9.噂を探れ!
本日二話目の投稿です。
よろしくお願いします。
キーラの人生は、思う通りにいかないことの連続だ。
まず、こんな容姿で生まれ落ちてしまった。
女性は小柄が重んじられるこの国で、男性よりでかいキーラは異質だ。顔が可愛かったり美人だったりすれば話は違ったのかもしれないけど、つり目なだけのきつい地味顔では話にならない。
自分より背が高く優秀なことを妬んだ令息達からは、蔑まれ罵声を浴びせられた。当然腹も立ったし傷ついたけど、直接的な悪意はまだましだったとキーラは後で手酷く思い知った。
質が悪いのは、同性だ。
キーラの優秀さを褒め称え、容姿なんて重要ではなく大切なのは中身だと言って慰める。そして、キーラを利用するのだ。
「キーラに勉強教わるから、家庭教師代がかからなくてドレス買ってもらえたわ!」
「私もよ! ちょっとおだてれば、すぐその気になってくれるんだから便利よね」
「私達からしたら勉強のできるキーラは使い道があるけど、男性から見たら頭のいいだけの女なんて厄介者でしかないけどね」
「キーラのあのデカさでは、勉強ができるできないに関わらず嫁の貰い手がいないわよ」
「持参金があれば金欲しさに我慢する人もいるかもしれないけど、あの貧乏伯爵家では無理だしね」
「キーラは私達に勉強を教えて、私達の引き立て役をやっていればいいのよ」
「そうそう、本人は利用されていることに全然気づいてないんだからバカよね?」
「勉強ができるのと、賢いのは違うのよ? 私達が好き好んでブスのデカ女と一緒にいるわけないじゃない? 一緒に歩けば、私達の可憐さが引き立つから仲間に入れてやってるのよ」
「嫌われ者を助けているって、私達の株も上がるしね!」
そう言って笑う偽物の友達の笑い声は、今でもキーラの耳に残っている。
キーラの不幸は、それだけでは終わらない。アラマス伯爵家は、ド貧乏だからだ。
貴族令嬢として嫁にいくことを早々に諦めて、周りに後ろ指を指されながらも働くことをキーラは選択した。それは、他家に嫁ぎ他家に尽くすことを放棄した代わりに、永遠に家族に囚われ続けるということだ。
(自由な前世の記憶がある分、自分のために生きられない現状を虚しいとも思う。でも、好きでもない家に嫁いで全てを捧げるより、血のつながった家族に尽くし続ける方がまだましだよね?)
そんな家族のためだけに生きる灰色の毎日が色づいたのは、学院長に出会ってからだ。
学院長の役に立ちたいという自分の欲求のままに動くキーラは、生まれて初めて自由を知った。その間だけは家族の檻から抜け出して、重荷から解放された。
(だからこそ、自分の身の丈に合った人との将来を考えろ的な発言はして欲しくなかったな。そもそも、アースター商会の跡取りでイケメンな攻略対象が、私の身の丈に合っているなんておこがましいけどね!)
夕暮れ前の空は、ピンクとオレンジの中間の色をしている。空も雲もその色に染まって、世界が優しくなっていく気がする。
キーラは淡く優しい色合いの空を見上げることで、ささくれ立った心を落ち着かせた。
学院長から『首を突っ込むな』と言われたキーラが、いいつけを守って大人しくしているはずがない。むしろ、どんどん攻めていくつもりだ。
だって、学院長は王位継承争いだと思っているけど、きっとそれだけじゃない。絶対に『ゼロカネ』が関わっているはずだ。
問題を解決して平穏な学院を取り戻すには、前世の記憶がある自分でなければできないとキーラは確信している。
(別に……、学院長が私を突き放すようなことを言ったからむきになっている訳ではないよ? ここで私が活躍して、部下として見直してもらおうなんて、思ってますけど……!)
しかし、声をかけても一瞬で消え去る程にレフィーに避けられている今、『王太子に執着しているヤバい奴』が誰なのか聞き出すのは難しい。
キーラが他にできることは、レフィーを貶める噂を流しているのは誰なのかと、その目的を探ること。
探し出す方法は考えた。簡単だ。
何気ない振りをして誰から噂を聞いたのかを聞き出し、それを一人一人たどっていく。それを何人にも繰り返して、同じ人物が浮き上がれば犯人だ。
手間はかかるけど、確実だ!
(ただ、大きな問題があるのよね……)
キーラが『ひっつめ眼鏡』と呼ばれるほどお堅くとっつきにくい教師だということ。そんな人物が生徒相手に自然と噂話を聞き出せないことは、この前はっきりと証明された。
残念ながら、この方法はキーラには絶望的に向かない。
なら、諦めるか?
「いや、私には隠し玉がある!」
穏やかに晴れた日の午後、寮に帰る前に日向ぼっこがてら中庭で会話を楽しむ生徒達の姿が遥か下に見える。
通常ならば教師の研究室は二階に集中しているけど、キーラの研究室だけ五階にある。もちろん教師間の嫌がらせなのだけれど、裏山を駆け回る体力を持つキーラにはなんてこともない。むしろ一人で落ち着けるし、静かでありがたいくらいだ。
そんな静かな部屋に注ぎ込む温かな陽の光を浴びながら、絶句したキーラは穴があくほどネイトを凝視していた。
「先生、聞いてた? 噂の出所は、エメーヌ伯爵令嬢だって言ってんだけど?」
固まったまま動かないキーラに、ネイトが再度報告を重ねる。
やっと身体が動き出すと、息さえも止めていたキーラは慌てて空気を吸い込んだ。
レフィーを貶めるの噂を流した犯人を見つける作戦を実行してくれた隠し玉は、ネイトだ。
優しそうで爽やかな見た目のネイトなら、間違いなく「何気なく」話を聞き出せる。貴族じゃなくて平民だと言うところも、相手の口が軽くなるポイントだ。
「先生、お菓子握り締めちゃってるよ? ボロボロでもう食べられないじゃん」
協力してくれたネイトを労わるためにテーブルに並べたお菓子の一つが、キーラの手の中で食べられることなく役目を終えた。その後片付けをしてくれているのは、もちろんネイトだ。
かいがいしく世話をしてくれるネイトを見て、ようやくキーラの意識も戻ってきた。
ネイトの手を握り締めたキーラは、「辛抱強く頑張ってくれたのがよく分かる。本当に感謝してるよ、ありがとう」とまずは労を労わり頭を下げる。
「…………ッグ、ゲホ、ゴホホ」
ちょうどクッキーを頬張っていたネイトは、むせてしまって苦しんでいる。キーラが淹れてあげた紅茶を飲み干して咳は止まったけど、顔は赤いままだ。
顔が赤い理由はクッキーが詰まったとキーラは思っているけど、どうなのだろうか? 自分の手をまじまじと見つめているネイトの頬は緩んでいる。
噂の出どころは、ポレット・エメーヌだった。
宰相の息子の婚約者であるポレットは『ゼロカネ』の関係者だし、未来の悪役令嬢予備軍の一人。レフィーとも同じクラスである彼女は、犯人であってもおかしくない人物だけど……。
正直に言って、キーラには予想外だった。
(だって、人畜無害を絵に描いたような子なんだもの!)
オレンジ色のふわふわとした髪にくりんとしたオリーブ色の瞳は、森の小動物のようで愛らしい印象しかない。そんな子が悪意ある噂を吹聴して回っているなんて、やっぱり人は見た目では分からない。
足掻くことなく宰相の息子の婚約者に収まっているポレットに前世の記憶があるとは思えないけど、それはあくまでもキーラの印象にすぎない。
「エメーヌ伯爵令嬢が、どうしてそんな噂を流しているかは分からない。だけど、見た目通りの可愛らしいだけの令嬢とは思えない。彼女を恐れた口ぶりの子が数人いたんだ。何か裏がある人物だと思う」
「周りから恐れられた裏のある子、か……」
ネイトは商人の子だけあって、キーラなんかよりよっぽど人を見る目に長けている。そのネイトが言うのだから、ポレットには見た目と違う何かがあるのだろう。
その理由は分からないけど、とりあえず様子を探るしかない。
「ありがとう、ネイト。私だと生徒に逃げられてしまうから、本当に助かったよ!」
想像以上に活躍してくれたネイトに、「もうこれで十分だよ!」と言ったつもりなのだけど……。
ネイトはテーブルに少し身を乗り出して、ヘーゼル色の瞳をキーラに近づけた。
子供の頃から知っているだけに、キーラにとってのネイトはずっと少年のままだった。そのネイトが、大人びた難しい顔をしている。
何だかキーラはドキリとしてしまい、チクリと胸が痛い。
「後は何をすればいい? 何でも手伝うから言ってよ。俺が先生の役に立てるところを、もっと見せたい」
「………………」
今までにないくらい真剣な表情を見れば、さすがのキーラもネイトの気持ちに気づけてしまった。
キーラにとってネイトは大切な教え子であって、それ以上にはなり得ない。
(気持ちには応えられないのに、適任だからと気楽にネイトを頼ってしまった……。これじゃ、都合よく利用していると思われても仕方がない……)
元々きな臭かった事件だけど、ポネットの登場で余計に分からなくなってる。『ゼロカネ』も王位継承争いも絡んで、きな臭いどころか大火事になりかねない。
「ごめん、ネイト。私利私欲のために、とんでもない事件に巻き込んだ! 本当にごめん! 勝手すぎて申し訳ないけど、このことは忘れて欲しい」
学院長に突き放されたショックで忘れかけていたけど、この一連の事件は三つ巴の王位継承争いに繋がる。こんな国の闇に関わる事件に、ネイトを巻き込んでいいはずがない。
「何かよく分からないけど、事情は聞かない方がいいってこと?」
「察しが良くて助かる。私が悪い。私が深く考えずに、自分の都合だけでネイトを利用した。利用しておいて事情も話せず申し訳ない、です」
「……先生らしく、ないよね? 状況を分析する余裕もないほど優先したいことがあった? それが何かくらいは、聞いてもいいの?」
できれば、聞かれたくないけど……。何も言わずに協力してくれて、今だって文句も言わないネイトに何も教えないのは失礼過ぎる。
「ある人の信頼を取り戻したくて……、焦ってしまいました……」
「ふぅん……」
どうしようもないほど恥ずかしくて落ち込んでいるキーラに、ネイトの声は冷たい。ある人と隠したところで、ずっとキーラを見てきたネイトに相手が分からないはずがない。
「『俺の信頼を取り戻したいなら、とんでもない事件を解決しろ』って、ある人に言われたの?」
「そんな訳ないよ! 危険なことはするなって言われているし、首も突っ込むなって釘もさされてる」
「じゃあ、信頼回復に必死な先生が、ある人の言うことも聞かずに勝手に空回ってるってこと?」
「……そう、だね、結局、空回ってるんだと思う……」
「空回ってるって分かってても、引き返す気はないんだ?」
望まれていないのに勝手に首を突っ込んで、勝手に自分を認めてもらおうとしているのだから、ネイトの言う通りで空回りだ。例え空回りでも、犯人捜しを止める気はキーラにはない。
グッと身体に気合を込めるキーラに対して、ネイトは呆れたようにため息をついた。
「危険だから俺を巻き込みたくないと言うくせに、自分は危険にさらされる気?」
「危険は伴うけど、解決するのに私の力が必要になるんだよ」
「先生は、危険に俺を巻き込みたくないんだよね? ある人だって、同じ気持ちなんだって思わない?」
「えっ?」
そんな可能性は全く頭になかったキーラを見て、ネイトは全身を使ってため息をついた。
振り向いてもらえない自分が可哀相なのか、気持ちを全く理解してもらえないある人が可哀相なのか、ネイトにも分からない。
ただ、ある人しか知らない本当のキーラを知りたいと思った。それを知った自分が、何を思うのかを知りたい。キーラにとって、自分とある人の何が違うのかを知りたい。
「ねぇ、先生。今回のご褒美にさ、この前教えてくれなかった『本当の先生』を教えよ」
「…………!」
突然のとんでもないおねだりにキーラは面を喰らったけど、ネイトの表情は真剣そのものだ。言葉とは違って、揶揄うような軽い様子は一切ない。
「面白い話じゃないよ? 真っ黒だし陰気な話だよ?」
「いいよ、俺も先生のことをもっと知りたい」
「知ったら……」
(知ったらきっと、軽蔑する。……でも、それでいいのかもしれない。本当の私を知れば、ネイトはきっと目を覚ます)
そう思い直したキーラは、ネイトの前で偽善の仮面を脱いだ。
「知っての通り私の父親はお人好しというか、人から感謝されることが好きな人なの。だったら領地経営を頑張って領民から感謝されればいいんだけど、頭を使ったり努力や苦労をすることを嫌うのよね。人に施しを与えることで、簡単に感謝を得ようとしてしまう。まぁ、弱い人なんだよね」
自分が施しに使ったものが、誰がどれだけ頑張って作ったり得たものなのかは考えたりしない。自分が勝手に与えてしまったことで、家族や領民がどれだけ苦労するかなんて、考えたりしない。それがキーラの父親だ。
「先生の学費を、見ず知らずの人にあげてしまったんだよね?」
「『今日良いことをしてさぁ、困っている人を助けたんだ』と自慢げなあの日父の笑顔を思い出すと、今でも殴り倒しに行きたくなる。それに、それだけでは終わらなかったんだよね……」
能天気でマイペースに暮らす父親に対して、キーラの日常は幼い頃から『労働』だった。
それは学生になっても変わらず、無事に教師となってからも同じ。そうやって必死に働き副業にも精を出して、一番目の弟の学費を貯めた。
いろんなことに耐えて、必死に頑張って自分が貯めたお金が誇らしかった。それを家族にも分かって欲しいなんて傲慢だった。どんな理由があったにしても、そんな大事なお金を家に持っていったキーラが馬鹿だったのだ。
「見ず知らずの身なりの良い紳士に『下の弟や妹のために、その金を三倍に増やしてやる』と言われた父は、ホイホイと信じて私が必死に貯めたお金を渡してしまったの」
「……えっ?」
「えっ! って思うわよね? 父のお人好しは悪人の間でも有名だったのよ。要は、狙われていたの! 私は馬鹿だから、それに気づけなかった……」
「詐欺師に、目をつけられていたってこと?」
「二番目の弟は一歳差なんだけど、翌年は弟の入学金を狙った詐欺師が何人も家の周りをうろついていたって話。もちろん家にお金は持っていかなかったし、父には小銭以外は持たせてないけどね」
ネイトは目を見開いて言葉を失っている。
若くたってネイトは狡猾な商人だ。キーラの父親のような人間が存在するなんて、信じられないのだろう。でも、事実なのだ。
お金をだまし取られたキーラの父は、反省もしなければ良心の呵責もない。「いつかきっと三倍にして持ってきてくれるよ! 俺は人を見る目があるんだ」と笑っていた。
「同じことで父に裏切られたのは二度目だから、自分の甘さを呪ったわ。父が変わるはずがないのに、お金を持って帰ったりして私は何がしたかったんだろうって自分に腹が立った」
あの日のことを思い出すと、キーラは今でも身体が震える。
怒りや憎しみや落胆もあるけど、一番は愚かな自分への羞恥だ。お金を稼ぐためだけの存在のくせに、家族の理解を求めた自分が恥ずかしい。
だって、お金を持って帰ったあの日、キーラに感謝の言葉を送る家族は誰もいなかったのだから。
「嫁にいかず働いて貴族の道からは外れてしまったけど、家族の役に立っていると知ってもらいたかった。家族にだけは、こんな私でも誇らしく思って欲しかった。でも、そんなのは私の独りよがりだったんだ」
『お金は私が何とかするから、大丈夫!』弟にそう言ってキーラは実家を出たけど、前回とは違って祖父母もいなく借りる当てもない。こんな容姿では娼館に身売りだってできない。
王都に帰ってきたのはいいけど、キーラは途方に暮れていた。土砂降りの雨が降っているのも気づかずに、学院の側を歩いているところを学院長に保護された。
「大雨の中で知っている人に会って気が抜けたのか、私はもう大暴れしたのよ」
「いつも冷静な先生が……?」
「大雨の中、泥まみれになって自分の不幸を嘆いたわ。『どうしてこんな容姿に産まれたんだ! せめて普通に産まれていれば嫁にいって、あんな馬鹿な父親や私に頼るだけの家族と縁を切れたのに!』『今すぐにだってこの国を飛び出して、家族を捨てて他の国で生きたい! 語学を勉強したのは、そのためだった!』『どうして私ばっかりこんな目にあうの! 優しさも女らしさも幸せも、みんな捨てたのに! 一番要らない家族だけが捨てられない!』ってね。ははは、すごいでしょ?」
大雨に打たれて、地面倒れ込んで、ばっしゃんばっしゃん水溜りを殴りつけながら、偽善の下に押さえ込んでいた真っ黒な真実をキーラはさらけ出した。
「『もう、死んでしまいたい! こんなに頑張って、こんなに辛いなら、生きていたくない! この先もあの家族に寄生されるなんてまっぴらだ!』真っ黒な空に向かって、そう叫んだ」
何もかも捨てて自由になりたかった。それが叶わないなら、死んでしまいたかった。それくらい現実に嫌気がさしていた。家族のために生きる力は枯渇していて、もうこれ以上湧いてくるとは到底思えなかった。
「もう何でもいいから、目の前の現実から逃げ出したかった。そんな私に学院長は『全ては理解できないけど、家族という足枷を外せない葛藤は分かる。俺も同じだ』と言ってくれた。もちろん荒れ狂う私は『地位も名誉もあるイケメンな金持ちに私の気持ちが分かる訳ない――――!』って叫んだけどね。でも、学院長が私の気持ちを否定せず、同情もせず、受け入れてくれたおかげで、心が救われた」
今まさに同情の言葉をかけようとしていたネイトは、慌てて口を閉じた。
「弟の学費は学院長が貸してくれて、地の底まで落ちて行きそうな私を気にかけて見守ってくれた。だからこそ、今がある。あの時に学院長に会ってなかったら、アラマス家は終わってたわ」
「アラマス家が終わった方が、先生は楽だったんじゃないの?」
「どうだろう? あの時にアラマス家が終わりを迎えたのであれば、私も一緒に終わっていたと思う」
キーラの話に、ネイトは納得できない。ろくでなし家族なんかに、キーラが足を引っ張られる必要はないはずだ。
「どうして? 先生の能力があれば、どこに行ったって生きていけるでしょ? 家族から離れるチャンスだったんじゃない?」
「今もアラマス家からは逃げたいけど、逃げたところで私の中から家族を消すことはできないんだよ。逃げたことに対する後悔に耐えられるほど、私は強くない」
そう言って笑ったキーラは本当に儚くて、どうして強い人だと思っていたのかネイトも分からなくなった。
「学院長と違って、俺は先生の上辺しか見てなかったってことか……」
そう呟いたネイトは、キーラが鋼鉄の鎧で弱く傷つきやすい自分を守っていることを知った。その鎧はキーラが自分で作り出したものだけど、最強の装備に変えたのは学院長の力なことも……。
「敵に塩を送るなんてバカバカしいから、これくらいにしておく」
キーラよりもよっぽど疲れた顔でそう言ったネイトは、「先生はすぐに暴走するんだから、ちゃんと考えてから行動しなよ」とどっちが年上か分からない態度で研究室から出て行った。
読んでいただき、ありがとうございました。