表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仮定のアーリィは今日も異世界の空を飛ぶ  作者: 田園風景
侵攻する帝国エインドレス
130/167

第百三十話 とりあえずただいま!

「少なくとも、戦争が始まるまでは手が出せないと思う」


  少し考えた後、ベクトはそう言った。

 正直、意外な答えだった。

 こういうのって、事が起こる前に先手を打った方が良い結果になることが多いのに。


「それは何故?」

「帝国について情報が少なすぎる。それに、帝国は世界全体を相手にしようしている。なら、相応の戦力を用意しているはずだし、あの男がガリアの身を守っている以上、近付くのは難しいと思う。最善は……戦争が始まってから、でしょうね」

「それだと戦争が止められないよ。もし止められるなら、犠牲者出ない方が良いし……どうにかならない?」

「いや……戦争は、多分、アーリィが思うより酷いことにはならないと思う」


  意外な言葉に、私は少し驚いた。

 戦争……特に、平野での戦争にならないこの世界だと、戦場になるのは街の周囲か街中。もし街中で戦争となれば、どうしたって被害は免れないはずだ。

 以前に経験した、集落ハフナーでの悲劇を思い出してしまう。


「ガリアは、オズボーンに攻撃した。あの子の実力を考えれば、殺すことは簡単だったはずだし、その理由も帝国なりには十分にあったと思う。けど、気絶させるに留めてた。これは、あの子が殺しを避けている事を示しているんじゃないかな?」

「まあ、確かに」

「それに帝国の宣言も、これから世界を相手にしようとするにしては、正々堂々とし過ぎた内容だった。戦争に街自体は巻き込まず、犠牲者はなるべく減らすような意図も見える」

「そう思わせて、奇襲する可能性もあるんじゃない?」

「かもしれない。けど、あの態度は、暗い侵略者というには見えなかったのよね」


  う~ん。

 ベクトの言う事に一理あるかも。

 よし、ここはベクトの言う事を信じてみよう。

 戦争は止めたいけど、どこかの街が交渉を試みるだろうし、それで止まるならそれでいい。

 もし戦争が始まれば、ガリアちゃんの周囲は今より確実に手薄になるはずだ。

 その時が、チャンスかもしれない。

 ガリアちゃんの傍についていた謎の男は強かった。

 あの男が居るという事は、いずれ私達の壁となるだろうが、ガリアちゃんを守ってくれることにも繋がっている。


「そいやさ、ルシード」

「なんだ?」

「ガリアちゃんに付き添っていたあの男。なんとなくルシードに似てたけど、身内か知り合いだったりする?」

「……いや、知らない。俺は天涯孤独の身……のはずだ」


  ルシードの顔に、一瞬、疑問の影がよぎる。

 そういえば、ルシードはヒョーベイに来る前は、街々を渡り歩いていたと聞いているけど、生まれ育った街の事とか、両親兄弟の話は聞いたことが無い。

 もしかしたら、あの男はルシードの家族に関係あるのかもしれない。


「そう。もし思い出したことがあったら、いつでも言ってね」

「ああ、分かった」


  気になる所ではあるが、ルシードが言いたくないのであれば無理に聞き出さない方が良いと思う。

 いつか話してくれる事を信じて、気長に待つこととしよう。




  そして、考えるべきなのは……サテラ君か。

 この子は、私がこの世界に来て、ヒガンちゃんに貰って以来、ずっと一緒に居たからね。

 それが、こうなるとは思わなかった。

 二つに折れちゃったけど、まだスキルで動かすことはできる。

 それって、こうなってもサテラ君を『私の剣』と私は認識していることだよね。

 であれば、クヨクヨせず……前に進もう。


「ぼーっとしながら聞いていたけど、サテラ君をどうにかしてくれるって?」

「ああ。レン代表が預けてみないかって言っていたぞ。他に宛てが無いなら、預けてみて良いんじゃないか?」


  サテラ君の刀身は、魔獣と同じ強度を誇る。

 加工できるのは、この世界においては最強状態のアレクシス様ぐらいだろう。

 でも、その為に貴重なスキル回数を使わせるのは、さすがに気が引ける。

 それ以外の方法は思いつかないし……とりあえず、レン代表にお願いしようかな。

 私じゃ、どうする事も出来ないし、他に頼れる伝手も無いんだから。


「よし! じゃあ、レン代表にお願いしに行くとしますか!」

「アーリィに、やる気が戻って来たみたいだな」

「ん、じゃあ行こう」


  ルシードとベクトも、一緒に行ってくれる。

 こうして、サテラ君をレン代表に預けた。


「確かに預かりました。多少は研究させて貰いますが、それほど時間は掛けるつもりはありませんよ」

「サテラ君を、宜しくお願いします」




  そして、私達はヒョーベイへの帰路に着いた。

 今まではサテラ君に乗って、楽していた分、歩き続けるのは本当に大変だった。

 足が痛くて、全身がだるい。

 今まで、私ってどれだけ楽してたんだろう……

 そんなことを考えながら、ようやく、ヒョーベイの我が家に帰ってきた。


「ただいま!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ