表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/12

7話 追究

 翌日、学校に行って俺は相変わらず一人ぼっちのまま変わらない。

 というわけではなかった。


 一人友達がいるからだ。


「おはよ、十夜(とおや)くん」

「おはよう」


 柏野綾(かしのあや)、俺に告白をしてきた女の子であるのだがその真意はいまいち掴めてない。

 直近の目標は柏野と並んで歩いても恥ずかしくない男になること。

 つまり陽キャを目指しているわけだが、卒業までに告白するチャンスが訪れればいいか。


「十夜くん、髪切ったの!」

「あ、ああ。長いまま放置してるのもあれだし、そろそろ暑くなる季節だから」

「すごい似合ってる。かっこいいよ」


 手放しに褒めてくれるのだが、あまり褒められ慣れてない俺にとって少々むず痒い。

 ただ柏野が満面の笑みで喜んでいる姿を見るのはなんだかこっちまで幸せな気分になってくる。


「でも、どうして急に?」

「え、どうして……」


 久川に言われて髪を切ったが、その前になんで俺は久川にアドバイスを求めたのか。


「十夜くん、もしかして図書室に」

「行ってない、行ってない。それは全然関係ない」

「じゃあ、どうして」


 むーっと不満そうな表情で柏野は俺を睨みつける。

 正確に言えば、柏野と友達でいる為に髪を切ったという話になるのだが、……そんなこと恥ずかしくて言えねえ。


「いや、別に」

「なんか隠してない?」

「…………」

「十夜くん、本当のこと言って欲しい」

「か、柏野の為に髪を切った」


 え、おい、何言ってんだ俺。

 取り消します、今のなし、消去、デリート。消えろおおおおおおおおおおおおお。

 恥ずかし過ぎて顔を覆い隠したいところだが、柏野がまじまじと俺を見つめている。


「そうなの?」

「……まあ」

「十夜くん、ありがとう」


 これは友達として一歩、前に進めたのだろうか。



 ◇ ◇ ◇



「あんたと綾ってあんなに仲良かったけ?」

「急になんだよ」


 家庭科の授業、偶然にも俺の隣は久川奏音(ひさかわかのん)だった。

 真実を暴こうとする探偵ばりの眼光の強さで久川は俺を見据えてくる。


「前見た時はもっと一方的だった気がする」


 それはきっと久川が俺のことを目の敵にしていたからだろう。

 たとえば、街で普通の親子を見かけたとしても人によっては恋人同士に見えるかもしれないしキャバの同伴にも見えるかもしれない。


 俺が悪者だと決めつけてたらどんなに和やかに会話しようが関係ない。


「メガネ、外さないんだね」


 どことなく微笑みながら久川はメガネを指差した。


「言っただろ、俺はメガネが好きなんだって」

「いいんじゃない、メガネのままで。……私だけ知ってるのも悪くないし」


 後半は何を言ってるか聞き取れなかったが、久川もメガネの良さにようやく気付いたのか。


「ところで柏野のタイプの男ってわかるか?」

「し、知らない。綾とはそんな話ほとんどしないし」

「意外だな、女子は恋バナ好きなんだろ」


 柏野がどうか知らないが、久川は見た目的にどこにでいそうな女子高生なわけで毎日四六時中恋バナをしてても不思議じゃない。


「あんたって……だから陰キャなんだね」

「うるせぇ、ほっとけ」

「綾にはそれとなく聞いておくけど、あんま期待しないでね」


 なんだかんだ久川は良い奴なのか。




 移動教室を真っ先に帰るのが一人ぼっちの鉄則なわけだ。

 なぜなら皆、友達と一緒に教室まで戻って来るからその分のロスがないぼっちは必然と一番乗りになってしまう。


 今日もそうだと思ったが、俺の机には既に人が座っている。


「か、柏野?」

「ひゃぅ!」


 びくっと背筋を伸ばして俺の席に座っているその人物はロボットのようなぎこちない動きでこちらを振り向いた。


「なにしてんだ、俺の席で」

「な、なんもしてないよ。本当に」

「そうか、別にいいんだけど」


 こんな経験初めてでどう反応したらいいかわからない。

 柏野も困っているようで変な間が俺たちの間に生まれる。


「十夜くん! 私たち友達なんですよね」

「そ、そうだな」

「一緒にお買い物にでも行きませんか?」


 あくまで友達としてなのか、それとも恋人感覚でいいのか。

 どちらにせよ、柏野とのデート。

 ワクワクしない男はいない。



 ◇ ◇ ◇



 柏野綾(かしのあや)は家に帰ってベッドの上で悶えていた。

 ごろごろごろごろと何度も何度も転がっている。


「はぁ~~~、すっっっっごくカッコよかったなぁぁ十夜くん。なんであんなにカッコいいのかな、私どうにかなっちゃいそうだよ。早く会いたいな、早く早く、早く早く早く」


 スマホの待ち受けにしている十夜春樹の画像を見ながら柏野はデートのプランを考える。

 でもやりたいこと、したいことが多すぎてうまく纏まらない。

 ただその中でも絶対に実行しなければならないミッションがあった。


「ツーショット写真、撮ろうね十夜くん」


 その後もベッドの上で妄想を膨らます柏野だったが、ふと一つ気になることがあった。

 それは十夜が自分のことをどう思っているか。

 気になる、聞きたい、他の女の子を好きになることなんてないよね、そんな不安と焦燥に煽られながら柏野綾は眠りについたのだった。

読んでいただきありがとうございます。


よろしければ、下にある☆☆☆☆☆から作品への応援お願いいたします。


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ