表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メンヘラ勇者と賢者の道  作者: やすじろう
6/13

勇者だけど…自分に自信が持てない。

僕の名前はカイト、戦士である。

今は船旅の途中、目の前は青く広い海。

僕達は失われた都市レムナンへ向かう。

ドラゴンを倒すために。


「カイト、ちょっとこい。」


モンスターとの戦闘が終了して一休みしているところ

リーダーから呼ばれる。

あの話だろうなあ。気が重い。


遡ること、数時間前。

この平和な船上は戦場だったのだ。

その戦闘で、まあ、へまをやらかしたのだった。


「おまえさあ。なんで俺の言う通りに動かないの。」


「いや、すいません。」


「すいませんじゃなくてさあ。理由をきいてるんだよ。」


うげ、面倒くさいこといいだした。


「正直、指示を勘違いしたというか。先にネクロマンサーを倒すのかと……」


幽霊船に襲われたのだ。難破船に悪霊が取り付いたらしく。多くのゴーストと、それを操るネクロマンサーとの戦いになった。

後衛にネクロマンサー、前衛にはゴーストがたくさん。

僕は、すきを突いて後衛のネクロマンサーに攻撃を仕掛けたが、倒すことかてきず…僕が前に出過ぎたことで、前衛が崩れ大混乱になったのだった。最終的には勝てたから、いいじゃないかとも思うのですが…


「持ち場を離れてどうするんだよ!おかげで俺まで前列でゴーストの対応だよ。俺が手一杯だと指示出せる人間がいなくなるんだよ。」


「はあ。」


「はあじゃねえよ!」

怒鳴られた。

「ケンジさんが前衛に入ってくれてからなんとかなったけど。本当に注意しろよ。」


「はい、申し訳ございません。」


「もういいよ、戻って。」


また怒られた。日頃ケンジさんから色々アドバイスをもらっているけど、全然成長しない。


甲板から海を眺める、嵐はすぎて穏やかな海。

あの時はリーダーから指示があったた気がしたんだよなあ。ただの勘違いかもしれないけど。


「おーい。」


いつのまにか、

隣にケンジさんが立っていた。


「ケンジさん、どうも。」


「ずっと横にいたんだけど全然気づかないから心配したよ。大丈夫?」


「はい、僕のミスで、本当にすいません。」


「よくあることだよ。あまり気にしないほうが良いよ。」


「はあ…そうですね…」


「そう言ってすぐに立ち直れぱ、苦労はないよね。」


そう言いながらケンジさんは鞄から薄いガラス板をとりだす。秘密のアイテム賢者の道。異世界の賢者の知恵の結晶。


「それでは、賢者の道のご意見を伺おうか。」


ケンジさんはガラスの板の表面をなでたり、叩いたりする。板が光る、音が鳴り、模様が変わる。板の裏には絵が彫ってある。なんだろう。リンゴかな。


「賢者の道のお導き、カイトはもっと自分にやさしくなろう。カイトは自分をせめて落ち込んでるんだよね。」


「それは……僕が失敗してみなを危険な目に合わせて、

いつも失敗ばっかりで。」


「反省するのはいいけど自分をせめない。人間だから、だれでも失敗することはあるよ。自分の弱みに目を向けて、自分を許すんだ。」


「でも…」


「急に言われても、なかなか難しいかな。

思いついたことがあるから少し待っててくれ。」


そう言うとケンジさんはどこかへ行ってしまった。

自分にやさしっくっていわれても。僕なんて、いつも失敗ばっかりで…


「おまたせ、ちょっと協力してくれる人を連れてきたから。」


うおっと。

びっくりして変な声が出そうになった。

ケンジさんは魔法使いのバニラさんをつれて来たのだった。


バニラさんは小柄で細身、一見幼くみえる女性だが、強力な魔力の持ち主で、上級魔法も難なくこなす、我がパーティーのエース魔法使いだ。大きめの黒いフード付きのマントに、黒いつばの広い帽子被り、ブーツも黑。インナーは意外と薄手で、ひざから下は生肌が露出している。少しだけ見える太腿につい目がいってしまう。


「なんだ、まだ落ち込んでるのか。しかたないなあ。」

少しかすれた、けれどもかわいい声でバニラさんは言った。


「いや、その。今回は、危険な目にあわせてしまい、すいません。」


「まあまあ、今回は一つお願いがあって来てもらったんだよ。カイトにある魔法をかけてもらおうと思ってね。バニラさんは快諾してくれたけど、カイトはいいかな?」

ケンジさんは言った。


「ええ、はい。いいですよ。よろこんで。」

動揺していてなんだかよくわからなくなっている。


「どんな魔法か気にならないの?まあいいか。

じゃあバニラさんお願いします。」


「よし、では、ゆくぞ。」


バニラさんは右手の杖を軽く持ち上げると、つぶやくように呪文を唱えた。

ダブルバインド(二重拘束)

杖から放たれた魔力は、白い靄になりゆっくりと僕を包む。

一瞬目の前が真っ白になる。

はっ

気が付くと目の前に誰かがいる。

随分しょぼくれた見た目だなあ。

僕じゃないか…

「ダブルバインド、一定量の魔力の塊を特定の個体の情報と結びつける。要するに分身をつくる魔法だ。数分で消えるぞ。」


「ありがとうバニラさん。」

ケンジさんは言った。


「造作もない。カイトも、あまり細かいことを気にするんじゃないぞ。」

そう言ってバニラさんは颯爽と立ち去った。

もうちょっと、気のきいた話ができればよかったなあ。


「魔力で作りだしたカイトの分身だ。シャドーと呼ぼうか。」もう一人の僕を指差してケンジさんは言った。

シャドーは、輪郭がはっきりせず、全体がうすく白く発光していた。そして、背中を丸めて、なんだかくよくよとしている。


「声をかけて、励ましてあげよう。」


「僕がですか?」


「そうさ、自分で自分にやさしい言葉をかけるんだ」


そんな、文字通りの意味で……


「とにかく、なんでもいいから元気づけてみてよ。」

みんな、僕なんかのために色々やってくれているんだし、とにかくやってみようか。しかしこいつ、ほんとにもっとしゃきっとしろよな。


「どうしたんだ。もうちょっとしっかりしようぜ。

我が事ながら、見ていて辛いよ。」


「そういわれても、また失敗しちゃって。もういやだよ。自分で自分がいやになる。」


「そうだよな、気持ちはよくわかるよ。まあ、当たり前だけど。だけどさ、僕だって…いや、君だってがんばったんだろ。結局ネクロマンサーも倒せたし。ゴーストだってかなり倒しただろう。」


「5体かな、いや6体かな。」


「凄いじゃないか。」


「でも、もっとうまくできたよね。毎回必ず失敗して。いつもリーダーに怒られて。」


「そうだよなあ、辛いよね。でも失敗しないことだってあっただろう。」


「そういってもなあ。」


「苦しい気持ちは分かるけど。乗り越えよう。

君はよくやっているよ。胸をはっていいよ。」


「そうかなあ、そういってくれると嬉しいなあ。」


そういい残すと、シャドーは消えていった。

僕はなんとも言えない気持ちになった。


「どうだい、自分と自分の失敗や悩みを切り離してみるのさ。同じことは、カイトの頭の中でもできるんだ。

自分の悩みをいったん切り離して、他人の悩みとして見てみよう。カイトは強く自分をせめていたけど、他人としてみたら、そこまで強くせめなられないだろう。」


「確かに。そうですね、」


「そうさ、これからはもっと自分にやさしくなろう。反省するのはいいけど自分をせめないことさ。」


自分をせめる声はすっかりきえていた。僕はやれるだけやった、人間だから失敗もあるさ、それに他の人にできないようなこと成し遂げたじゃないか。自分を褒め称え、評価してみた。


さっきのシャドーの姿を思い出す。

次なにか辛いことがあっても、あんなに悲しそうなシャドーは見たくないなあと思うのだった。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます。

評価かマイリストいただけると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ