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仮定のアーリィは今日も異世界の空を飛ぶ  作者: 田園風景
滅びた街フィーディング
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第百三話 お帰りはこちらからどうぞ

  解放されたストレージの中の物に、トースアースの研究者が群がり、おっかな吃驚触っている。

 ストレージに保管されていたとはいえ、数世紀にも及ぶ時が経過しているのだが、それでも収められていたものに欠損は見られない。

 しかし、ちょっと騒ぎ過ぎたようだ。


「周囲の魔物が活発になってきている! それと、遠くに魔獣の姿を確認。こっちに向かってきている感じだ!」


  外部の警備を担当してくれていたキョウスティンの騎士団から忠告が入る。

 魔物は兎も角、魔獣は不味いね。ヒョーベイのギルドメンバーも、不意打ちが来る可能性を考えて、周囲を警戒している。


「撤収準備! 持ち帰るのはストレージ内の物を優先だ。手で持てない物や大き過ぎる物は諦めるように。二分後に撤収を開始します!」


  レン代表の指示が飛ぶ。ここで得られた物だけでも大収穫だものね。欲張って犠牲者が出たり、お土産を全て置いてく羽目になるより、早く戻った方が賢明だろう。

 取りこぼしがあっても、また次に来れば良いのだから。

 研究者たちがギルドメンバーの助力も得て、せっせと運び出している。

 よく見ると、カラムさんは独自にお土産を回収しているようだ。ちゃっかりしているね。


「魔獣がもう来たぞ!」


  慌てて作戦指令室の外を見ると、魔獣カオス・ダンプティが一直線に此方へ向かう姿が見えた。撤退を開始する前に来てしまいそうだ。

 それに対し、前に進み出る騎士が一人……アレクシス様だ!


「アーリィさん、ご安心を。こういった時の為に私が派遣されたのです。是非、私の戦う姿をご覧ください」

「アレクシス様、お気をつけて。ちゃんと戻ってきてくださいね」

「はい! ちゃんと戻ります!」


  アレクシス様は抜刀し、ウキウキした様子で前線に向かった。前線を防いでいた騎士達がアレクシス様に道を譲る。


 スキル:最弱に至る最強


 それを発動したのだろう。薄いオーラのような物を体に纏ったかと思うと、まずは目の前に居た魔物の群れに飛び込んだ。

 ここからでは何をしたのか良くわからないが、魔物がアレクシス様を取り囲んだと思った次の瞬間、全ての魔物が両断されていた。

 魔物が崩れ落ちるより早く、次の魔物へと飛びかかり瞬断。そしてまた次へと挑みかかる。


「あれがスキル:最強か。聞いていた以上かもしれない」


  アレクシス様の活躍を見たルシードが驚きの表情を浮かべていた。


「ルシードなら勝てそう?」

「難しいな。単純に力が強いとか早いとかだけじゃない。戦闘に関する洞察力や判断力なんかも強化されているようだしな」


  聞いた話では、相対する相手より常に強くなるスキルだ。そういう『設定』なのだ。

 だから人が勝てず、その身を破壊できないはずの魔獣よりも『設定上強く』なり、結果倒すことが出来る。スキルが有効な間限定とはいえ、この世界で唯一魔獣を倒せる人だ。


  アレクシス様の活躍を見ていると、ベクトがやって来た。どうやら私達に指示が来たらしい。


「アーリィとルシードと私で台座まで先行。台座周りの安全確保と直ぐにでも飛び立てるよう準備をしろ、だって」

「了解。じゃ、早速行こう!」

「ああ。任せろ。道中の道もこじ開けてやる」

「ちょっと待って」


  意気込む私とルシードにベクトが提案した。


「サテラ君、ここまで呼べるよね?」

「うん。大丈夫っぽい」

「じゃ、ここ宜しく」


  ベクトは壁をポンポンと叩く。どういう意味……あ、なるほどね。

 台座の近くに置いてあるサテラ君を操作し、変な所に引っかからないよう上を経由して……この辺?

 狙い通り、外から壁を破壊。私達側が土煙だらけになるのは仕方なし。この衝撃に驚いたギルドメンバーが様子を見に来たが、ルシードが説明してくれた。

 穴は少し小さいので、サテラ君を振り回して穴を大きく広げる。


「よし行こう!」


  まず先にルシードが飛び込み、続いてベクト。そして私が飛び込む。

 瓦礫と樹木で出来た足場を少し進むと、台座の所に出てきた。まるでゲームの帰り道ショートカットのようだ。こんな道があるなら最初っから言ってくれれば良いのに。


「最初は目的地が判らないんだから」


  そりゃそうか。

 台座の周りには案の定、魔物がたむろしていた。コボルドだ。台座から気になる匂いでもしたのかな?

 しかし、コボルト程度は例え数十匹居ようと、ルシードとベクトの敵ではない。瞬く間に薙ぎ倒され、台座周りの安全が確保された。


「このまま俺とベクトはこの辺りの防衛に入る。アーリィは台座を飛び立てるように準備してくれ」

「らじゃ!」


  手順は分かっているが、来た時とは違い私一人で全て準備しなければならない。

 かなり四苦八苦しながらも、なんとか準備完了。完了した丁度その時、研究員とギルドメンバーが荷物を持って、私が明けた道を通ってやって来た。

 なんとか無事に帰還できそうである。

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