第百六話 閑話:不要なお土産
「済まないが、君達の意見を聞きたい」
「は、はあ」
私達が装備の確認をしていたところ、レン代表から今回の戦利品の一部に良く判らない物があり、異世界人である私やベクトの意見を参考として聞きたいとの事だ。
まぁ、私としても高度に発達した科学の遺物がどんな物があるのか、ちょっと興味はある。
ベクトは興味無さそうではあったが、協力はしてくれるらしい。
という訳で、仮置きされている講堂へと移動だ。
「で、まずはこれだ」
「はぁ。イキナリ良く判らないのが来ましたね」
見た目は、黒いプラスチック製の立方体だ。楽々と手のひらに乗るほど小さい。
四方の面を確認するが、ボタンもコネクタも無いのだ。
表面に書かれていたであろう文字は、長い年月のうちに消えてしまったのだろう。何も書いていない。
「……ベクト先生宜しく!」
ベクトのスキルであれば判るだろう。便利だねぇ。
「まあ良いけど……これ、パソコンみたい。超小型PCだね」
「周辺機器とはワイヤレスで接続として……電源は?」
「電源もワイヤレス」
「でも、起動ボタンぐらいあると思うんだけど?」
「起動も多分ワイヤレス。おそらく当時は、外部から起動トリガーとなる信号を送れる機械があったんじゃないかな」
成程……高度過ぎる機械は、当時の環境が無いと意味が無いという事だねぇ。
「という事は……これは使えない?」
「そです。高性能なゴミですね」
レン代表に無情な判定を告げる。ま、バラして遊んでください。
「仕方ありません。では、次はこれです」
「これはまた……形状から理解できない物ですね」
何と言えばいいのだろうか? 縁が沿った五百円玉? またもスイッチ等は見当たらない。
「……ベクト先生!」
「はいはい。ん~、レン代表、腕時計ありますか?」
「腕時計? これで良いかね?」
レン代表が近くの戸棚から腕時計を取り出してベクトに渡す。
「これは、こうやって腕時計の底面に貼りつけて使うのだと思う」
「どんな機能なの?」
「針を撃ち出せるのと、紙片を収納できる」
そ、それは……思いっきり趣味品だわ。
「良く判らないが、暗器か何かなのか?」
「いえ、レン代表。そんなんじゃないです。はい……」
「ちなみに、取り付ける位置の構造上、針は腕の横に撃てず、前方にしか撃てません。気を付けないと自分の手に針が刺さります。後、収納できる紙片は小さすぎてメモにも使えないの」
「またゴミか……」
他にも、色々見せられたが、どれも使い物にならなかった。
ボタン型爆弾……ボタンとして付けている時に衝撃を受けると爆発して自爆する。
半永久ペン……書けないのでどうした事かとよく見てみると、掠れた文字で「専用のインクを取り付けてください」と書かれている。その専用のインクが無いので、結局書けない。
パスワード管理手帳……多数のパスワードを一括管理できる手帳型タブレット。ただし、内容を見るためには何重ものパスワードの入力が必要で、この手帳のパスワードを管理する手帳が必要。
「よくもまあ、くだらない物ばかりでしたね。ベクト、ありがとね」
「心置きなく解体して、構造を参考とするよ」
全部が全部、こんなんじゃなかったのは救いかな。
けど、これがあのお土産の中に混ざっていた……きっと総司令の仕業なんでしょうね。