第百十四話 合流
私達は比較的大きな通りを進んでいる。
この街の家並びは少し入り組んだ形をしているようだ。きっと、上空から見れば五芒星か六芒星か、そういった中二心をくすぐる形になっているに違いない。
となれば、目指す先は街の真中心で間違いないはずだ。
散発的に妨害の魔法が飛んでくるが、イマイチ本気に見えない。妨害するにしても人手が足りないのか……それとも、私達を誘導している?
そんなことを考えているうちに、大体この街の中心、この街の運営が行政を行う塔の正面広場へと到着した。
予想通りではあるが防衛陣が敷かれている。陣の向こうには多数の魔法使い。陣の前にはゴーレムやスケルトンが多数と、外の戦場と似た構えだ。
「さて、ここを押さえればあの二人とも合流できるだろ」
「あっち側は無事なようね。まだ二人はここに辿り着いてないかな?」
「多分……いや、今到着したみたい」
私達の左右から爆破が起こる。
魔法使いが複数人、粉塵から抜け出し、陣の前で体勢を立て直している。そして、続いて現れたのはレオさんとルイサさんだ。
何があったのか、服がボロボロで手傷も負っている。二人とも頭に血が上っているのが分かる。
それぞれ追っていた魔法使いを追い詰めていた。
ルイサさんが追い詰めた魔法使い達に向かってスキルを開放する。しかし、その瞬間に不可視の魔法障壁が展開され、爆発は魔法使い達の中心ではなく、手前で発動。爆破自体も障壁で防がれたようだ。
爆発の規模が小さい。
街の外で発動していた時はもっと規模も威力も大きかったはず。たぶん街への影響を考えているのだろう。その為に障壁を突破出来ずにいるようだ。
爆発により道が破壊され、粉塵が舞い上がる。こうなると、目視の地点でしか爆発を起こせないルイサさんのスキルが届かなくなってしまう。
そのとき。
粉塵を切り裂きながら、何かが飛び出でる。
不可視の何か。それがルイサさんを襲い掛かった。
彼女は咄嗟に連続で小爆発を発生させて迎撃するものの、すべてを防ぎきることはできず、肩や腕をダメージを負っていた。
「ちょっと、助けてくる」
そこで飛び出したのはベクト。
ベクトの動きに気が付いた魔法使い達は、ベクトにも魔法を放つ。
「行使するは魔術エアカッター。目視の一人。七つの刃。発動!」
複数人から一人七つの、多数の空気の刃が、まとめてベクトに襲い掛かった。
だがベクトのスキルに対して、ただ放つだけで速度も無いというのは無駄に等しい。たとえ不可視であろうと、舞う塵の動きから刃の動きを推測する。
余裕の回避からベクトは距離を詰め、近づいた端から強烈な腹パンか顔バンで、一撃の下に沈黙させていく。
「うわわ! 何だお前は!」
最後の一人は慌てて不可視の障壁を展開し、ベクトの接近を阻もうとする。
「全周を覆うものでもなければ、この場合、意味ないよ……」
ベクトは障壁を軽々と回り込み、魔法使いの横から回し蹴りを叩き込む。
魔法使いは短い悲鳴を上げ、そのまま沈黙した。
もう一方、レオさんも同じく魔法使いに詰め寄り、細く長い槍を生成して放つ。
こちらの魔法使いは一人。向こうと同じく障壁で槍を受け止めた。
「行使するは魔術エナジーボール。目視の一人。発動!」
ただ、それだけに留まらず、レオさんの周囲も障壁で囲い、まるで風船の中のように閉じ込めた。
レオさんは全身から伸びる棘を生成し、障壁の破壊を試みるが破壊できない。
閉じ込められたレオさんの前にロックゴーレムが生成され、レオさんに襲い掛かる。
「くそが!」
ロックゴーレムとの近接戦闘を強要されている。
レオさんは巨大剣を生成し、一振りでロックゴーレムを砕く。が、すぐに次のロックゴーレムが生成された。レオさんは返す刀でその次のゴーレムを破壊するが、ロックゴーレムは何度でも生成される。生成されレオさんに襲い掛かった。
気が付けば、レオさんの周りロックゴーレムの残骸が山となっていた。そして、正面から襲い掛かってきたロックゴーレムを切り伏せた時、その山が崩れレオさんに降り注ぎ、レオさんが岩の下敷きになってしまう。
「レオがヤバい。助けるぞ!」
「らじゃー!」
まずはレオさんを危険な状態から救助しないといけない。
追い討ちとばかりに生成されたロックゴーレムが、レオさんが埋まった岩山に対してパンチを繰り出そうとしている。
「サテラ君、GO!」
サテラ君を一度上昇させてからの落下攻撃! 落下してきたサテラ君は、障壁をものともせずに突き破り、さらにロックゴーレムを粉々に粉砕した。
「なんだと! 私のエナジーボールが破壊された!?」
驚愕する魔法使いに対して、ルシードが側面から攻撃を仕掛ける。
しかし、魔法使いは動揺しながらも反応し、小さな障壁を張ってその攻撃を防いだ。
「貴様! この俺ウイフレッド--がはっ!」
「知らん!」
ルシードが魔法使いの脇を走り抜けたと同時に切り裂かれる。
「多少出来ようが、魔法使いが本職に接近を許した時点で終わりだ」