第二十一話 キョウスティンってどんなとこ?
「そいえばルシード君?」
「なんだ?」
サテラ君に足場を付ける作業をしながら聞いてみた。
「なんで集落の中に入って、買いに行かなかったの?」
「用心の為だ。今の世の中、真っ当な集落ばかりじゃない。平和に見えて、実は盗賊が支配していたという所だってあるんだ。そんな所に入ったらトラブルなるのは目に見えている。多少希望通りの買い物とならなくても、集落に入らずに済ませる事が出来るならその方が良いのさ。中に入らなければ、余程馬鹿でない限り襲ってはこない」
「けど、お使いを頼んでお金を持ち逃げされる可能性もあるんじゃないの?」
「ある。けどその場合、今後その集落に近寄らないほうが良いと判るだろ? 安全第一という事だ」
「なるほど~」
この話は為になった。今後、私はこの世界を旅することになるだろうからね。同じように気を付けよう。あ、後でメモしておこっと。
準備も整い、再び空の旅へ。 今はゴーグルがあり、手袋でサテラ君に掴まり、輪っかを付けた縄で足場が出来て踏ん張れる。安定したことで、更に速度を上げて進むことが出来た。
速度は上がったけど、流石に一日で到着できるほどでは無かった。
森の中に引かれた魔獣の襲ってこない道。この世界の人達が文字通り命を掛けて調べてきた僅かな安全地帯だね。時折、広めの所があるので、そこでキャンプとなった。魔獣が襲ってこないだけで、魔物や盗賊が襲ってくることはあるけど、ルシード君調べにより、少なくとも今は大丈夫という事を確認している。
日は落ち、夜空には見事な星々が瞬いている。異世界では月が二つあったり色が違ったりするが、このゲーム世界では地球と大体同じだ。ものすごく明るいのは、余計な明かりが地上に無いからなのだろうか?
月と星が見下ろす静寂の中、二人で火を囲んで食事を取り、ゆったりとした時間が流れていた。男の子と二人っきりなのだから甘い空気になるかと思ったら、ルシード君、火を挟んで一定以上近づいてくれないでやんの。むぅ、私に魅力はね~のか。
仕方なし、このままちょこっとお話をしよう。
「これから行くキョウスティンって、どんな所なの?」
「キョウスティンは現存する街の中で最大の広さを誇る街で世界の王都を名乗っている」
「世界最大の街なのね。人は多いの?」
「ああ。正確な数は知らないがヒョーベイの数倍居るらしいな。王都を名乗っている通り、王政を敷いている。現王はジェイク・ジェイ・ハンプトンとかいう奴で、まあ評判は良い方だ」
ルシード君、王様の名前なんだからもうちっと丁寧に扱った方が良いんでない? まあ、私もどう扱えば正解なのか知らないけどね。
なんにせよ、王様が良い人そうで良かったよ。こんな世界で戦争だなんだに巻き込まれたくはないし。
「その王に仕える三人の側近も有名だな。三人ともスキル持ちだ」
「おお。三人も居るとは流石だね。どんなスキルなの?」
「二人は公表されていない。唯一公表されているのは親衛隊長のアレクシス・ロンド。スキルの名は『最強』だ」
「随分とストレートなスキル名だねぇ」
捻ったからどうとなる物じゃないけど、ストレート過ぎるでしょ。何となく恥ずかしいわ。
「で、その『最強』って、どんなスキルなの?」
「文字通り、どんな相手よりも強くなるスキルらしいな。民衆の前で使われたのは二度だけ。一つはある時行われた武術大会のゲストとして最後に現れ、大会参加者全員とソイツの不公平な戦いで圧勝したらしい」
「わ~無双な人が居るのね」
どんな強い人でも、複数人相手では勝てないらしいね。それでも圧倒するっていうのは、どんな無茶苦茶なスキルだ。まさしくチートだなぁ。
「もう一つは、街の外の森。魔獣カオス・ダンプティを複数相手にして討伐を果たしたらしい」
「魔獣ってあれでしょ? 人じゃ勝てないような話だったと思うんだけど」
「俺も怪しいとは思うがな。だが、不特定多数の民衆の前で戦い、実際に魔獣の死骸が回収されている。勝ったのが嘘なら、死骸はどこから持ってきたって話になる」
「魔獣を倒せるなら、その人に頑張って貰えれば、少しでも世界の脅威は減るんじゃないの?」
「ほんの少しの範囲だが、その討伐で森を少し開拓したらしい。だが、その後、再度討伐を果たしたって話が出てこないんだよな。防衛上の問題だとか言い訳が出ているが、本当の所は分からないままだ」
そのまま興味深くはあるけど、色気も華やかさも無い話が続いてしまったので割愛しよう。
世界最大の街キョウスティンか。今回はお薬を貰ったら直ぐに離れる予定だけど、機会があればちゃんと巡ってみたいな。それだけ広い街なら、きっと色々な情報があるはず。その中に地球に戻れるヒントでもあれば良いんだけどね。
そして翌日。
「ついにやってきましたよ、世界最大の街とやらに!」
遠目にひたすらに広い街が見える。ひたすらにまっ平な所だ。街には幾つかの川と……海か! 良い立地条件だ。泳ぎたい所だけど、流石に遊ぶ時間と体力が無さそう。
ヒョーベイからキョウスティンまで、普通はノントラブルでも一週間以上掛かるって所を、僅か二日未満で到着することが出来たのだ。いやはや、私のスキルって凄くない? けど、私の体力の方は凄くなかった。サテラ君に必死で掴まっているが、もう限界に近い。気分も何だか悪いし眠気も出てきて、時々頭が揺れて船を漕いでいる。ルシード君が時々肩を叩いてくれなかったら、寝落ちしてたかも。異世界での死因が居眠りによる落下死なんて、かっこ悪いよね。
仕方ない。今日の所はお薬貰って、直ぐに宿に泊まろう。せめて体を拭いて、ゆっくり休みたいや。




