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小学四年生の創造主たち  作者: なぎさ翔
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002 世界の始まり

001天界の世界プロローグの続きです

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義理の兄との問答を終えてなお沸々とした言い表せない感情を抱いていた。だが、この感情の向かう先は彼自身も知らなかった。兄に対する自分を理解してくれない事への怒りなのか?一切怒らぬ父母に対する不信感なのか?はたまたクラスに友の居ない境遇に対する憤りなのか。それは分からない。ただ彼の心にまとわりついて心を冷やされる。そんな感覚に襲われるだけであった。


ガチャ「それじゃあ」兄の19歳にしては少し高めなで、それにしても落ち着く声が下の階から聞こえた。

「はぁ~い。ありがとうね」母の大きな声が響く。


時間は16時30分。彼が自宅に帰る時間だ。いつもと何ら違った出来事じゃない。毎週3~4回繰り返されるただの別れ。寂しいことなど無いはずが、今日だけは無常に何かを失ってしまった不安感や焦燥感を感じた。心の中の自分が叫んだ「追いかけろ。今行かないと失うぞ」と。


心の中の声はだんだんと大きくなっていき、その声は自分の意思とは関係なく僕の体を動かした。


「待ってー!!」僕の声が住宅街の中で響く。

だが、兄は振り返らなかった。ずんずんと進んでいく。そして僕は兄の後ろを走りながら追いかけていった。


「あれ?何ここ?」僕は気が付くと変な場所にいた。あたりは眩い明かりで白で包まれている。だが、その奥に吸い込まれるような青みがかった黒色がある。


音はしない。だが何か人々の声が聞こえる。頭の中に響く。

「助けてくれ」「安産を」「あの薬草安いわ」「おーい早く来いよー」「あの噂~、あれホントだと思ってるの?」「何考えてんのよー」

知らない誰かの声は僕を困惑させた。客観的に考えれば耐えられないほどうるさいのだろう。だが僕は、なぜか心の静まった状態であった。


「おーい!兄ちゃーん!」僕は叫ぶが何にも響かない。

気づくとそこには僕という存在しかいなかった。


「あれ?」僕は気が付いた。さっきまで聞こえた声がしなくなっている。

「どうしよう!どうしよう!!!」急激に焦燥感に襲われた。この不安を拭えない。拭うすべがない。誰もいない。出口もない。

「もうこんな場所嫌だ!!」僕は力いっぱい叫んだ。裏返った声が初めてやまびこみたいに跳ね返ってきた。


「あれ?どうなってるんだ?」高い声の少年が僕の前に立っていた。

「はぁ!」息をのんだ。この人なら僕の不安感を拭えるだろう。という理由のない安心感が一瞬で僕を包んだ。

「君は誰なの?」僕は彼に尋ねた。

「え?俺はさとみ。いや、レオだよ。」


「え?さとみ?」思いがけない兄の名前に困惑したが続けた。

「レオ?さとみ?どっちなの?」


「う~ん...君はゆうと君だよね?」レオが聞いた。

「うん...そうだけど...なんで知ってるの?」僕は不思議そうに聞いた。

「だってずっと一緒にいたじゃん」レオの口から信じられないが、信じざるを得ない話をされた。


「僕はゆうとに勉強とか教えてたさとみだよ。」レオが言った。

「え!??でも、君は何歳?僕と同じぐらいの身長しかないじゃん」僕は聞いた。

「くわしいことは分からないけど...ゆうとが俺を呼ぶ声が聞こえて振り返ったら君はいなかった。でも気が付くとこの変な空間に居て、小さくなってた」レオの話はどこかおかしな気もするが、今自分が置かれている状況を踏まえれば、信じるのにそう時間はかからなかった。


「ほんと?」僕は嬉しそうな歓声を挙げて彼に抱き着いた。単純にうれしかった。この空間に一人きりじゃなくなった事もそうだが、それよりも兄と慕う彼と僕が同年代の友達の様に触れ合う事が出来た事の方がうれしかった。


「おぉ」笑いながら言う。レオが僕を受け止める。受け止めきれず後ろに倒れこんだが、僕をかばう様に倒れこんだ。

「なんだかゆうとが大きく感じるよ」面白そうに言った。


「なんでさとみ兄はレオなんて偽名を使ってるの?」僕は単純な疑問を胸に聞いた。

「うーん...特に深い理由はないけど...。最近見てたテレビの主人公がレオだったから?なんかかっこいいじゃん」笑いながら言った。


「フーン...」そんな事で僕に偽名を使ったのか?僕は少し疑問を持っていたが、それよりも考えるべき問題に目を向ける事にした。


「ところで、ここはどこなんだろう...。」僕はつぶやいた。

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