第百二十七話 閑話:もしも……
もしも、レオ・キース・テイトのスキルが、天地開闢過ぎた場合
トースアース軍が突撃を開始し、街アストラロードを守るゴーレム群と激突を繰り広げている。
私たちの役目は、この戦場を突破し、街の門を破ること……なのだけど。
「街の中心に見える、一際大きな塔。あれはこの街の管理塔でもある訳だから、あそこに反逆者オズボーンが居るのだろうな?」
「ん? まあ、そういう事なら、多分そうなんでしょうね」
何となくレオさんが私に話を振ってきたので、適当に返事を返した訳だが、どうしたのだろう?
すると、突撃の準備をしている私達をよそに、レオさんは手を天に掲げる。
「反逆の徒オズボーン及び、それに従う者どもよ! 街ロンフィールドの守り人の力を見るがよい!」
……とてつもない。
そう、本当にとてつもなく巨大な剣が、レオさんの手に生まれる。
その刀身は空を貫き、まるで太陽を突き刺すかのように伸びている。
「でぃやぁぁ!!!」
その巨大な剣を、街の塔に向かって振り下ろした。
私達の前の戦場で戦っていた戦車は慌てて回避するが、ロボットや敵ゴーレムは巻き込まれ、容易く圧壊する。
そして・・・・・その巨大な切っ先にある中央塔は、砂山を斬ったかのように、容易く崩れ去った……
「ふっ……終わったようだな」
「いや、何てことしてんだ、君は」
思わずツッコんでしまう私であった。
もしも、ルイサ・リースのスキルが、壊天滅地となる場合
なんとか街中の敵を突破し、今は中央塔に突入する直前。
騎士達の到着を待って、休憩に入ろうとした、その時だった。
ルイサさんが塔を眺めながら、首を少し傾けている。
まあ、さっきの相手は相性悪かったし、ちょっとストレス溜まっているみたいね……
そんなルイサさんの肩を持つレオさん。
「お、おい! ちょっと待て。休憩しよう、な?」
どうも様子がおかしい。なんか、やたらと焦っているようだけど?
「お前達も、ルイサを止め……」
「もう良いですわ……『吹き飛びなさい!』」
伸ばすルイサさんの手を、レオさんが慌てて上げようとしたが遅かったようだ。
ザム!
なんか、妙にコミカルな音がした!?
見上げると、塔の一階から上全てが瞬時に粉みじんに消し飛んでいる。
当然、後には何も残っていない。
勿論、中に居るはずのオズボーンや他の大勢の人達も。
呆気にとられる私達をよそに、ルイサさんは晴れやかな笑顔を浮かべていた。
もしも、ベクト・セカンのスキルが、深慮遠謀に至った場合。
オズボーンによるメテオに対して、首脳陣が怯え、対応に悩んでいた頃、
ベクトは、誰にも気付かれることなく、その会議を抜け出した。
会議の雰囲気は最悪なものとなる。
消極的な意見が飛び交い、膠着状態。
取り纏めのレン代表と、なんとしても街を奪還して貰いたいグロイレイさんが必死に粘り、会議は長引いていた。
そんな中、
「ただいま」
べクトが、ひょっこりと帰ってきた。
……で。
その手には、なんとオズボーンとガリアちゃんが掴まれ、引き摺られているではないか。
「ベクト……それ、どうしたの?」
「街中へ潜入して捕まえてきた。他にも居たけど、流石に手が足りなかったから逃げられたよ」
さらっと簡単な事のように言ったけど、何やってるの!?
ベクトに連れてこられていた二人は、頭にコブを作ってのびている。
会議場は騒然。
「反乱の首謀者が、いきなり捕らえられている」という異常事態に、首脳陣は大騒ぎだった。
騒ぎを聞きつけた騎士たちが駆けつけ、とりあえずオズボーンとガリアちゃんは拘束される。
そして……
「……事件解決!」
結論。能力はほどほどが一番だね!
次章以降は、閑話無しの予定です。
ラストまで突っ走リますよ。