第二十五話 帰還とお呼び出し
行きに比べて帰りは比較的楽だった。
何が違うと考えればゴールまでの体感距離を知っているかどうか。相変わらず急場凌ぎの物とは言え、装備が最初からあるという点だろう。大荷物はサテラ君に引っかけてあるので大した負担にはなってない。
途中で盗賊や魔物に襲われたり雨に降られたりすることも無く、無事ヒョーベイに到着。街が見えた時、ちょっと懐かしさを感じたのは意外だった。この世界に来てからまだそれ程時間が経った訳でもないのにね。
到着したのは出た時と同じ東門。門兵さんも同じで、私が言った通りお馬さんが一人で戻ってきたので覚えていたようだ。キョウスティンに向かったにしては早すぎる帰還を疑問に思ったものの、お薬を持っているので通してくれる。う~ん、速過ぎる移動の方法をどう説明するか考えてなかったなぁ。とりあえずは上の立場の人には正直に話すかな。
出発から四日しか経過していないので流行病はまだまだ納まってはいない。主要な街道というのに、人の通りが非常にまばらだ。箱の山になったルシード君が歩き易いので助かったんだけどね。
先行して私がギルドに入ってお薬を貰ってきたことを伝えておこう。小走りに入ったギルドは閑散としていた。確か残ったメンバーで近隣の集落や街でお薬探してるんだっけか。ふふん。最近場には負けるけど、それ以外より私のサテラ君の方が早かったと見える。
「ただいま~。マシロちゃん居る?」
「ええ!? アーリィさん、キョウスティンに行ったはずじゃ……途中で引き返してきたんですか?」
「ところがどっこい、ちゃんとキョウスティンまで行って、お薬分けて貰ってきたよ~」
想定外の速さに、受付嬢たちは頭にはてなマークを浮かべていたが、箱の山ことルシード君が到着すると、流石に動き出した。
一人はギルドマスターに連絡。一人は外へ出て恐らくジゼルさんへ連絡に行ったのだろう。残りでお薬に破損が無いかチェックだ。テキパキ動くのは、流石にプロだねぇ。届けられたお薬は効率良く医局へと届けられた。
で、ギルドマスターの執務室にて、私とルシード君、ギルドマスターとジゼルさんの四人でお話となったのだ。
「届けてくれたのは確かにキョウスティンの印が入った薬だった。薬は確かなものだし、破損も殆ど無い。想定していた期間を大幅に超える速さで届けてくれたのも、街の都合を考えれば大助かりだ」
出されたお水。すっごく冷たいだけでなくレモン汁も加えられているのが良い仕事をしている。私なんて出された分を直ぐに飲み干してお代わりを所望しちゃったよ。あ、話を聞いてないのをギルドマスターは怒るに怒れない微妙な表情を浮かべちゃっている。
「出来れば、どうやってそんなに早く移動できたのか、教えてはくれないか?」
ルシード君が私をチラ見している。これは、私のスキルの事を話しても良いのかと確認しているのだろう。ん~伝えるとどうなるだろうか? スキル持ちは世界全体を見ると少数。しかし絶対的に貴重な存在という訳でもない。が、スキル持ちが支配階級に多く居るという事は象徴的な存在として使われることも有るのだろう。ん~宮仕えする訳にも行かないけど、いざとなれば飛んで逃げれば良いかな。
という訳で、ルシード君にOKサインを出した。
「……出来れば、内々な話として下さい」
流石ルシード君。話すとしても一応の制限を設けてくれた。で、私達がヒョーベイを発ってから帰ってくるまでの出来事をざっと話す。私のスキルについてもだ。
「成程、スキルの力でしたか」
「今までこの街にスキル持ちが来たという報告は無かったはずだがな。まあそれは良い。とにかく今回は助かった」
「私からもこの街を代表してお礼を申し上げます。ありがとうございました」
ぺこりと頭を下げてくれるジゼルさん。支配者階級貴族の人だというし偉ぶった言葉遣いだけど、ちゃんとやるべきことはやるしお礼も言えるちゃんとした人だ。美人だし体型も羨ましい。この街は安泰だねぇ。
「報酬ですが、最初にお伝えした金額を増額してお渡ししますわ。そして、貴族街への無条件入場の許可書も発行します。それと、アーリィさん」
「はい、なんでしょ?」
「この街には街の守り人と言われながらも、直接的な攻撃スキルを持った人物が今まで居ませんでした。しかし、アーリィさんのそのスキルは、ヒョーベイの新たな守り人となるに相応しいものだと思いますの。如何でしょう? この街の守り人、貴族になりませんか?」
「お誘いは嬉しいですが……辞退させて頂きます。私は世界を回る必要がありますので、この街に本拠を構えるとしても、ずっと、この街にいる訳には行かないので」
「そうですが。……分りました。この街に本拠を置いてくださるだけでも良しとしますわ」
「ご理解頂き、有難うございます」
もっと粘られるかと思ったけど、あっさりと諦めてくれて良かった。ジゼルさんは笑顔で理解してくれている。マスターも静かに成り行きを見守ってくれた。これなら、この世界に来て辿り着いた街がここで良かったと思えるよ。
と、和やかな雰囲気の中、ルシード君がすっと手紙をジゼルさんに渡す。
「これ……実は、キョウスティン王家からの手紙を預かってきました。ヒョーベイ支配者層へとの事なので、ジゼル様に渡して良いですよね?」
「キョウスティン王家から? 解りました。預かりましょう」
ジゼルさんは早速封蝋を剥がし、中の手紙を読んでいる。
「手紙は薬を受け取りに行ったとき、何故か兵士が待っていて、預かったんだ」
「あの時に? なんで私達が来たって解ったんだろ? 門から連絡が行ったのかな?」
「タイミング的にはそれでは遅いはずだ。もっと事前に知っていたとしか……」
手紙を読み終えたジゼルさんが、私とルシード君に声を掛ける。
「手紙の内容ですが……簡単に言えば、貴方達お二人を可能な限り早くキョウスティン王宮に寄越して欲しいとの事でした。なので、お二人は数日の休息後、再びキョウスティンへ向かって頂けますか」
何故、私達がキョウスティン王宮に呼ばれたのか。何故王宮に接点の無い私達を知っているのか。謎が深まるばかりである。
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