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メンヘラ勇者と賢者の道  作者: やすじろう
4/13

4話 勇者だけど…間違いを認められない。

テーブルの上には、酒樽や美味しそうな料理がずらりとならんでいる。村一番の酒場で僕たちは、おもてなしをされているのだ。

ここは、カンタ村。港町エクセリオへの道中でたまたま立ち寄った村だ。ゴブリンに襲われて困っているところを、僕達が退治したのだった。


料理は美味しいし、村の人たちもみんな嬉しそうだ。たまにこういう事があると、戦士をやっていてもいいかなと思う。


「カイト、ちょっといいか。」


突然、リーダーから呼ばれる。

騒がしい酒場を出て、立ち話になった。


「おまえさあ。」

リーダーの声の調子から、あまりいい話ではないらし。何事だろう。まったく思いつかない…


「戦闘が始まったら、すぐに目潰しのアイテム使うようにいったよね。」

リーダーが押し殺した声で言った。


忘れてた…


「すいませんでした。ついうっかり。」


「うっかりじゃ困るんだよ。それ前提で回りは動いているんだからさ忘れるかなあ、普通。」


「はい激しい戦闘で、目の前の敵に集中してしまいまして、すいませんでした。」


「すいませんじゃすまないんだよ。こっちは、お前がいつアイテム使うかずっと待ってたんだぞ。不意打ち用のアイテムだから声もかけられないしさ。」


「ただ、激戦地での壁役だったので、アイテムを使用する余裕がなかなかなくて。それにゴブリンをかなりの数倒しましたし。」


ゴブリンを倒した数は僕が一番多かったはず。

実際うまくいったんだからいいじゃないか…


「お前が忘れてただけだろうが。ごちゃごちゃ言うなよ!」


怒鳴られた、結構な大声で。店の中からも何事かと、のぞき見してくる人まで。

あれだけがんばったのに、なんだこの人は、だいたいみんながもっとゴブリンに向かって行っていれば僕があんあなに苦労することはなかったのに。


「ええ、はい、すいません。」


ふてくされた感じで答えたが、自分がそれ程悪いとは思えなかった。みんな喜んでるじゃないか。それに何で今頃……


リーダーも怒りが収まらないのか、気まずい沈黙が続いた。ずっと僕を睨んでいる。


「もういいよ、次から気をつけろよ、戻るぞ。」リーダーは吐き捨てるようにそう言うと酒場に戻っていった。


酒場の周りで立ち尽くす。

あんなにいい気分だったのに、今は最悪の気分だ。なんでこのタイミングであんな話しをするんだ。部下に厳しすぎないか。リーダー失格じゃないか。

でも、僕がミスしなければ…


「やあ、大丈夫?」

後ろから爽やかな声がする。ケンジさんだった。


「ああ、ケンジさん。わざわざすいません。大丈夫です。」


「そうかな、なんとなく聞いてたんだけどね。

ちょっと話してみてよ。」


実は…

いきさつを話した。


「確かに僕がミスをしたんですけど、僕も色々あったんですよ。」


「そうだね、カイトの考えは言い方を工夫してリーダーに伝えたらいいと思う。ただ、その前にミスしたことはしっかりと謝らないといけないんじゃないかな。」


「でも。」


「それじゃあ、恒例の。」


ケンジさんは鞄から薄い板を取り出した、賢者の道と呼ばれる秘密のアイテムだ。秘密と言っているわりには、もはや恒例になっている。実は見せびらかしたいのではと最近少し疑っている。


「賢者の道の提案を聞いてみようか。ふむ、なるほど。まずは考え方を少し変えて見よう。謝罪は恥ずかしいことではないと。」


「はあ。」


「ピンとこないかな。」


「いえ、何となく言わんとしていることはわかりますが、感情としては恥ずかしいですよ。」


「そういう思い込みを作ってみよう。

『自分にはこういう弱い所がある、申し訳ありません』と人前ではっきりいえる人は強い人なんだよ。周りからはそう見えるんだ。」


「そんなもんですかね。」


「リーダーも戦いの前の話し合いで、自分がミスをした話をすることがあるだろう。」


「そういえば、そうですね。」


「それって、どう思う。リーダーが弱い人だと思った?」


「そうは思わなかったかな…」


「そういうことさ。過ちを認めないのは自分に負い目があるようにみ見えるんだ。

それに、自分の弱さを認めるからこそ周りに助けてもらえるし、弱点をなおすチャンスになる。」


「なるほど。でも僕も謝ってはいるんてすよ。」


「謝り方が良くなかったのかもしれない。まずは、自分の責任をしっかり認めること。そんなつもりではなどの言い訳をしたり、とぼけたりするのは一番やってはいけないことだね。」


ギクリ


「人付き合いの苦手な人は、そうしてしまいがちなんだ。自分の非を認めるほうが楽だと考えるるといいよ。」


なるほど…そうか、心臓がドキドキしてきた。

やっぱり駄目だったか。

ああ……


「まあまあ落ちついて。謝罪の方法としては、色々あるけど結局ストレートにミスを認めて謝るのが一番効果的だね。あとは、相手が一番気にしている事に触れること。今回だったら何だろう?」


「アイテムを使い忘れて、戦いが不利になることですかね。」


「もうちょっと具体的に考えてみようか。」


「うーん。魔法詠唱の時間稼ぎをしたかったのだと思うので、魔法が打てなかったら作戦が失敗していたかもしれないこと。魔法使いのバニラさん達が魔物に襲われていたかもしれないですね。」


「そんなとこかな。あとは自分がこのミスから何を学んだか、今後の償いを提示することだね。」


「なんだか大変ですね、やることいっぱいで。」


「まとめれば、そうでもないよ。君が今後相手に利益を与えることを示すのさ。誰でも自分に利益をもたらす人をじゃけんには扱えないものさ。」


「わかりました、ちょっと考えてみます。」


うーん。

こんな感じでどうでいいかな。


「あれから少し考えましたが今回の件は完全に僕のミスでした、申し訳ございません。

僕のミスのせいで、詠唱が間に合わず作戦失敗や後衛のメンバーに被害がでる恐れもありました。次からは絶対に同じ失敗をしないようにアイテム使用時は腕装備に印をつけておくようにします。」


「いいじゃないか。じゃあ、さっそく謝りに行こう。」


「え、今からですか?また今度で……」


「賢者の道の提案。思いがけない謝罪や急な謝罪は効果が上がるんだ。リーダーは君がすぐに謝りに来るとは思ってないだろう?」


「そうですね、日頃の行動からいって。」


「よし、じゃあすぐにやらなければ損だよ。先手必勝さ!」

そう言ってケンジさんは笑った。


「よし、やりますか。」


僕は酒場へと向かった。

リーダーへバックアタック。

リーダーは不意打ちをくらった。

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