第百十三話 奥へと
まだ埃が舞う門をくぐり、私たちは街アストラロードへと足を踏み入れた。
当然の如く待ち構えられており、問答無用で魔法が降り注ぐ。
「俺様の後ろに回れ!」
レオさんの指示に従い、慌てて後ろに回ると、レオさんはスキルによる盾を作り出した。前だけでなく左右もカバーした出鱈目な大きさの大盾……というより鉄板、壁ですな。が、魔法を全て受け止める。
衝撃がまだ続いている様子から攻撃は続いているようだが、さてどうしようか。
「反撃するぞ。用意はいいな?」
「ええ、もちろんですわ」
レオさんとルイサさんの二人は、正面突破するつもりらしい。
目の前にある大盾にレオさんが蹴りを入れる。大盾は反乱軍に向かって倒れ、盛大に土煙が舞い上がった。
反乱軍の誰も巻き込まなかったが視界を隠すには十分。
土煙に覆われた敵陣に向かって、レオさんは新たに生成した投げ槍を投擲! 投げる度に悲鳴が上がるのが聞こえた。
左右に対してはルイサさんが爆撃を叩きこんでいる。建物が倒壊しない所を見ると、一応は街を壊さないように気を使っているみたい。
散発的に反撃の魔法が飛んでくるが、ルシードの斬撃と、私が貰った電磁盾の腕輪で全て防ぐ。
「お前らのサポートも役に立つじゃないか。褒めてやる」
「そうですわね。最初はお荷物を背負わされたかと思いましたが、意外と役に立ちますわね」
「ははは。それはどーも」
……うん、たぶん二人なりに褒めてくれてるんだろうけど、なんかモヤっとする。でもまあ、いいか。
言うだけあって、この二人の実力も本物だったし。
さて、反撃も無くなってきたようだけど、反乱軍の皆様の様子は? うむ。めちゃくちゃにやられているね。まさに死屍累々といった所である。
まだ動ける人は、仲間を抱えて撤退していく。敷いていた防衛陣も崩壊しているし、正しい判断だと思う。
「さて。俺達のターゲットは反乱軍の首魁オズボーンだ。誰が仕留めるかは早い者勝ちで良いな?」
「え?」
「ええ、異存ありませんわ。では私は此方の道から進ませていただきます」
「は?」
「じゃあ俺様はこっちの道から行く。じゃあな!」
止める間も無く、レオさんとルイサさんがそれぞれ別々の道に走って行ってしまった。
外の味方が街に突入してくるのは、まだ時間が掛かるはず。今、この街に突入しているのは私達しかいない訳で、そんな中ばらばらに動けば、各個撃破を狙われるに決まっている。
「ルシード。これ、どうしよう?」
「どうしようと言われてもな……これは俺も予想外だ」
二人が行った方向から破壊音が聞こえる。早速戦闘になったようだ。
「二人を追って別れるのは駄目。合流しそうなポイントを先に押さえれば、結果的に二人を狙う敵を減らせると思う」
「ベクトが言うなら、それが正解なんでしょ。ルシードも良い?」
「ああ」
と、三人で行く先の方向を見据えた所で、私達にも戦力が回されてきたようだ。
街の中で動けるようサイズを調整されたロックゴーレムが多数、私達を取り囲む。
「とりあえず撃破する!」
ルシードの声に、私達三人が別々のロックゴーレムをターゲットにする。
ルシードは超振動ナイフをロックゴーレムの腹に突き立てる。チェーンソーのような音を立ててその刃が埋め込まれた。そしてそのまま後ろに潜り抜け腹部に大きな溝を作る。ロックゴーレムはバランスを崩し、出鱈目に腕を振り回していた。
そして止めの高周波ブレードを溝へと叩きこむ。たちまちブレードの周辺が赤熱し、胴が寸断された。
二つの武器は長時間の使用が難しいけど、今の戦闘で使ったのはほんの数十秒。まだまだ余裕はありそう。早速、次の目標に向かってルシートは走り出していた。
ベクトはもっとシンプルに撃破していた。
ロックゴーレムはフェイントなんかは使わないし、高速で動くわけでもない。なので、ベクトのスキルの前ではただの案山子だった。
パンチを軽く避け、すれ違いざまに掌底を当てて岩の一つを抜く。ロックゴーレムが振り返る前に更に別の岩を抜き……数回ベクトが往復した後は、ロックゴーレムがバラバラになって沈黙した。
もはや動かない事を確認したベクトは、次の目標に走る。
二人とも強いね。私はどうなのかって?
「てい!」
サテラ君を手に持ってロックゴーレムを往復ビンタしたら、簡単に撃破できるじゃあーりませんか。
それを見た他のロックゴーレムはなんだか近付くのを躊躇している気がする。
しかし私には関係ない。可哀そうではありますが、皆往復ビンタを食らって頂きましょう。
これまで剣術の基本を学んできたけど、意味は無かったかな? いや、持ち手や足運び等細かい所が昔と変わってきている。無駄では無かったのだ。
程なくしてロックゴーレムは全滅した。
「怪我とかはしてないな?」
「うん、大丈夫大丈夫」
「ん。問題無い」
「じゃ、俺達も行くか。早く進んで二人を押さえないとな」
戦いながら、私たちは街の奥へと進む。
戦争は、まだ終わらない――