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第十三話 失敗、失敗、やっと成功

  昨日は変なのに絡まれたので、気分がスッキリしないままであった。

 あの後、何事も無く帰宅し、買った安パンと果物でお腹を満たす。味は兎も角、歯ごたえが十分にあったので、お腹は落ち着いたよ。栄養バランスはこの際無視だ。美味しいお野菜をゲットしないとね。

 夜が明け、新しい朝だ、希望の朝だ。今日は別種類の依頼を探そう。初回テンプレは無駄死にしたのだ。安らかに眠れ。

 


  突撃、となりのギルドさん! 朝早くだと、流石にギルドメンバーが居たりする。チラ見すると、これからの予定を確認している人、お金の手持ちを数えている人、朝食のパンを食べながら掲示板に張り出された依頼を見ている人等様々だ。

 これからの事を考えればご挨拶周りでもした方が良いのかもしれないけど、今はお仕事探し優先だ。口より実績の方が私を雄弁に語るのだよ。私と同じく依頼を探して掲示板の前に立つ人の脇から、今日の依頼を眺める。

 さて、このギルド。ライロンさんが訂正したにも関わらず、私は冒険するような依頼ばかりと思い込んでいたのだが、実際の所、街の便利屋さん的存在のようだ。勿論、調査や護衛といった冒険者らしい依頼もあるのだけど、依頼の大半はこの街ヒョーベイ内のお仕事だ。戦うことは出来そうもない私の狙い目はこっちだね。さって、手当たり次第にやっていきますか。




  まずは手軽にお使いの仕事。とある商人さんがどうしても外せない用事があるとかで、代わりに買い物をするだけの依頼だ。簡単過ぎて報酬も最低限だけど、初心者の私には丁度良い。

 ……失敗した。

 購入先の問屋さん、私が初心者と見て、見えるところには普通の野菜を配置して、見えない所には質の悪い野菜を詰めたようだ。

 商人さんは質が悪くても、今回はそれほど影響しないし、質を見るのは今回の仕事じゃないからから気にしなくて良いよって言ってくれたけど、私的には負けだ……


  ぐぬぬ。くじけるものか! 次だ次。

 お次の依頼は老夫婦からだ。戸棚が壊れたけど、買い直すほどではないので修理して欲しいとのこと。報酬が少ないので誰も依頼を受けそうになかったので、私が受けたのだ。

 

 ……また失敗した。

 壊れた戸棚を見ると、単純に細いほぞが折れてしまっただけで、板自体はまだまだ大丈夫そう。なので、私がちょちょいと金槌を振るえばあら不思議! 何か前衛的な作品が……あれ?

 私ってば、不器用じゃないんだよ。ほら、このアミアミとか良い感じじゃない? 網目を調整して、なんと、お花を描いているんだよ。まぁ、そうやって発露する感情の赴くままに手を加えたのは失敗かもだけどさ。

 依頼人の老夫婦は、使えない訳じゃないからと許してくれて、しかもお菓子まで頂いてきちゃったのだ……さすがの私も申し訳なかったなぁ。


  結果報告したらマシロちゃんがジト目してきたので、これ以下の結果はもう出せない。下手したらギルドを首になっちゃうかも!

 こんな私ですが、成功したお仕事もあったのだ。それはなんと大荷物運び。

 依頼はとある倉庫の管理人から。余ってた依頼で仕事内容が荷物運びとだけあったので、大丈夫でしょと気軽に受けたのだけど、依頼の場所に行ってみると、パレットに積まれた山盛りの荷物。管理人さん、依頼内容は正確に書こうよ……

 管理人さんは、見た目からして貧弱、実力もしっかり貧弱な私が一人だけ来たのを見て、流石に頭を抱えていた。

 私は荷物の前でふと考える。おもむろにパレットに剣を潜り込ませると、ひょいっと大荷物を持ち上げて見せたのだ。


「あの~。これ何処に運べばいいんですか?」

「な、な、なんて馬鹿力だ。力自慢が複数居ないと持ち上がらないと思っていたのに……」


  理屈は単純。荷物を持ち上げているのは私の力ではなく、潜り込ませた私の剣をスキル:フロートソードで浮かせているだけなのだ。私の手は「私の力で持ち上げているんだぞ~」と言うために、添えてるだけ。移動も私の力でぽんと軽く押しているだけで、実際にはスキルで動かしているので疲れ知らずだ。

 ひょいひょいと運ぶ私。どんな段差があろうと、どんな悪路だろうと無問題で、無事依頼達成。


「いやぁ、最初は依頼を撤回しようと思っていたけど助かったよ。それにしても君、異様に力持ちだね。魔法か何か?」

「いやぁ、はっはっは」


  うんうん。褒められると気分が良いね。報酬も、私一人でやってくれたお礼として、報酬を倍額してくれたのだ。ラッキー。

 成程。スキルのお陰ではあるけど、こういう仕事に今の私は向いてそうだね。今後の方向性としてこういった事を考えておくとしよう。




  チャリーンと硬貨の音が小さく響く。雑貨屋さんで、余ったからっと貰った壺を貯金箱代わりにして家に置いてあるのだ。勇者が壺を割るとお金が出てくることがあるのは、私みたいな人が居るからなのだろうね。

 この世界の歴史を聞いて、街のあちこちをお仕事で回り見たことで、この街というか、現状が見えてきた。

 遠い昔の話とはいえ、科学が発達していた影響で、現状でも地球日本と遜色ない程、生活レベルが高い。けど、街の外とやり取りが殆ど出来ないために、街の中で完結できる範囲に留まっている。特に燃料関係。発電関係が致命的に出来ないようだ。ソーラーと組み合わせて、貴族の生活地域の一部には電気を通しているけど、街の殆どには電気は通っていない。だから、街灯は無いし、上下水道を始めとする環境インフラを中世レベルとするしかないようだ。

 魔法に関しても、火起こしや水の生成、明かり等生活が便利なる程度は広まっているけど、攻撃魔法とかそういった危険度のあるものは貴族だけが保有できように制限されているとのこと。

 あくまでこの街での現状であって、他の街は違うかもしれない。

 

  私の目的は元の世界に戻る事だ。この街で調べていない所はまだまだあるので、まだ街の外を考える必要は無いだろう。お仕事を熟して生活費を貯めつつ、色々と見聞きしていこう。貴族の方も伝手が今は無いから、お仕事繫がりで行けると良いな。

 今の目標はこんな所だ。窓から見える星空はとても綺麗で、私に感動を与えてくれる。いずれは慣れちゃうかもしれないけど、今は素直に感動しておこう。では、今日の所はおやすみなさい。

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― 新着の感想 ―
老夫婦は兎も角として、商人の心広すぎ(笑) 荷物運びの仕事は、成功して良かったです。 アーリィのスキルが、こんな使い方もできるなんて!
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