表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仮定のアーリィは今日も異世界の空を飛ぶ  作者: 田園風景
呪いの中心カオスゼロ
149/167

第百四十九話 破滅的な現状

  ヒョーベイから帰る途中、トースアースの男の人を助けて、そのまま進路を修正。

 私たちは一路、トースアースに寄り道することにした。

 森の中では、ときおり魔物の群れが姿を見せる。


「やっぱり、魔物も大量発生している……」

「原因は……やはり、あの男でしょうね」


  狂気の男、アノン。

 彼はこの世界の滅亡を望み、カオス・ゼロなる場所で呪いを解放。

 魔獣からその呪いを解き放ったそうだが、これも彼の仕業なんだと思う。又はその副産物?

 彼を倒し、この事態を収拾することは出来るのだろうか?

 いや、やるしかないのだろう。

 出来なければ、あの男の望み通り、この世界が破壊されるだけなのだから。




  程なくして、トースアースに到着。

 このような状況になっても、いや、このような状況だからこそ、飛空移動というのは安全便利なのだ。

 いつもなら街の外で降りるのだけど、状況が状況なので、空から街の中に入らせて貰うことにした。


「この街は……まだ大丈夫なようね」


 空から見下ろす街は、なんだか静かだった。

 平和に見えたけど……不自然なくらい静かで、通りには人の気配がない。

 その代わり、街を囲む壁の上には、いつも以上の警備する人が並んでいた。

 帝国の侵攻に対するものだったかもしれないけど、それ以外の異常にも気が付いているのかもしれないね。


「お邪魔しま~す!」


  以前実験やら台の移動やらを行った広場に到着。すぐに、警備の人たちが取り囲んできた。


「何者だ!」

「あ、私です! 第三実務部の!」


  連れてきた男の人が、さっと名乗り出てくれた。

 この街で私の顔はそれなりに知れ渡っているのは確かだけど、それはあくまでなりゆきで顔が知れているという程度。

 なので、ちゃんとしたこの街の住人が居たのは、助かったね。


「……帝国の件もある。念のため、取り調べを受けてもらう!」

「え、ちょっと!? 私達、あんまり時間をムダに出来ないんで、それを受けている時間は!」


  何という事だ。住人の執り成しがあってもこれというのは……想像以上にピり付いている様子。

 え~っと困ったな。


「レン代表に取り次いでくれませんか! あの人と私達、顔見知りなんです!」

「駄目だ! 大人しく詰め所まで来てもらう!」


  こりゃ駄目だ。男の人も私をフォローしてくれているが、それでも態度を変えない。

 情報を得るために来たけど、こうなったら、とんずらするしか……


「アーリィ。ちょっと借りる」

「ベクト?」


  ベクトがやおら、私の財布に手を突っ込んできた。

 ちょっと、まさかこの人達を買収するの? 逆に怪しまれるのが落ちのような気がするけど……

 でも、ベクトが取り出したのは……一枚のプレートだ。

 ああ、そういえば……この街に初めて入った時に作った身分証もプレート。

 そういえば、そんなの作ってたっけ。


「これを」


  ベクトがそのプレートを警備の人に差し出す。

 最初は怪訝な顔をしていたけど、プレートを読み取るような機械を当てると……たちまち態度が軟化した。


「これは失礼しました!」

「は、はぁ」


  あまりの態度の代わり様に呆気にとられる。

 私の情報って、この街ではどういう扱いになってるんだか。


「伝えたい情報がある。レン代表に取り次いでくれないか?」


  ルシードが前に出てくれた。

 最近は私でもこなせるようになってきたけど、はやりルシードは頼りになる。


「承知しました! では、恐縮ですが中央管理塔までご同行を!」

「宜しく頼む。アーリィ、ベクト、行こう」

「ありがとね、ルシード」


   男の人とはここでお別れ。

 所属部署にこれまでのことを報告しに行くんだって。

 感謝の言葉を残して、去っていった。

 さあ、私たちは中央管理塔――レン代表の執務室を目指して、Go!



  中央管理塔。この街に来た時も、ここに来たね。

 あれから、色々と変わったもんだ。本当に、色々と。


  ソファーで暫く寛いでいると、やって来たのはレン代表。

 あまり寝てないのか、疲れた表情が見て取れる。


「アーリィさん、ベクトさん、ルシードさん。ご無事で何よりです」

「レン代表も。お疲れのようですが大丈夫ですか?」


  レン代表は軽く目元を指で押さえて、疲れを誤魔化すような仕草をした。


「状況がかなり緊迫しています。他の街に集落を助ける余裕がある所は少ないですからね。正直、あまり眠れていません」

「……あまり無理しないでください。倒れたら、もっと大変になりますから」

「気を使って貰ってありがとう。それで、今回来たのはどういう話を?」

「ちょっと、色々あって。出来れば、内密に話したいのですが」


  レン代表は快く応じてくれて、また執務室に通してくれた。

 そこで私達の経験を話す。

 帝国に乗り込んだこと、元帝国の人間で裏切ったアノンという男が皇帝を暗殺した事、そして魔獣の呪いが解放されたことを伝えた。

 レン代表は、私達の話を黙って聞いてくれていた。

 魔獣が呪いから解放されたという所には、流石に眉が動いたが。


「……状況、理解しました。実は、こちらにもいくつか報告が届いていたんです。それが原因だったか……これは非常に危険ですね」



  そう言って、レン代表は深くため息をついた。


 そこから、世界で起きている破滅的な現実を聞かされた。

 各地に魔獣が入り込み、破壊と殺戮を繰り返していること。

 無数の魔物の群れが、次々と集落を飲み込んでいっていること。


 この世界、人間の世界が……

 一刻一刻と、終わりに近づいていた。

いつも読んでください、有難うございます。


書き貯めが進み、ラストまで書き終えることが出来ました!

なので、明日のお昼の投稿以降は、毎日朝7時10分の予約投稿に切り替えたいと思います。

164話から最後三話は、時間を置いての連続投稿する予定。


拙い所が多々ありますが、どうか寛容なお気持ちで、宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ