第三十三話 休息と考察と休息
用意されていた客間は、私の貧弱な語彙力では表現できない程良かった。
部屋全体は白を基調として、配置されたモノトーンな家具はシックなデザインをしている。部屋の脇に配置された花瓶には大きな葉を付けた木が植わっており、白黒の単調になりがちな色彩に彩を与えていた。窓から見える中庭も派手過ぎない花々が咲き誇っている。
「何度言ったか分からないけど、王都と名乗ろうとするだけの事はあるわね」
ベッドやソファーはふかふかだわ、果物もご自由にどうぞで、部屋にシャワーとトイレまで付いていて、驚くべきことに水洗! 世界の良い所をここで牛耳っているんじゃないの? ま、良いわ。その内、この部屋を超える設備のお家を作ってやるんだから。異世界人として!
とりあえずシャワーを浴びさせて貰って、梨みたいな瑞々しい果物を一つ頂いた。美味い!
ちょっと休憩が長引いた気がしたけど、女の子の準備には色々と時間が掛かる物なのよ。許してソーリー。
お隣のルシードの部屋にノック。「……どーぞ」と、少し間があってからの思ったよりいつも通りな声が上がったので入ってみる。
「おじゃましま~。おまた~」
「あふぅ……ちょっと寝ただけで思ったよりスッキリした。やっぱソファーが違うな」
どうやら良くお眠りだったようで何より。
「あ、アーリィ。さっきの話は問題無かったか?」
「うん。問題無かったよ。気にしてくれて、ありがと」
「なら良いけど。じゃ、今後の話だ」
ルシードは少し照れているが、そのまま話を続けてくれる。初めて会ったときは何か固まってたりしてたけど、大分慣れてきてくれたよね。良きかな良きかな。
「今回の話。アーリィとしてはどう思ってる?」
「どうって……まず、不自然な所があったわね。この街の主力ともいえるアレクシス様を盗賊討伐なんかの為に使っている点。一番強い駒を当てる事で人的損耗を減らすって考えもあるけど、万が一を考えるなら普通は騎士だけでやるよね。それでも十分なんだから」
「……思ってたより考えているんだな」
「なによ」
「褒めてるんだよ」
ジト目でルシードを睨む。失礼しちゃうわね。ぷんぷん。
「話を続けるわよ。マーク様の指示でアレクシス様が動いているんだったら、マーク様に何か考えがあるって事よね。私達が知らない事だったら考えるだけ無駄だけど、それらしいことが一つ教えてくれてたよね」
「これまでと違う状況が頻発しているって事だな」
「そうそう。私のスキルについての確認もそうだったけど、盗賊が集落を占拠しちゃったってのもその関連じゃないかしら?」
時々聞く話だけど、偶然が起こる事がある。そこにもう一つ偶然が重なることも有るかもしれない。けど、三つ目の偶然が更に重なるなら、何かしらの共通したものがあると考えた方が良いのだ。
一つ目の偶然が、スキル持ちという私。もう一つの偶然が盗賊の集落占拠。マーク様は恐らくそこまでしか情報を持っていない。けど、慎重を期して指示されているんだろう。偶然かもしれないがそうでは無いかもしれない。慎重に行動してそれが無駄になってもそれで良いのだと。
ただ、私はもう一つの偶然を知っている。
「その盗賊が、実はガリアちゃんが目論む世界征服に関連してないかな?」
「お前の言うガリアってのが、本気で世界征服を実行していて、既に大きな土台を築いて行動しているという前提条件になるが、世界が警戒していない最初に、一番の障害となるだろうココを潰したいだろうな」
「じゃあ、集落を占拠したのは盗賊じゃなくって、盗賊を装ったガリアちゃんの配下なのも」
「……今、想像で考えても仕方ないな。どうせ俺達も集落の奪還に手を貸すんだ。盗賊より強い奴が居るかもしれないぐらいに思っておけばいい」
「それもそうね。さって考える事も考えたし、ルシード。街の観光に行こうよ!」
小難しい事、色々考えていたら知恵熱が溜まってきた気がする。これを晴らすには散策が一番よね。あ、カフェで甘くて冷たいものでも、ルシードと一緒に食べよう。門の近くにあったカフェでも良いかもだけど、ブレッドさんにおススメを聞くのも悪くない。
「もうちょっと考えた方が良い気もするが……まぁ、まだ時間はあるか。急いで考えても仕方ないだろうし、今日の所は休息としよう」
ルシードがテーブルに置いてある呼び鈴を鳴らすと、程なくしてメイドさんがやって来た。街に観光へ出たい旨を告げるとブレッドさんを呼びに行ってくれた。
今日の所は、ブレッドさんの案内の元、ルシードと街を散策。両手に花という事で、私的には中々に楽しい時間となった。天気にも恵まれたし、盗みを働く子供に遭遇するとかのお約束も無くのんびりしたものだ。
明日からは色々と忙しくなりそうだし、今日ぐらいはこれで良いでしょ。




