第三十二話 衰退の世の流れに見える変化
「スキル:フロートソードとは……立場上、世界中のスキルを知っているが、初めて知るの」
「かなり便利そうなスキルだ。頼もしいと言えるでしょう」
うんうん。マーク様、アレクシス様共に好評のようだ。
「さて、スキルを知る目的じゃが……最近の状況との関連を気にしているのじゃよ」
「状況ですか?」
「知っての通り、この世界は魔獣により人の活動が酷く制限され、衰退を続けておる。この状況は長い期間を経て固まってしまい、もはや人が絶滅するまで変わらないじゃろう。しかし最近、その緩やかな流れを変えるような事が立て続けに起こっておる。良い意味でも悪い意味でもな。その一つが見知らぬスキルを持つお主の出現という訳じゃ」
状況が変わるというのは、一つの強い要因に拠る場合もあれば、複数の要因が複雑に絡み合って影響する場合もある。マーク様は私のスキルも要因の一つではないかと思っていたようだ。確かにこのスキルはヒガンちゃんから貰ったモノだ。というより、私自身がこの世界にとっての異世界人なのだから、世界に対して知らない内に影響を与えていたのかもしれない。その事は今は話さないほうが得策かも。
「とりあえず、お主のスキルは影響を及ぼすようなモノではないと判った。有能ではありそうじゃがな」
ニヤリと笑みを浮かべるマーク様。う~む、なかなかにチャーミングな笑みは、目を付けられた感じがするなぁ。便利に使われない様に注意しなくちゃ。
「さて、どちらかと言えばもう一つの方が重要な目的なのじゃ。お主たちが遭遇した盗賊がその一部だったのじゃが、盗賊の本隊が集落のハフナーを占拠しておってな。今までは集落の外に出た奴らを削っていたのじゃが、そろそろケリを付けたいのじゃ」
「占拠された集落の奪還って……そういうのは、街の騎士の出番じゃ?」
「集落への道程が特に細くてな。大人数を送り込むというのが難しいのじゃ。その細い道に色々と罠も仕掛けているようで、解除しながらだと、確実に襲撃を気づかれ防備を固められてしまう」
ルシードは流れ的に協力することになるだろうと諦めている。むしろ、積極的に考えているようだ。私も同じ考えだねぇ。あれこれ申し立ててメリットを上げるというのも出来るかもしれないけど、別にお金や名誉が……多くは欲しいけど、苦労してまでとはまだ考えていない。今回は助けられた借りを返すのと、恩を売るつもりでサクサクっと協力していこう。
「では、どのように進行する予定でしょうか?」
「奪還作戦の正面に立つのはアレクシス卿と騎士隊じゃ。わざと気付かせて注意を引き、別動隊の少人数で盗賊の首魁を落とす」
「まさか、その別動隊ってのが……」
嫌な予感がする。というより、私のスキルという持っている手駒を考えればそうなるよねぇ。
「勿論、お主たちじゃ。お主のスキルで夜闇に紛れて先行して貰う。可能であれば隠密行動に秀でた騎士を付けるが、出来るか?」
「今は思い付きません。良い案があればお伝えしますが、出来たとしても一人二人程度と思って頂ければ」
「判った。何時でも良いので思い付いたのなら儂に伝えてくれ。別動隊は最低お主達二人、最大でも四人として考慮する。具体的な手順は情報漏洩を防ぐ為に開始直前に伝える」
「はい」「承知しました」
私とルシードは頷く。
他の街と違って、この街は外からの人の出入りが少なからずある。なので、盗賊の密偵がこの街にも入り込んでいる可能性があるのだ。知らなければ情報も漏れようが無いのだから、直前の通達とするのは妥当な判断なのだろうね。
「素直に受けてくれて助かるぞ。終わったら相応の報酬を約束する。作戦決行は二日後の深夜とするので、それまではこの城の客間でゆっくり寛ぐと良い」
「マーク様。お気遣いありがとうございます。折角なのでこの街の中を散策してみたいのですが、良いでしょうか?」
「問題無い。案内も付けておこうか」
マーク様が机に置いてあるベルを叩くとチリーンと大きく聞こえの良さそうな音が鳴り響いた。地球と同じ呼び出しベルだねぇ。
程なくして、ノックして入室するは、伝令兵ブレッドさんとメイドさん。
「お呼びでしょうか、マーク様」
「この二人が数日間ここに滞在することになった。客間へ案内するように。それと街の中を散策するとの事なので、お前がその間の案内と護衛を務めよ。従来の仕事についてはフォローするように儂から将軍に伝えておく」
「承知しました……それでは御二方、案内を務めますので着いてきてください」
マーク様とアレクシス様に一時の別れを告げて退出。そういえばアレクシス様は殆ど喋らなかったな。基本寡黙な人なんだろう。助けて貰った恩もあるし、作戦でも囮の最前列を務める重要な役割を担う人だ。また何かの機会にちゃんとお話ししておこう。
王宮の中を案内してくれるのはブレッドさん。その後をルシード、私と続き、最後尾をメイドさんが追従している。
王宮内は広い街を反映して広かった。また、整えられた敷地は王宮を名乗るのに値するねぇ。上流階級に縁の無かった私には「凄い」以外の語彙が無いので、詳しくは言わないでおく。続きはwebで。
案内してくれたお部屋に到着。残念というか当たり前というか、ルシードとはお隣の別部屋だ。
「じゃ、ルシード。部屋で少し休憩してからそっちの部屋に行くね。ブレッドさん、私達は休憩と打ち合わせをしてから街への散策をしようと思います」
「ああ、分かった。俺は部屋で待っていれば良いんだな」
「わかりました、アーリィ様。部屋付きか通りすがりのメイドに伝えて頂ければ、私が案内しますので。ではごゆっくりどうぞ」
こうして、私達のキョウスティン滞在の日々が始まった。余り利用することは無かったけど、泊る所に苦労しないのは良かったよ。




