第三十六話 戦闘開始!
ここからは見えないが集落ハフナーの外で始まった戦闘は、想定しなかった盗賊の激しい銃撃で開始している。
スキル『最強』を持つアレクシス様が居るから最悪負けは無いと思うけど、どうにも心配だ。異世界モノで銃による一方的な蹂躙があるからなぁ。せめて、サテラ君で集落の門を内側から破壊しようか? いや、ここからではスキルの射程外か。やるなら、もっと近づかないと……
「アーリィ。気になるだろうけど余計な事はするな。俺達の役目を果たすことに集中するんだ」
「だって。きっと被害が凄く出てるよ」
「作戦に参加した騎士たちの誇りを立ててやれ。ただでさえ、盗賊頭目を討伐するという名誉を俺達に譲っているんだぞ」
「そうだね……うん、わかった」
ルシードの言うことは最もだ。私が出来る騎士達への手助けは、私に与えられた役目をしっかり果たす事。あっちに行って手助けする事じゃない。
集落内の盗賊は、想定通り外での戦いに注意が向いて、殆どが其方に向かっている。私達の目標は、下に居るであろう盗賊頭目だ。いや、場所的に頭目と思っているだけで、違うのかもしれないけどね。違った場合は、頭目の場所を聞き出してまた移動する必要があるから手早くしないと。
アベリックさんが先に降りる。するすると音も無く降りる姿は騎士という事を忘れそうだね。怪盗でもやっていけそうだ。
何も動きが無いことを確認してからルシードが降り、私がルシードとセイドさんの手助けで降りて、最後にセイドさんが降りてきた。
物陰に身を隠して室内を伺うと、何やら二人が言い合っているね。残念ながら光加減で顔が見えないのはお約束か。くそう。
「……この件について、我が主は関与しない」
「は! 新顔クソガキのお使いが。俺たちの手柄を横取り出来ないと見るとそれか!」
「お前達はやり過ぎた。今回の件は上にも悪影響を及ぼすだろう。既にこの国の騎士達が来ているようだし、今のうちに撤退する事を推奨する」
「いずれ関係無くなる! 問題無い!」
「……忠告はしたからな。掴まったとしても話すなよ。そうすれば命だけは保証する」
一方の男は奥の扉の向こうへと消えていく。残ったのは盗賊然とした男だけだ。ん~この位置だと変わらず顔が良く解らないけど、あの服装はどこかで見た気がする……まいっか! 捕まえてしまえばわかるでしょ。ルシードにアイコンタクトを送ってそろそろ動く準備をする。
「くそが……だが見てろよ。今ですら十分なデータは揃っているんだ。今の戦闘でこの国の騎士団を潰せば、今後の戦いでも勝てる事を証明する実績が出来る。成果としては十分過ぎるぞ。そうなりゃ、新顔のクソガキなんぞがこれ以上デカい顔出来な……」
あっと言う間だった。ルシードが音も無く物陰から出たと思ったら、次の瞬間には男の背後に立ち、首筋に剣を当てていた。
「動くな、声を上げるな。質問するのはお前じゃなくても良いからな……」
「な……誰だてめぇは」
ルシードは答えず、まず周りを軽く確認して他に誰も居ない事を確認している。誰も居ないようで、此方に合図を送った。セイドさんが物陰から出て、ルシードをフォローする位置に立つ。アベリックさんは私の護衛だ。私はアベリックさんに守られながら事態の成り行きを見守っている。荒事に私は何も役に立たないからねぇ。役目があるとすれば、うっかり人質だろうか。やだよそんな役目。
「頷くか首を振るだけで答えろ。お前ら盗賊の頭目は誰だ。居場所を知っているか?」
「……貴様ら、騎士団の潜入か……ぐぅ!」
うっひゃ。男の耳を浅く突き切って、余計な言動に対して忠告する。ルシード容赦無いねぇ。まぁ、集落の方をあんな扱いにしたのだから多少はね。男は痛みに身を捩っていたが、ルシードがそれ以上の動きを許さない。
「次、余計な事を話せば耳を落とす。再度聞くぞ、頭目の居場所を知っているか?」
男が小さく頷く。知ってるのだ。ん? なんか男の手が腰に入ってる……まさか!
「発言は許すが、小さく答えろ。何処にいる?」
「ルシード! そいつ銃を持ってる!」
騎士団を迎え撃っている盗賊が大量の銃を持っているのだ。こいつも持っていてもおかしくは無いか。腰に帯びていた恐らく拳銃を、服で隠しながらルシードに向けていた。
「ここだよ、馬鹿め!」
乾いた、意外に小さい発砲音が鳴り響く。同時にルシードは身を投げ出して回避していた。
セイドさんがすかさず男にショートソードを振るうが、上手く回避される。ただ、ルシードへの追撃は防げたので良しとしよう。
男は更に下がって、物陰に身を隠す。
「おい、侵入者だ!」
男の呼び掛けに、奥の扉からアサルトライフルらしきものを持った盗賊二人が飛び込んでくる。
これを見て、ルシードとセイドさんは私の側へ退避した。
「隊長……違った頭目! 侵入者ですか?」
「確認できた範囲で四人! 剣持ち最低二人、銃は未確認だ。背後洗うのに一人残して残りは殺せ!」
さて、なかなか困った状態になったぞ。私達は銃持ちに距離を開けて詰め寄られようとしている。今は二人応援が来ただけだが、時間が経てば更に多くの応援が来るかもしれないのだ。
「つ~ま~りは。速攻でやるよ、ルシード!」
私の剣をルシードに投げ、それを見事に宙で掴み取った。
まだまだ、これくらいじゃピンチじゃないよ。
「ああ、任せろ!」




