006恩師と恩寵
石造りの重工な建物にいる謎の人物はリオン教の最高級司教であった。
円卓を取り囲むように7人の司教が居る。彼らは「降臨」について神妙な顔つきで語り合う。
場の空気は重い。
「教皇台下のお目見えにございます」
教皇お付きのエリート騎士が高らかに宣言した後に、重く重厚な金と大理石の扉が開いた。
司教は皆起立し、教皇に視線を向けた。
「台下!台上世界から下知をお伝えくださいませ。」
7人の司教が声を合わせて言った。
教皇は無言のまま席に着いた。
「サグリニアは今回の事について、ご降臨された場所を探る調査団を組織したそうだ。」
「王家の遠縁にあたるサグリニア伯爵令嬢に嫁いだベルンと言う男を特任団長にしたらしい。」
司教は何かかぎつけたようなしたり顔をして言った。
「あの王もお人が悪いな」「もはや伯爵家もしまいか」こんな会話を交わしていた。
それもそうである。サグリニア国王が派遣する今回の調査団は神聖調査団と呼ばれるものであり、明確な成果を得る事が無ければ、不敬罪として関係者全員が破門され処罰されるのだ。
サグリニア王家はもともと伯爵家の分家だった。現伯爵家が元々の王家だったのである。しかし、国王の弟と侯爵家が手を組んで兄(国王)を失脚させたのである。もちろん兄に子が生まれなかったなどの要因もあるが、弟の計略が主要因だ。
4世代も前の話で現国王の高祖父にあたるサベニアーン1世の話しで昔のことだが、やはり現在でもしがらみが無いわけではない。
何を隠そう現教皇はサベニアーンに協力し兄を失脚に追い込んだ一派の長である。あの王家の事件の要旨は分家が主家を追い落としたことではない。教皇及び宗教勢力が王権を疑似的に操作できるようになったことだ。
「サグリニアの動きは我々に好ましいものに見える。だが、現国王はダメだな。きっと今回は本当に降臨したぞ」教皇が非常に重々しく語った。
「しかし、まさか本当に見つかるほどの変化が現れるでしょうか?」司教の一人が言う。
「確かに、いつも些細な変化ばかだ。どうせ今回も適当な理由を付けて跳ね返すんですよ」司教同士で話が盛り上がる。そこにはかすかな笑い声すらも聞こえた。
「だと良いがな」教皇は静かに言った。しかし、その声にはどこか真実味を持つ深みがあって、司教たちの背筋を冷やした。
----------- 2か月後
恩賜島が見つかった。その島を見つけたのは伯爵家令嬢の伴侶であるベルンであった。後にベルンは島をサルーザニアと名付けた。サグリニア国王は伯爵家を蹴落とすつもりが、功績を立てさせてしまったのである。
国王は伯爵家に恩賞を与え、ベルンに男爵位を授与した。そして、恩賜島サルーザニアの名誉市民としての地位に就いた。創造主が第二創成期以降に御作りになられたものに関しては恩賜と名称の前に就き、それに関しては特定の持ち主を定めないのがリオン教が定めた決まりだ。
当初結婚に反対であったサグリニア伯爵家はベルンと娘の結婚を認め、サグリニア領内に特別領を設けた。
この島は第二創成期以来最大の恩恵であった。教皇はこの事実をあまり良く受け止めていなかった。そのためこの島は恩賜島であるものの、教皇の所有としあまり大々的に発表しなかった。そのためサルーザニア島の住民を含め市民たちは恩賜島である事を知らない者も多いのである。
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そのころ、僕は再び不思議な状況に巻き込まれていた。何やら声がするのだ。どうやら島について話しているようだ。「この島って最近できたんでしょう??」楽し気な少年の話し声だ。どうしてか非常に暖かい心が生まれてきた。自分に懐いている親戚の子供の様などうしてかかまってあげたくなったので、彼に活躍を祈った。僕はそれをレオに言った。レオは以外にもすんなりと受け入れ、「それなら彼は物語の主人公だね!」といった。
僕は「そうだね!!」と元気よく言った。すると周囲が虹色に輝き、その中から金の光が生まれた。その光は次の瞬間消えてしまった。と言うよりもどこかへ瞬間移動してしまったようだった。