
男は拳銃と剣で受けようとしたが受けきれず、吹き飛んで木箱を破壊して突っ込んだ。
「ふぅ。ところでアーリィ?」
「ん? 何?」
「アレって何だったんだ?」
「知らない」
私はとっても良い笑みを浮かべて答える。
実は打ち合わせとか思惑とかは何も無かったのだ。ただ、私が何かするタイミングをルシードが知れば、後はルシードが何とかすると思ってさ。結果良ければそれで良いのだ。次も宜しく!
さって、状況確認。一人は胸を剣で貫かれた上に銃弾を浴びて完全死亡。アベリックさんが取り押さえている盗賊は負傷を負っているが生存で問題無し。で、盗賊頭目とおぼしき男は……あれ? 外からドタドタと大勢の足音が聞こえてきた。これって。
「お頭! お待たせしやした!」
「遅えぞ!」
部屋に雪崩れ込んできたのは盗賊多数だ。私たちを見た盗賊は抜刀する。応援に銃持ちが居ないのはラッキーか。
アベリックさんは、咄嗟に取り押さえていた男に剣を突き付け人質にした。それを見た盗賊たちは足を止めてしまう。が、盗賊頭目は助けられたようだ。ルシードの剣を受けきれなかったか、脇腹から血を流しているが、到底致命傷には見えない。
「最後の一歩、遅かったなぁ。俺の仲間が到着しちまったぞ」
「くそっ」
「ま、ここまで健闘したんだ。切り刻んでやる前に名乗ってやるぜ、俺様の名はゲルトル・ワルター。いずれ高名な騎士として名を馳せる男だ。そんな偉大な男に殺されることを名誉に思うんだな」
「集落に非道を働く男が騎士とは笑わせるな」
ゲルトルは余裕たっぷりに、拳銃をリロードしながらルシードに答えた。
「ああ、ここの住民にはちと悪いことをしたな。だが勘違いは困るな。悪さをしたのは俺達じゃねぇ。かき集めた盗賊共が、与えてやった銃に浮かれて勝手にやった事だ」
盗賊の一団と思っていたが、どうも違うようだ。ゲルトルや駆けつけていた二人、盗賊の中に居た妙に服装が綺麗なのが居たが、それらが盗賊とは違う集団?
「さて、お話はここまでだ。お前たちを生かしておけば、俺の……いずれは帝国の障害になるかもしれん。死んでもらうぞ」




