「漫才」廃品回収車
ボ → ボケ
ツ → ツッコミ
二人「どーもー」
ボ「いきなりですが!」
ツ「どうした?」
ボ「今なら入会してくださった方全員に通常5000ポイントのところ、ななな何と! 8000ポイントプレゼント! この機会を逃していいんでしょうか? 勿論、年間費無料! 今すぐスマホで申し込んで下さい!」
ツ「いきなりCMぶち込むなや!」
ボ「楽て……
ツ「やめろて! 社名出たらアウトやろが」
ボ「あんさ、将来の夢が決まってん」
ツ「お前話の振れ幅半端ないな。さっきの何やってん。てか、おれお前の夢なんて全く興味ないわ」
ボ「廃品回収車になりたい」
ツ「あ、ちょっと気になるわ。続けて」
ボ「こちらは廃品回収車です。おうちでご不要になったテレビ、エアコン、コンポ、冷蔵庫……
ツ「いや、そのセリフは言わんでええわ。多少の違いはあれどたぶん日本人の大半がそれっぽいの聞いたことあるわ」
ボ「バグパイプ、スリットドラム、グアチャラカ……
ツ「待って待って。今の何?」
ボ「何が?」
ツ「何が? ちゃうねん。今の単語の並びなんなん?」
ボ「楽器」
ツ「そうなん? バグパイプ以外のは初耳や。てか楽器も回収するならギターとかアンプとか言っとけばええやん」
ボ「あかんねん、世界の楽器を集めたいねん」
ツ「集めてどないすんの?」
ボ「バンド組んでメジャー目指す」
ツ「グローバルすぎるやろ」
ボ「あと結成1年目で紅白出場」
ツ「お前紅白なめすぎやろ」
ボ「その辺にいる子ども何人か集めて演奏してる周りで踊らせたらいけるやろ」
ツ「だからなめすぎやって!」
ボ「でもな、おれほんまに廃品回収車になりたいねん」
ツ「さっきも思ったけど廃品回収車じゃなくて廃品回収業者やろ」
ボ「は? おれは廃品回収車になりたいねん」
ツ「みなさん聴きました? こいつ車になるのが夢らしいです。笑ってやってくださいねー」
ボ「廃品回収車になって時速120kmで一般道を駆け抜けたい」
ツ「ほんまに車になりたいんかい! しかもがっつりスピード違反や」
ボ「おれは一瞬の風になる」
ツ「なれるか! あと一般道で120kmとか危険すぎるわ」
ボ「大丈夫、おれゴールド免許や」
ツ「せっかくのゴールドが一発で免停やないか」
ボ「なめんな、おれはその辺のゴールドと違うねん。5年も運転にブランクのあるペーパーやぞ」
ツ「お前こそ運転なめんな! 交通事故不可避やないか」
ボ「120kmの安全運転で『こちらは廃品回収車です』って朝のニュースキャスターばりのええ声を道路に轟かせたいねん」
ツ「お前なんも回収する気ないやろ! 呼び止めようと思った時には走り去っとるやんけ」
ボ「伝説の回収屋を目指してるからな」
ツ「伝説の走り屋みたいに言うなや。ただのスピード違反野郎が」
ボ「捕まらんかったらええんや」
ツ「考え方最低かよ」
ボ「てか、おれは運転手じゃなくて車本体になるから逮捕されんで」
ツ「何を真顔で言ってんねん。お前車にはなれへんやろ」
ボ「おれの世界じゃ人間だって車になれんねん」
ツ「お前の世界でも人間は車になれねえよ! てかお前の世界てなんやねん」
ボ「夢なんて諦めたらそこで試合終了やろ」
ツ「諦めなくても無理なもんは無理や! なんやねんその謎のポジティブ思考は」
ボ「おれはな、別に夢の国のネズミになりたいって言ってへんやん。廃品回収車は実在してるんやからなれるに決まってるやろ」
ツ「実在しててもなれへんもんはなれんわ! あと夢の国のネズミが実在せえへんみたいに言うなや。ネズミいつも笑顔やけど目は笑ってないし怒るとマジで危険やねんから」
ボ「お前の才能があってもおれは車にはなれんか?」
ツ「お前はおれをなんやと思ってんねん。どこぞの組織のマッドサイエンティストちゃうぞ」
ボ「そうか、それは残念や。せっかくダミ声ネコ型ロボットになる夢から卒業できるいい機会やと思ったのに」
ツ「なんで廃品回収車の前の夢がネコ型ロボットやねん」
ボ「ロボットは男のロマンやろ?」
ツ「それ言う時のロボットってもっとデカくて戦闘用のやつやろ」
ボ「ネコ型ダミ声だって映画の時は頑張って戦ってるで」
ツ「まあ確かに映画やったらスケールのでかい戦いしてるか」
ボ「世論と」
ツ「待てや、そんな映画なんてなかったやろ! あったら逆に見たいわ。神回すぎるわ」
ボ「ええで貸したるわ」
ツ「え、DVD持ってんの?」
ボ「ビデオ」
ツ「再生できるか! お前ビデオ再生できる家庭が日本にどんなけ残ってる思ってんねん」
ボ「じゃあVHS」
ツ「Video Home System てビデオやないか!」
ボ「あ、じゃあ決めた」
ツ「なんや、今度はどないした?」
ボ「おれ豆腐屋なるわ」
ツ「これまた唐突やな。お前豆腐なんて作られへんやん」
ボ「大丈夫。豆腐仕入れて車で売るだけやから」
ツ「あ、車で売るんや。あれか『プーパー』とか笛吹きながら運転するんか?」
ボ「そうそうそれそれ。笛吹ながら120kmで駆け抜けんねん」
ツ「お前車から離れろや! もうええわ」
二人「どうもありがとうございましたー」




