第百二十五話 閑話:力の確認
時は少し遡る。
最初のトースアース軍が突撃する前の話。
「アーリィとか言うのはスキル持ちと見て解るが……お前ら二人は何なんだ?」
待機場所に着いた直後、レオさんがルシードとベクトに声をかけた。
イラついた様子とか、高慢という雰囲気はない。単に、何が出来るか確認したいだけなのだろう。
「俺は別にスキル持ちじゃない」
「私は持ってる……けど、どういうのかは秘密」
「何が出来るか分からない奴と、チームを組めと?」
まあ、それは尤もな話ではある。
でも、どのような能力を持っているか、情報を控えるというのが、街に仕えていないスキル持ちの一般的な考え方だ。一般的って言っても、街に仕えていないスキル持ち自体少ないんだけどね。
「じゃあ、ちょっと私に攻撃してみて。割と本気でも良いよ」
「あん?」
ベクトの言葉を挑発と捉えたのか、少しイラついているレオさん。
おもむろに手を振り上げると、ベクトにまで届く長い棒がレオさんにより生成された。そしてそれをベクトに向かって振り下ろす。
当然のように、余裕を持って避けるベクト。
二人が一瞬見つめ合っていたかと思うと、レオさんは棒をブンブンと振り回し始めた。
でも、やっぱり当たらない。
ベクトは軽やかに回避しながら、歩くぐらいの速度でレオさんに近づく。そして、振り下ろされる腕を押さえて、ピタリと止めた。
「こんなことぐらいはできる」
「……回避のスキルか?」
「そういう訳じゃない。けど、応用でこういう風にも使える」
ふぅと軽く息を吐くと、レオさんは生成した棒を消した。
「分かった。会議でもお前は評価されていたしな。まあ、良いだろう」
そう言うと、レオさんはルシードへ視線を向ける。
「じゃあお前は?」
「俺はただの剣士だ」
「それだけじゃ駄目だ。スキルが無いというのはまあ良い。問題は……どれぐらい使えるか、だ」
そういって、レオさんは剣を生成する。それを見たルシードも、剛剣を分離させて構える。
そういえば、レオさんって、どれぐらい剣を使えるのだろうか?
ルシードの強さは、私はよく知っている。なので、レオさんがどれぐらいの実力かという方が気になった。
一瞬だった。
二人とも同じタイミングで踏み出したかと思ったら、ルシードは、文字通り目にも止まらない速さでレオさんの剣を折り、首近くで刃先を止めている。
ルシードの圧勝かと思ったが、レオさんの足から刃がせり上がっており、ルシードの腹の前で止まっていた。
「……思ったよりやるな」
「お前こそな」
ルシードは剣を収め、レオさんは生み出した剣を消す。
二人は爽やかな笑みを浮かべ、手を取り合った。
「荷物どころか、役に立ちそうじゃないか。……いいだろう」
レオさんが空を仰ぎ、深く息をつく。
「じゃあ、行こうか。そろそろだ」
その言葉と同時に、トースアース軍の突撃が始まる。
この先の命運は、誰も知らないままに。