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第十四話 曇り空への遠出

  さて。今日のお仕事はどれにしようかなっと。

 ギルドの掲示板を眺めるが、今日はイマイチ。どの依頼もピンと来るものが無いなぁ。いや、新人の私がお仕事を選ぶような立場でないのは知ってるけどね。この間の荷物運びで小金があるので、今日ぐらいは趣味の合う依頼を選んでみようと思っているのだ。

 そうやってぼへ~としていると、私に声を掛けてくる人が居た。


「ねえねえ。貴方、まだ今日の仕事決めてないよね?」

「ん?」


  ギルドでちょくちょく見るお姉さまだ。栗毛の長髪でポニテしている如何にも弓職って恰好の人。なんじゃらほい。


「私達、隣町まで商隊護衛の仕事を受けたんだけど、メンツの一人が病気に罹っちゃったんだよね。それで、良ければ一緒に受けてくれない? 緊急の依頼って事で報酬は良い額出てるよ」


  これまでは一人でやってきたけど、いずれは誰かと組んでギルドの仕事をするかもしれない。その為にこの話は慣れるための練習と見る事が出来るね。それにこの街以外の事を見る良い機会だ。私に予定が無くて、このお仕事の報酬も良いとなれば断る理由は無いか。


「ええ、良いですよ。じゃ、仕事の内容とか色々教えてくれませんか? 私、つい先日ギルドに入った初心者なんですよ」

「有難う。勿論、初心者でも問題ないわ。じゃ、こっち来て。私の相方紹介とお仕事の内容を教えるから」


  案内されていったテーブルには、お姉さんと同年代とおぼしき男の人が座っていた。痩身で鬼畜眼鏡という言葉が似合いそうな感じ。いや眼鏡はしてないんだけどね。お姉さんは鬼畜眼鏡の相方とか言っていたけど、付き合ってるのかなぁ。恋バナは女の子の嗜みですぞ。え?私に彼氏は居なかったのかって? 彼氏……知らない子ですね。


「まずは自己紹介からね。私はクレウス・ブラン。このギルドで働くのはそこそこ長いから、困ったことがあったら頼ってくれて良いわよ。で、こっちが……」

「トム・ゴスランだ。相方が強引だったら済まない。よろしく頼む」

「私はアーリィ・ファスト。ぴちぴちの新人だけど、よろしくね」


  うみゅ。クレウス姉さんは親しみ易いし、トムさんは信頼できそう。メンバーとしては当たりだね。なんでも、始める最初が良いものなら、その後が大変でも長く続けられるってものよ。

 さてはて。クレウス姉さんが今回のお仕事を説明してくれる。


「お仕事は商隊の護衛。近隣の集落メイストーンで流行病が発生してね。お薬が足りなくなってしまったのでこの街にお薬を分けて欲しいって依頼がきたから、それを運ぶの。私達は道中の安全確保ね。行程予定は余裕を見て二日になるよ」

「けど、そういうのは街の貴族とか兵士さんがやるべき仕事じゃないんですか?」

「残念ながら、貴族や兵士はこの街の運営、維持の為だけに動くものなの。それはこの街だけじゃなくて世界全体に言える事ね。今回の流行病が重症化しない限りそれ程危険ではなく、お薬で収まるって話なのもあるかな」


  成程。けど、苦しい思いをしながらお薬を待っている人も居るんだから、ちゃんと届けてあげないとね。


「仕事は何時から? 用意するべきものがあれば教えてくださいな」

「北門に昼前までに来て。 必要な水と食料は商隊側で用意してくれるから、それ以外に旅で必要に思える物を用意して。あ、集落に泊まれる所は無いから、野宿のつもりでね」

「了解しましたクレウス姉さん。じゃ、お家に戻って準備して北門に向かいますね」


  お出かけと言うとちょっとワクワクするのだ。護衛としてだけど、変わりないよね。

 帰りながら空を眺めた。今日はちょっと曇り空。涼しいのは良いけど、今日は雨が降らないとして明日は大丈夫なんだろうか? こう言った所、天気予報の有難さが判るよね。天気予報は歴史ある苦労と科学の結晶なのだ。

 お家に戻って、リュックを持ち出す。さて、何を持っていくべきかな? タオルとフォークとお皿と……って、キャンプに行くわけじゃないんだから、ちゃんと選ばないと。あ、雨対策は傘とか嵩張る物しかなかったので、もし降ったら濡れるに任せる事としたよ。

 真面目に選んだら思ったより荷物は要らなかったね。ま、軽い分には良いか。家の戸締りをして、早めに北門へ向かうとしましょう。




  昼前と言うにはまだ早い時間。5分前集合はジャパニーズビジネスマンの習性なのだ。今が5分前かどうか判らないし、私はビジネスマンでもないけどさ。

 ちなみに、この街には公共時計がある。門前とか人の通りがある場所に設置されているのだ。だが、時計の個人持ちというのは少ないそうだ。一番の原因は電池を量産出来ないからだろうね。手巻きについては技術の取りこぼしか?

 さて、クレウス姉さんとトムさんは居るかな~っと、居た居た。


「アーリィ、こっちだ! 予定より早めに来るというのは新人にしちゃ良い心がけだね」

「準備は問題無いか?」

「ばっちこいです! で、商隊ってのはアレですか?」


  街を出入りする人は少ない。なので、私ら以外の荷馬車があれば、そうなのだろう。

 商隊との打ち合わせはクレウス姉さんとトムさんにお任せして、私はのんびり門番さんとお喋りに勤しむ。いや、サボりじゃないよ! 集落メイストーンがどの辺りにあるのかとか、道中はどんな危険があるかとか、色々と教えて貰っていたのだ。やはり仲良くなっておいて良かった。うんうん。

 集落メイストーンまでの道程は、それほど危険ではないらしい。盗賊は当たり前のように出るらしいので、不意打ちには気を付けなさいとの事。当たり前に出るのか……

 っと、クレウス姉さんからお呼びが掛かった。出発するらしい。


  このゲーム世界に来てから、初めての遠出だ。色々な危険が待ち構えているに違いない。

 だけど、私は冒険者となったのだ。冒険者には、あの浮かぶ千切れ雲のような世界を流れていく運命にある。その一歩がここから始まるのだ!

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