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第十話 平等の街ヒョーベイ

  この世界は、なかなか厳しい状態にあるようだね。魔獣かあ、私がこの世界に来た時に居た、あのムキムキ狼男がそうなのかな?

 とりあえずは、歴史の流れからは元の世界に戻る手がかりは無さそう。それどころか、この世界を巡るのに危険があるという事か。


「歴史の流れは解った。じゃあ、今現在とこの街の事を教えてくれない?」

「はい。今の現状ですが……この街の外にある森を見ていますよね?」

「ええ。この街の周りぜ~んぶ森だったわ」

「その森全てが、魔獣カオス・ダンプティの活動範囲となっています」


  ん? それって詰んでない?


「ありゃ~それはそれは……言っちゃなんだけど、良くこの街が回せてるね」

「森全てとは言いましたが、厳密に言えば僅かに道が残っているんです。先人たちが命がけでその道幅を探し当て、安全と確認できた道が出来ているんですね。その道は街と街、集落を繋いでいて、大規模な物流は無理ですけど、最低必要分を交流しているんです。そうやって交流の道筋はありますけど、街は基本的にその中だけで必要物が賄えるように発展してきました。逆に、それが出来なかった街は、残念ですけど滅んでしまっていますね」


  道は一応残っていたか。交流の為の護衛が必要と考えれば、それに同行するのが、安全に世界を回る方法になるだろうね。よしよし、その辺りで、今後の活動を考えていくことにしよう。

 それにしても、この街の家がみんな高かったり、真ん中が山のようになっている理由が解ったような気がする。恐らく、少しでも多く生活するための場所を確保するためなんだろう。街の周りは全て森。外に街を広げられないから、高さに生活スペースを見出したのだろうね。


「次のこの街ですが、この街は平等の街ヒョーベイと言います」

「平等?」

「はい。この街を運営に使用しているスキル:フォースド・イコーリティから、そのように言われています」


  スキル!? 私以外にもこの世界にはスキルを持つ人が居るのか。これは要チェックね。


「え~っと、そのスキルってのは?」

「この街の守り人、ジゼル・マリア・クルトネーさんのスキルで、簡単に言えばこの街の税金の回収や逆に生活物資を配布するのをぱっと自動で行うことが出来るんです。個人それぞれの事情や努力してきたこと全て考慮され、ちゃんと反映されるので、このスキルを使った街の運営に反対する人は少ないんですよ」


  なんか、もの凄く街の運営だけにあるようなスキルね。にしても、私がイメージしていたスキルとは随分と違う気がする。


「便利だけど、そのスキルが、何らかの事情で使えなくなっちゃったら大変じゃない?」

「スキル:フォースド・イコーリティはクルトネー家に代々発現しているスキルなので、クルトネー家が途絶えなければ大丈夫とは思います。まあ、突然無くなっても良いように、スキルを使わない運営も並行して行っているんですよ」

「ん~スキルを持っている人って、他に居るのかな?」

「大きな街に一人居るかどうかぐらいですね。大抵は街の運営に入っていますが、稀に一人で自由にしている人もいます」


  とすると、私がスキルを持っていることを公表しても珍しがられるだけで、異常とはされないかも。とりあえずは隠して、いざって時にはって感じで良いかな。


「話を戻しますね。この街の運営は複数の貴族が協議して取り仕切っています。街が比較的広く、運営が上手く行っているお陰で、世界で上位に数えられるほど発展している街なんですよ」


  こうしてこの街の話を聞くと、なかなか良い所に私は辿り着いたようね。街が上手く回っているなら危険は少ないだろうし、そうなら腰を据えて情報収集に取り込めるってものよ。

 それにしても一つ残念な事がある……文明革新による無双ができそうもないって事! 私一人の知識程度大した事は出来ないんだけど、私のアドバイスが切っ掛けで街が発展し、私がちやほやされるってテンプレが……この世界、昔は地球より遥かに発展していたようだし、そこから衰退しているとはいえ、街並みを見る限り、私の世界の知識なんか必要なさそうなのよね。

 はぁ、まあいいわ。


「色々と教えてくれて有難うね。もっと知りたい事があったらその都度教えて欲しいのだけど、良いかしら?」

「ええ。忙しい時もあるのでそれ以外の時であれば、遠慮なくどうぞ!」

「ん~こんな小さい子なのに、良い子だ。お持ち帰りしたいぐらいだよ」


  にこやかにマシロちゃんを眺めたが、マシロちゃん本人はため息を付いている。


「あの……私、身長がとても低いし、受付としては新人なので子供と勘違いされる方が多いんですけど、これでも17歳です……」

「ありゃま」




  まあ、それはそれとして可愛いので愛でる事には問題ないのだけどね。

 ギルドメンバーとして登録が完了したようで、フウラさんが証明となるタグネックレスを持ってきてくれた。タグには私の名前と所属ヒョーベイの名称、そしてナンバーが刻み込まれている。

 階級とかそういったものは無く、ベテランでも初心者でも同じ扱いだそうな。階級を分ける程ギルドメンバーに人数が居る訳でもないのが原因。このギルド、全員で二十数名ぐらいしか居ないらしい。ベテランになれば、その人の得手不得手が解ってくるので、仕事が優先して回されやすいってぐらい。

  とりあえずは登録も済んだことだし、日はまだ高いのだ。早速、簡単なお仕事からやってみるとしますか。

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