第三十一話 予定と事情は交差する時がある
街のお偉方に訪問している状況なので、ルシードに倣い片膝をついて首を垂れる。ヒョーベイから代表して来ているようなものだからね。失礼をするとジゼルさんやヒョーベイに泥を塗ってしまう事になってしまうので、おふざけは流石にしないよ。
で、ルシードが対応してくれた。私じゃ失礼の無い話し方って、イマイチ分からないのよね。
「お招き頂き有難うございました」
「まずは名乗っておこうかの。儂が王宮学部長のマーク・トレント。今回は気楽にして貰って良いぞ」
学部長ってなんか地球日本みたいな役職よね。見た目的には宮廷魔術師なのに……兼任なのかしら?
そして、アレクシス様の挨拶。
「王国軍軍団長のアレクシス・ロンドだ。先日ぶりか。二人とも問題無い様で何よりだ」
「あの時は助けて頂き、有難うございました。アレクシス様もお怪我ありませんでしたか?」
「魔獣相手に無傷とは行かない。が、今回は問題ない。折角だから倒しておきたかったが、不利を誘ったのか、戦う前に逃げられたよ」
「流石です。聞いていた噂通りなのですね」
私は垂れていた頭を更に下げる。魔獣と対面して逃げるだけならまだしも追い払えるとは、本当に最強なのね。この場で見ただけだと、余り覇気とか強い感じを受けないんだけどね。
キョウスティン側の挨拶は終わりのようね。次はヒョーベイ側と行きましょうか。
「私はヒョーベイギルドメンバー、ルシード・ロイネスと申します」
「同じくヒョーベイギルドメンバー、アーリィ・ファストです」
こっちの挨拶は簡単なものだ。私もルシードもお偉いさんという訳じゃ無いし、有名でもないからね。一般ピープルのザ・平民だ。
挨拶も終わり、ルシードが率直に尋ねる。
「今回お呼び頂きました理由について、教えて頂けないでしょうか?」
「今回二人を呼んだのは、先程話していたアレクシス卿がお主達二人を助けた事に事の端を発しておる……伝令兵」
「は!」
「お主は一旦退室するように。話が終わったらこの二人の案内をするので、出た時、控えにその事を伝えておいてくれるか」
「承知しました。では、失礼します」
伝令兵のブレッドさんが退室する。ここまで案内してくれてありがとね。礼を言う機会が無かったので、せめて心の中でお礼を言っておこう。
ブレッドさんが退室したことで、この部屋にはマーク様、アレクシス様、ルシードと私の四人のみとなった。秘密のお話って事ね。
「さて……呼んだ目的は二つあるが……まずは、お主たちのどちらかが持つスキルについてじゃ」
なんで私のスキルを知ってるの!? いや「どちらか」とか言ってるから、私がスキルを持っているとは判ってないのか。どうしようかなぁ。まず、知られた場合のデメリットを考えよう。スキルを知られることで囲い込みされるかもしれないかな。戦闘モノじゃないんだし、戦う時の不利なんて考える必要は無いか。知られてなくても、関係ないぐらい私弱いし。
じゃ、逆にメリットは何だろ? スキルの有無なんて貴重な情報なんだから、それなりの見返りは期待できるかもしれないね。
ルシードが私に目線を向けてくる。これは言っても良いかの確認だろう。目と目が通じ合う~ってね。おふざけは心の中で止めておこう。私はOKの意を込めて軽くうなずく。
「お伝えしても良いですが、先にお教えください。私達のスキルをどちらで知られたのでしょうか? それと知りたい目的も出来れば教えてください」
「ふむ。答えるが聞いたからには話を全て受けて貰うことになるぞ」
むむむ。念の押し合いになってる。まあ、内容が内容だから仕方ないかな。再度、ルシードと頷き合う。
「分かりました。お願いします」
「私からもお願いします」
話し合いの矢面はルシードに立って貰っているけど、内容は私にがっつり絡む話だからね。全部お任せという訳にも行かないでしょ。必要な時は同意の声を上げるのじゃ。
「では……事の初めは先ほども言ったが、お主たち二人を助けた時じゃ。あの時、アレクシス卿をあの場に派遣したのは儂の指示なのじゃが、その目的はあの場に居た盗賊共の捕獲だったんじゃ。ま、アレクシス卿が到着する前に、お主らが遭遇して全て殺してしまった訳じゃがな」
あら~。意図せず邪魔をしちゃっていた訳か。……私達、逮捕されちゃったりしないよね?
「それは知らなかった事とはいえ、申し訳ありませんでした。弁明させて頂くなら、あの時は此方も命の危険があったので、退避の手段が限られていました」
「それは知っておる。儂のスキルで見ておったからの」
スキル:遠見 文字通り離れた所をその場で見るが如く見えるんだとか。
言っちゃ悪いが、微妙なスキルだなぁ。それとも他に活用方法でもあるのだろうか? まあ、衛星が無いこの世界じゃ、離れた地点の事を知れるってのは有用なのかもしれない。
「での。盗賊共を見ておった時に見たのじゃよ、お主らが剣に乗って盗賊に突撃するのをな」
「なるほど。そういった流れあったのですね。納得しました」
「で、お主らのスキルについて教えてくれんかの? 儂のスキルまで教えたのじゃから、しっかりとな」
こうなると確かに断れないわな。まいっか。ぶっちゃけちゃいましょう。
「私のスキルです」
実演として、預けていた私の剣を持ってきてもらい、浮かせて私達の周りをブンブンと飛び回らせる。サテラ君の方が派手なんだけど、流石にサテラ君を飛び回らせる程、この部屋は広くない。飛び回る剣を見てお二人にお楽しみ頂けたのではないでしょうか。




