第二十二話 盗賊と魔獣と最強との遭遇
「アーリィ。この辺りで道に降りよう。空から街に入ったんじゃ、流石に色々と言われる」
「は~い。んじゃ、この辺りで~」
キョウスティンの門へと続く道を確かめ、その道に向かって着地だ。森に挟まれた所なので見通しが悪い。枝に体が引っかからない様に注意して~着地! っと着地しようとした手前の茂みが動き出し、ひょっこりと顔が出てきた。
「げ! 危ない危ない、どいて~!」
「ぐわぁぁ!」
茂みから出てきた人を引っかけてしまい、サテラ君のコントロールを誤り、道ではなく左右の森の中に突っ込んでしまった。あ、ルシード君は木の枝から私を庇ってくれたけど、道に落ちてしまう。
それにしても、なんで茂みの中に人が居るのよ!
「あてて……あ、大丈夫でしたか~」
「痛つつ……何だ手前は。空からやって来た?」
派手に転がった割に怪我は無かったようだ。良かった良かった。この世界に来てから損害保険に加入してないからね。交通ルールの無いこの世界ならセーフだセーフ。巻き込んだ人も驚いて混乱しているようだが、怪我は見当たらない。
と安心した所で、道の方から剣で打ち合う音が聞こえてきた。ルシード君!? それと同時に前に居た人……今見たら盗賊然とした男の人だね。その人が私を突き飛ばし、私の肩を踏んで押さえつけられる。
「アーリィ! こいつら盗賊だ! 気を付けろ!」
「ふえ?」
あら~。じゃ、私は間抜けにも盗賊が潜んでいた所に降りちゃったわけか。ルシード君は道で他の盗賊と戦闘中。私は森の中で盗賊に押さえつけられている。むむむ、ライロンさんに言われたなぁ。こうならない様に注意しろって。ライロンさん、アドバイスを有効活用できずごめんチャイ。
反省終了。さて、どうしたものかなぁ。盗賊を観察。汚れてはいるけど結構良い服を着ているな。それに変な臭いもしない。今どきの盗賊は身嗜みも抑えなければいけないようね。
私を押さえている盗賊はナイフを取りだし、私の体を嘗め回すように動かしている。やばいぞ。乙女的ピンチだ。こうなりゃ、腰の剣をスキルで動かして……あれ? 盗賊は突如傾き横に倒れた。背中には大きな斬撃の跡がある。
「ようアーリィ。怪我は無いか?」
「ルシード君。道の方に盗賊が居たんじゃないの?」
「五人程居た。黙らせてきたから問題無い」
うっそ、声を聴いてからほんの少ししか経ってないよ? そいえば、ルシード君はヒョーベイギルド期待の人だったやね。キメラ種の時もそうだけど、戦闘力がダンチだわ。
「あ、ありがとうルシード君。お陰で助かったよ」
「気にするな。俺も降りる時に注意出来なかったからな……アーリィ。ゆっくりと立て」
「ん? どうしたん?」
「最悪の客が文句を言いに来たらしい」
ルシード君が注意する先。森の闇にそれは居た。
魔獣カオス・ダンプティ。 大きさは2m程の狼男のような風貌。爪や牙は恐るべき鋭さを持っているようだ。葉が触れただけで切り裂いているのが見える。何よりも目に見えると錯覚しそうなほどの殺気と背負った呪いの影。鋭い目を私達に向けながら、ゆっくりと近寄ってくる。
盗賊を瞬殺したルシード君も、流石に慎重になっている。剣を魔獣に向けたまま慎重に私を庇ってくれている。
睨み合いが続いた最中、魔獣とルシード君の間に剣が投げ込まれ、突き刺さる。
「盗賊が潜んでいるという話で着いてみれば、盗賊は全滅。で、森には魔獣とか……」
大柄な男性が剣を投げ込んだらしい。その人の周りに、複数の騎士が剣を魔獣に向けて構えていた。
「そこの二人。街に逃げ込むと良い。盗賊の処理もあるから後は此方でやる」
「けど、相手は魔獣ですよ」
「問題無い。アレクシスの名は聞いたことがあるだろ?」
昨日、ルシード君に聞いたばかりだ。この人がスキル『最強』の持ち主。魔獣よりも強い唯一の人類なのよね。なら、この場は任せても良いかな。留まったら邪魔になりそうだし。
「ルシード君。行こう」
「アーリィ……わかった。すみません、後は頼みます」
落ちっぱなしのサテラ君を回収。人の目があるので、私が持ったフリだ。
道に出て森にを出る。少し平原が続いた先に、世界最大の街キョウスティンの門が見えた。この街もやはり外壁はあるんだね。ただ、街の規模に合わせてひたすらに長くデカかった。
アレクシスさんはもう見えないけど、戦いの音は聞こえない。大丈夫なのかな。心配するけど、街に逃げ込めって話だし、私達はそもそも街の中に用事があるんだ。
「アーリィ、あれが目指す街だ。行くぞ」
「うん、ルシード君。行こう」
日はまだ高い。この分なら今日中にお薬を分けて貰うことが出来るに違いない。急いでいる訳だけど、長い空の旅と盗賊と魔獣との遭遇で私が限界だ。なので、一泊してから明日の朝一で帰る事になるだろうね




