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第二話 ヒガンちゃん 出てきたけどすぐ帰る

  私を待っていたという女の子。ヒガンって子だけど、謎だらけだ。

 何で私を待っていたのだろう? 何で私がここに来ることを知っていたのだろう? 何処に案内するというのだろう?

 

「……まいっか。で、ヒガンちゃんだっけか。案内してくれるって近くかな?」

「お主……私が言うのもなんじゃが、もう少し他人を疑うというか、慎重に判断する癖を付けた方が良いと思うぞ」


  ヒガンちゃんが呆れた顔で忠告してくれる。

 言いたいことは分るよ。ここは私の知らない世界だ。もしかしたら人攫いとか悪い人が多く居るのかもしれない。いや例え少数でも遭えば大変な目に遭うかもしれないのだから、他人を疑うべきなのだろう。それが自分の身の守りになる。そこら辺りは地球と同じだね。

 けど、しかしだ。


「忠告有難う。ちゃんと覚えておくね。けど、今は楽しみたいのよ」

「楽しむ?」

「そう。折角の別世界だもの。最初はトラブルぐらい合っても良いわ。ヒガンちゃんみたいに可愛い子絡みであるなら猶更ね」


  命や貞操の危険があれば、一目散に逃げるけどね。そうでないのであれば!


「判った判った。では、着いてくると良い。こっちじゃ」

「は~い。ついて行きま~す」


  私はヒガンちゃんの手を握って、にこやか笑顔を浮かべながらついて行った。方向としては家々が見える方向のようだ。

 諦め顔ではなく笑顔でいてくれたら尚良かったんだけど、まあ良いか。美少女とイキナリ仲良くできるのも異世界の利点だよね。


  とはいえ、その楽しい時間は思ったより短かった。辿り着いたのはポツンと立った一軒家。

 背後に森があるその白い家は、なかなかに私好みの外観をしていた。外壁に蔓が絡みついているが朽ちている様子が無い。破損している所もぱっと見無く、家の脇には井戸らしきみのもあった。手動ポンプらしきものも付いている。あれをギーコギーコと押したら、地下水が組みあがってくるのよね? ちょっと楽しみだ。


「ここじゃ。で、これを持っておく様に」


  ヒガンちゃんが、何やら立派な紙を渡してきた。細々と書かれたその紙は何かの書類に見える。


「何これ?」

「この家の所有権利書じゃ。この街の正式な書類じゃから無くさぬようにな」

「権利書!?」


  なんか、一気に異世界感が無くなったよ。ま、まあ大切な書類だよね? 折りたたむのも駄目な気がして、とりあえずそのまま手に持っておく。ビニール袋なんてこの世界に無さそうだし、巻物みたいに丸めて保管すれば良いのかな?


「これが所有権利書なら、私はこの家に住んで良いの?」

「うむ。家だけでなく、家の中にある物は自由に使って良いぞ。暫く生活できる程度には揃えてある」

「ほへ~色々と用意してくれてありがとね。そういえば、ヒガンちゃんはゲームでよくあるガイド的な子なの?」


  ここまで見知らぬ私に親切にしてくれたのだ。きっと、ゲームの案内役NPC的な子に違いない。とはいえ、ゲーム世界に転移した場合はちゃんと人になるのもお約束みたいなものよね。ちゃんと人として愛でてあげなければ。


「ん~そう思って構わぬ。で、後一つ、お主にプレゼントじゃ」

「プレゼント?」

「所謂スキルというやつじゃな」


  スキル! 主人公が最強だったり無双するために持つ、唯一無二の超絶能力のアレね。私としてはどんなのが良いかなあ。運動は少しはできるけど、ちゃんと運動している人にはとても敵わないから、生産系が良いかも~


「で、どんなのが貰えるのかな?」

「使い方は自然と分かる様になっておる。スキルを入れるから、リラックスするのじゃ」

「ほむほむ。どんとこい」


  両手を広げるカモン状態で待機。ヒガンちゃんは私のお腹をふん!と軽く押した。あ、なんか私に入ったのが解る。使い方なんかも何故だか分かるのが不思議だね。だけど、あくまで体感的何となく。要練習だ。それにしてもこのスキル、私に合ってない気がする。


「ん~有難うね、ヒガンちゃん。けど、これで合ってるの?」

「それで合っておる。今回の他の者にも似たような感じで与えておるしの。ん~神に注目されておるお主が一番弱いというのもアレじゃの。オマケも付けておくので、併せて後で確認すると良い」

「間違ってないなら良いんだけどね~」


  良いものなんだろうし、これ以上何か言うのは悪いかな。ん? 何か今、知らない情報を聞いた気が……


「さて。私はそろそろ退散する。ここからはお主の自由に動くと良い」

「え!? ヒガンちゃん、私と一緒に生活してくれるんじゃないの?」

「誰もそんな事言っておらんぞ。私が案内するのはここまでじゃ。今回はこれ以上関わらぬように神から指示されておる。ではな」

「折角なんだし、もうちょっと……」


  手を振ってバイバイするヒガンちゃん。唐突に一陣の風が吹いて私の顔に落ち葉がぺちりと当たる。思わず目をつぶったのだが、目を開けた時には居なくなってしまった。

 今の時間は判らないけど、まだ暑くなってない風と強い日差しを感じるこの具合はお昼前って感じかな? 時間はまだまだあるけど、どうなってるか判らないこの世界。とりあえずは、この貰ったお家を確認してみるかな。

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