真相
「ロベリア様、計画は思ったほど上手くいきませんでしたね。
まさか、あのメルフィが、剣に訴えるとは予想外でした。
「ええ、そうね、でも私が気にしているのはそこじゃないわ、メルフィはデーモンを操っていたしあの魔神の子供、どうもきな臭い。
メルフィにかかっている呪い(運命)に関連があるのかしら?
急がないと、取り返しの付かないことになるわ」
「へえ、その話、私にも聞かせてもらえませんかね?」
ロベリアが気づいたときには、短剣を持った暗殺者が後ろに立っていた。
「あらどうやってここが、かなりの距離を転移したはずなんだけど?」
「転移魔法の寸前に貴女をつかんでいたので着いてこれましたよ、残念ながら場所は見当も付きませんが、方向音痴ではないのでさして困ってもいませんね。
さあ、そんなことより、さっさと説明してもらおうじゃないですか?
私はこう見えても気が短い」
「おやおや、あまり調子に乗ってはなりませんよ、私たち三人を、貴女一人で倒すと」
その瞬間リディアはロベリアからは離れた。 さらなる殺気が彼女を襲ったからだ。
「飛び退くロベリアは第三の人物を見て、撤退を余儀なくされた。
彼こそが、勇者だったからだ。
「君はあまり勇者PTを舐めない方がいい? 単身で乗り込むとは、命が惜しくないのか?」
「これはお初にお目にかかります、勇者殿、メルフィから日頃お噂は聞いております。
アイツの思い人であるアンタも邪魔をするのか!? 答えろ、勇者」
「残念ながら、私は多弁な方ではない。 が答えよう。私は今回留守番だ。今回の件には関わりはないし、事情も知らない。 ロベリアが色々と動いていたのは知ってる。
ここに居合わせたのは単なる偶然だ。 私とて同僚が殺されそうになっているのを見逃すことはできないのでね」
「敵じゃないというなら、こちらに来たらどうですか、勇者殿」
「それはできないよ、私は現状中立だ、メルフィが魔王の配下に付く可能性があるなら看過できない。 それは勇者という立場上見逃せない事柄でね
だが、忘れないで欲しい敵ではないということを。
仲間を見逃せないし、ロベリアたちにも協力しなかった。それは忘れないで欲しい」
「それが、元の仲間に対する態度か、お前はメルフィのことを邪険にはしてなかったと聞いているが?」
「だからこそだよ、彼女をむしばむ呪いは放ってはおけない。 だからこそロベリアに、その処理を任せた。 私としてはメルフィと敵対するのは避けたかったのでね。
彼女が冥い(くらい)闇へ落ちるのを止めなければならないのも事実だった」
「魔女様の呪い? 何のことを言っている?」
「ネクロノミコンの呪いだよ、彼女は契約前からあの禁書に憑かれている。
いや、前世からか、どちらにしても、それは断ち切らなければならない運命だ」
「分かりかねますね、ならばこそ、私達と協力すればすむ話では?」
「それはできない、禁書の呪いは彼女を自滅へと導く。 彼女自身このことを知ればただではすまない。 君にも沈黙は守ってもらうよ!」
「多少手荒ではあってもショック療法が必要なのだよ」
「解せませんね、具体的な内容をおっしゃてくれてもいいのでは?」
「そうすればメルフィは、死ぬだろう。リスクは少ないほどいいからね。
むしろ君がこちらに来てはどうだい、リディア・F・ローズガーベラ」
「貴様――、狸が、いいでしょう、約束は守りましょう。
ただ、そっちの盗賊からは同族の匂いがする。 血の臭いだ、彼の除名をお願いしたいのですが。 崇高なる勇者PT似は居てはならないドブネズミだ」
「汚れ役も必要だと言うことだよ、君のようにね。 盗賊の振りをして暗殺をする。
君こそ人のことを言えた義理ではないと思うがね? どうやってか、複合クラスか?
大盗賊と、暗殺者、それが君の正体だろう?」
「まあ、否定はしませんがね。 ところで次の襲撃はいつ頃で?」
「我々も暇ではないからね、今回のでかなりの時間を使った。そろそろ戦士長ももどってくる。 魔王討伐の法に力を入れなくては、色々と言われる立場でね」
「そうですか、そうそう手を出されては、こちらとしても身が持たない、そうおっしゃるのなら手を引きましょう」
そう言ってリディアは人質同然だったロベリアを離して、夜へと消えていく。
後に残ったのは勇者PTのメンバーだけだった。
真相といいつつ、あまり深いところまではわからないのでした。




