第二十八話 閑話:おふざけタイム
「さあルシード。私を追放するのです」
「何言ってるんだアーリィ?」
のんびりできるのは今日まで。明日は再びキョウスティンに向けて出発するので、ちょっとやりたいことをやっているのである。
そりゃ、やるべき事なんていくらでもあるよ。飲み物や食料の確保、旅用具一式。サテラ君も二人で乗ったり荷物を運び易いように仕込みを付けるとかね。
けどけど! 折角の休憩時間だもん。遊びたいのよ。
ということで、ここはギルド。ルシードを巻き込んでいる所なのよ。
「という訳でお約束その1.有能な私が無能だからとチームから追放されるところから話が始まるのよ。追放された私はスキルを自身の為に使うようになり成り上がっていくのいくの。逆に私を追放したルシードは、私の大切さを身に染みて痛感する。帰ってきてくれと請い願うがもう遅い!」
「なあ、アーリィ。幾つか聞いて良いか?」
「ん? どうぞ」
「まず、俺はアーリィとチームは組んでいない。そりゃ、お前を助けるとは言ったが、それはチームを組むって意味じゃないだろ? 次に俺はアーリィを無能とは思っていない。スキルに関係無くな。だから、追放する理由が無いんだが」
「ぐぬぬ……」
そう言われると話が進まないんだが。まあ、追放系の流れなんてこの世界の人は知らないから、こうなるのは仕方ないのか。
むむむ。でわでわ!
私はルシードを残したままギルドを飛び出し、一路貴族街へ。貰ったばかりのパスを使って通過し、ジゼルさんのお宅へ訪問! いつでも遊びに来て良いとお許しを貰っていたので、早速遊びに来たという訳だ。
「あら、アーリィじゃない。いらっしゃい。また急に来たわね」
「ジゼルさんこんにちわ! 遊びに来たよ」
「丁度お茶にでもしようと思っていた所よ。ささ、いらっしゃい」
「おじゃましま~す」
ジゼルさんのお宅。クルトネー家は流石に大きいお家だった。果てしなく広いという訳じゃないけど、しっかりと手入れの届いた庭は、ちょっと歩いてその庭木を楽しみたい気分にさせてくれる。このお庭でお茶会というのも楽しそうだ。
本宅の方もファンタジックなお城を思わせる。ただ、ここの建物も背が高いのは、この街ならではなのだろう。今回案内されたのは離れの方だ。小さいとはいっても、それは本宅と比べての話で、私のお家の倍以上の大きさを誇っている。
執事のサンドさんが香り高い紅茶を入れてくれた。焼き菓子も簡素な見た目だが甘さ控えめで、お茶に良く合っている。目的はこれじゃなかったけど、思わずこれで満足してジゼルさんと他愛のない雑談後に帰ってしまう所だったよ。
「それで、何か御用があったのではなかったのではないかしら?」
「そうそう。ジゼルさん!」
「はい、何かしら?」
「私に対して婚約破棄を宣言してください!」
「はい?」
「お約束その2です。婚約していた二人ですが、そこに聖女が現れ、その聖女に惹かれたジゼルさんは、聖女の虚偽の申告を信じてしまい、とある日のパーティ、大勢の人の前で婚約破棄を宣言してしまうの! 必死に弁明する私ですが、それが受け入れられず、お城を追放。苦しい状況に陥ってしまいますが、そこに現れたのは別国の王子様! 様々な苦難を乗り越えて私はその王子と幸せに暮らすのです!」
……うん? 自分で勝手に語っておいてなんだが、ジゼルさんの反応が無いような。いや、喜んでいる?
「アーリィさん! 貴族との婚約をお望みなのですね!」
「え? いや、これはそうなると話として楽しそうだな~ってだけで、そうなりたい訳じゃ……」
「遠慮なさらないで! アーリィさんのお相手になりそうな方なら、いくらでも紹介しますわよ! サンド! 写真を持ってきて!」
「はい、畏まりました。直ちにお持ちします」
「いや~! 待って待って! そんなつもりでは~」
ノリノリのジゼルさんを止めるのに、非常に疲れてしまった。
ジゼルさんはやはり良い人で、私のおふざけも笑って許してくれたのよ。そして、これからも気兼ねなく来てねと。お友達なのだからと。
もうすっかり夕方になってしまった。ギルドの前の通りは足早に帰宅する人が見える。まだ流行病が完全には収まって無いので、人はまばらだ。
そんな中、ルシードが出迎えて私を待ってくれていた。
「おふざけはもう済んだか? 明日から旅になるんだから、今日は早めに帰って寝るんだ」
「そうね、ルシード」
私は瞼を落とし、すっとルシードの胸に顔を落とす。そして、憂いを帯びた目線でルシードの瞳を見つめた。そのしっかりとした黒い瞳に彼の力強さと熱意を感じる。それは今、二人の頭上に輝き始めた一番星よりも私にとっては光り輝いていた。
「な、あ……」
ふっふっふ。照れてどうすれば良いか分からず固まったルシードを見れたよ。今日はこれで満足じゃ。
「な~んてね。明日からまた宜しくね。ルシード」




