炊き出しのお時間
都市復興の足かせにならないか若干心配はしているものの、私が近くで重圧をかけないとたいした気迫もないエステルではおそらく本気で怖がられたりはしないだろう。
悪役令嬢なら高笑いするところが、魔王様は、クツクツと笑うのが好みのようである。
「くそ、覚えてやがれ」
負け惜しみを言いつつ一時かし出しているスープ皿を持ったまま、彼はその場をあとにした。 まるっきり三下の役回りで、正直かっこわるい……
彼の日課に呪いの解除とかの抵抗をあげるようなトレーニングが追加されないと良いが、
無駄な時間だし。 魔力Cランクにはおそらく一生かかっても解呪できないであろう。
契約の印が契約の証である。
それはともかく、味に対する感想などは聞くことができなかった。 東方の鍋を多少意識して作ってみたのだけど、食べたことはないので、うまく作れたかどうか聞いてみたかったのだけど、まあいいか。
3時を過ぎたあたりでリディアが姿を見せた。 エステルは、すでにメルティーナではなくメイドエステルに戻っている。
おやつ代わりに食べる気だというのはどうやら本気らしい?
もちろん同居しているので私の作る昼ご飯を食べたはずだけど、すでにおなかがくうくうなっている――かのような飢えた獣の目をしていた。
「魔女様、私の分はちゃんととっておいてくれましたか? おなかを減らそうと、昼は修行(マル秘)をしてきました。 すでにやばいぐらいカロリー語り足りないので30人分ぐらいお願いしたいですね!?」
「一体どんな修行したらそうなるのよ。 全く欲張りね」
「何せ私が狩りをしましたからね。 その分くらいは食べないと割に合わないのですよ」
どうやら、肉を集めさせて、配給したことがそれなりに不満だったらしい。
元は取るぞという、強い意志が瞳に現れている。
「オラー、肉だ―― 肉―― 食わせろ!」
あまりの剣幕に私につかみかかってきそうなのでその口めがけて、肉(特大)
とぶち込む。
口より遙かに大きいそれを――詰まらすこともなく、当然のように嚥下する。
その様はまさにビーストモード――野生児である。
あまりの空腹に見境がなく肉にかぶりつくリディアにの口に肉を突っ込んでいく。
だが、あまりの勢いにその早さたるや、止まることを知らない。
「わあ、面白そうですね。 私にもやらせてください。餌付け――!」
もはや野生動物扱いされているリディアの口へと、早さGランクのリディアが肉を詰め込んでいく。
さすがのこれにはリディアも息が詰まるのでは?
とおもったが、意地でも食べ続ける――目が血走っていてなんか怖い!?
「おーほっほっほ、ほ、ほれほれ、私のに肉を喰らいなさいなさい――!」
メルティーナの演技と地がごっちゃになったエステルは悪役令嬢モードに変身して、飽きるまでリディアに餌付けするのだった……
さて、日も暮れる頃にはとっくに配給品もつきていた。 相変わらず禍根を残している旧魔王残党派蓮潟を見せることがなく、その幕を閉じた。
エステルもリディアも変なスイッチが入ると怖いということがわかったのだった。
結論から言えば配給一日分しかなかったし、旧魔王残派などにも行き渡らなかったわけで、食糧事情が改善したとは言いがたい。
さりとて、それなりの成果はあり、鍋は空になっていた。
私も賄いとしてそれなりに味見はしたものの悪くない出来ではあったと自負している。
問題は都市に根付く禍根や、貧困がもたらす、やっかいな病巣であるだろう。
フェルディナント自身は彼の先の敗戦で、公には降伏勧告を出している者の、周りはそれには納得していないようだった。
新生魔導女王メルティーナは認められつつあるものの、旧体制派との禍根は今も残ったままだった。
短い文章って苦手です。 何が苦手って、内容ないと賭けないからツイッターや後書きなんかは結構苦労しますね。 ツイッターってほんとに考えないで書くものなので、逆に難しいので、普段つぶやかないです。




