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仮定のアーリィは今日も異世界の空を飛ぶ  作者: 田園風景
魔法の街アストラロード
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第百十八話 ムツミ・キャスカート

  上階に上がると、そこには開け放たれた門があった。

 門には激しい傷が刻まれている。恐らくレオさんかルイサさんのスキルでぶち破ったのだろう。二人とも、相当苛立っているみたいだ。

 部屋の中を覗くと、既に戦いが始まっていた。


「くたばりやがれ!」

「皆吹き飛べ!」


  下では塔が万が一でも崩れないように力をセーブしていたはずだが、もうそんな遠慮をしている様子はない。

 二人と対峙しているのは反乱軍の魔法使い達。ある者は防壁を展開し、ある者は攻撃魔法を放ち、またある者は次々とゴーレムを生み出している。

 レオさんは攻撃魔法を防ぎつつ、ゴーレムを薙ぎ倒す。ルイサさんはレオさんのフォローを受けられる位置から、ひたすらに爆破を放っていた。

 これが二人のスキルの正しい運用なのだと思う。レオさんが近接戦闘や防御を担い、ルイサさんがその圧倒的火力を敵に押し付け制圧する。そこに技術や技能は何もいらない。ただスキルをぶつけるだけの単純な戦術だけど、だからこそ強い。

 ワイルドクーガーの時は、あの機動力のせいでこの形に持ち込めなかったのだ。


「こ、こいつら! 初歩の魔法も使えない癖に!」

「守り人をなめるなぁ!」


  レオさんの生成した巨大な剣による横薙ぎで、ゴーレムごと障壁を突破。次の瞬間、ルイサさんの爆発が魔法使い達全員を吹き飛ばした。

 勢い余って後ろの壁も少し破壊し、外が見えてしまっている。二人は流石に疲れた様子だったが、幾分スッキリとした表情を見せていた。


「ふぅ……お、ようやく上がって来たか」

「皆さんが遅いので、この階は私達だけで突破してしまいましたわ」

「そんなに遅れていませんよ、まったく。怪我はありませんね?」

「この階に居たのは数だけの雑魚だった。少し拍子抜けだな」


  その雑魚相手に全力で戦って、ちょっと疲れているようだけど? ……と言うのは辞めておこう。とにかく怪我無く突破出来たのだから、それで良しとすべきなのだと思う。ストレスも発散出来たみたいだしね。

 私達に続いて騎士達が上がってきて、倒れた反乱軍の様子を確かめ、生きていた者を拘束してくれた。


  この塔は結構高い建物だったが、一階ごとの天井がかなり高いので、後二、三階登れば最上階に到達するはず。つまり、反乱の首謀者であるオズボーンがそこに居るはずだ。

 それにしても、こうやって階毎に敵が待ち構えているというのは、なんだかお約束と言うかなんというか。




  騎士の増援が来るのを待ち、二階の安全を確保してから三階へと向かった。

 ストレス発散が出来たせいか、レオさんルイサさんの二人は先行はしない。けど結局は先頭を進んでいた。

 三階へ上ると、再び門があった。階下と同じく飾り気の少ない鉄門だ。

 ルシードが慎重に押すと、ゴゴゴと音を立ててゆっくりと開く。鍵とかは無い様だ。というか鍵が付けられるような構造にもなって無いし、防犯意識は無いのだろう。


  扉をオープンぷん。中の構造も階下と同じであった。見た所、待ち受ける反乱軍の姿はない。


「中に入るぞ。不意打ちに注意しろ」

「後方と側面は皆さんにお任せしますわ」


  レオさんとルイサさんが並んで進む。その後ろをルシードとベクト、そして私。最後尾は騎士の皆さんで固めて貰っている。

 さて、このまま何も無く先に進めるか……しかしやっぱり、問屋は降ろさない。


  天井にでも貼りついていたのか、上から煌めく何かが落ちてきた。

 皆が身構え、落ちてきたものから少し距離を取る。

 落ちてきたのは何だろうか? 見た目通りなら水銀のような柔らかいもの。ぶよぶよとしていて、落ちた衝撃でその身に波紋が広がっている。


「何か判りませんが、敵ですね」


  ルイサさんがそう言うと、その正体不明のそれが爆発に包まれる。

 変わらず問答無用の先制攻撃に、思わず苦笑いだ。


「良く判らないまま倒しちゃうのですね」

「あんなのに構っている暇なんてないもの。さ、先に進みましょ。建物の高さ的に、多分、次辺りで最後でしょ」


  連続の爆破で巻き上がった粉塵を見る。

 あ、これって……


「ルイサ、危ない!」


  反応し叫んだのはレオさんだ。

 盾を生成し、ルイサさんを庇う。しかし、正体不明の何かの攻撃を受け止めきれず、二人纏めて吹き飛ばされる。


「レオさん! ルイサさん!」

「……く、くそが!」


  なんとか無事そうだ。ただ、少し動け無さそうな感じだ。

 二人を吹き飛ばしたのは……流線型のメタルスライム? それとも、薄い水銀のような色の何か。

 追撃があるかと思ったが、それは緩慢に緩やかに動きを止めた。

 そして、その向こうから若い女性の声が上がる。


「やれやれ。やはりステフソフトは魔力の消費が激しすぎるのが欠点だね。一回の攻防でもう魔力切れなんて、やっぱり無人運用にはまだまだ難しいや……」

「誰!?」


  服装からして反乱軍の魔術師。

 髪の長い女性だ。


「私の名はムツミ・キャスカート! 美しき天才魔法使い様よ!」


  ムツミは動かない何かの中にすっと入り込む。

 すると、それはムツミを包み込んだまま再び立ち上がった。


「そしてこれは私の傑作の一つ、ゴーレムのステフソフトよ! さぁ、貴方達の進撃もここまでだから!」

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