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「ある日友達だと思っていた幼馴染に恋していることを自覚した私の話

作者: こんにちは


 新川梓には幼稚園、小学、中学、高校と17年間進路が一緒の香川遥輝という幼馴染がいる。私たちは親同士が大学時代からの友達だった。そのため子供である私と遥輝は気付いた頃には仲良くなっていた。



 そんな遥輝とは放課後にゲームセンターで遊んだり、休日に映画を見たりと良い友達関係を続けていたんだけど……



「う、うぅ。私の遥輝のことが好きだったのか……」



 とクッションに抱きつきながら考えるのは今日の放課後に目撃してしまったある光景。今日は学校終わりに遥輝と駅前のカラオケに行く予定だった。しかし、私が所属している図書委員会で急遽集まることになったため、遥輝には教室で委員会が終わるまで待機してもらっていた。



 私が図書委員会の会議から解放されて教室に向かうと、教室の中から遥輝と知らない女の子の可愛らしい声が聞こえてきた。気になった私は申し訳ないと少し罪悪感じながらも盗み聞きを開始した。



「だ……」

「……よ」


 盗み聞きをしているものの、正直何を話しているのか聞こえない。と思っているとその女の子が大きい声をだした。



「好きです!付き合ってください」



 その言葉を聞いた私の頭は真っ白になり、そして次の瞬間にはその場を離脱していた。気付けば私は自分の部屋に到着しており、クッションに顔を埋め自問自答をしていた。


 よく考えればだいぶ前から、私は遥輝のことが好きだったのだと思う。遥輝に女子が近づいているのを見ると胸の中がモヤモヤして、つい遥輝に強く当たってしまったもこともあった。きっとそれは、世間一般で言うところの嫉妬という奴なのだろう。何より遥輝と過ごす時間はとても楽しくて、お互いの家でゲームをして遊んだり、夜中に電話をしているときの私の顔は笑顔なことが多いだろう。それは、くだらないことで喧嘩をすることもあるが、何だかんだと遥輝の隣にいると、私は凄く安心感を感じることができる。幼馴染として一緒にいる期間が長すぎて、まったく自分の恋心に気付かなかった。いや、二人の関係を壊さないために――自分自身の気持ちに蓋をしていたのかもしれない。




 一人自分の部屋で悶々としていると、家のインターホンを鳴らす音が聞こえてきた。そこでふと思い出す、あれ?そういえば遥輝には何にも連絡せずに帰ってしまった。


……よく見れば遥輝からlineが何件か来ていた。今遥輝には会いたくないが、そんなわけにもいかないので……私はしぶしぶ玄関に向かって歩き出した。




「なーに、俺を置いて帰ってるんだよ。Lineの返信ないし」

「い、いやー、遥輝告白されてたから……私は先に帰ろうかな~と」



 玄関をあけると仏頂面の遥輝が待っていた。私はそんな遥輝に言い訳をしながら、「俺、あの子と付き合うことになったんだ」とか言われたらどうしようと怯えていた。我ながら卑屈だとは思うが、しょうがない。


「ほら、付き合うことになったら……私は邪魔かな~って」

「は~、別にあの子とは付き合ってないよ」

「ほ!本当!?」

「なんだ、もしかして俺が取られると思って焦った?」

「そ、そ、そんなことないし!自意識過剰じゃん!」


しまった!!つい、動揺して変な対応しちゃった!えぇ、そうですよ……内心遥輝が取られると思ってめっちゃビクビクしてましたよ!


それなのにコイツ!凄い良い笑顔で煽ってくるじゃん!


「とりあえず、これからカラオケに行くのも面倒だし、梓の家でゲームやろうぜ」

「う、うん。そうだね。ゲームでもしよっか」


さっきの一件で完全に忘れてたけど、今日は二人でカラオケに行く約束してたなー。

……っていうか、私たちってよく一緒に帰ったり、遊んだりしてるから――私たちを知らない人が見たらカップルに見えるのでは……


と、とりあえず今は遥輝との時間を楽しんでいつも通りの私に戻ろう。








※※


 そんなこんなで、某格闘ゲームをのめり込んでやっているいる私たち。さっきまでは色々なことを考えていたけど、二人でゲームを始めれば普段通りの私に戻ることができた


……と思っていたのだけど。


「ねぇ、俺が告白されてるの見てどう思った?」

「は、はひ?……べ、別にどうも思ってないけど」


 そんな遥輝からの質問にジェットコースターに乗ってる時なみに心が揺さぶれた私は……動揺して素直になれなかった。というか――そ、そんな胸が痛いなんて思ってても言えるわけないじゃん!



さらに遥輝が続けて言った言葉に、私はドキッとする。


「もし、俺か梓に恋人ができたら……この関係は終わるのかな?」

「そ、そうじゃないかな……どうしてそんなこと聞くの?」

「俺、好きな子がいるんだよね」

「…………」

「まぁ、梓なんだけど」

「は!?」


え、え、えー!!うっそ、さっきまで頭の中が動揺やら悲しみやらで真っ白になっていたところに、さらに爆弾が飛んできたんですけど!


「は!?って何だよ……結構勇気出して告ったんだけど……」

「ご、ごめん!か、かなり動揺しているというか……」

「ま、返事はいつでも良いし。ゲームしようぜ」



 と遥輝は照れくさいのか少し赤らめた顔でそう言ったが、私は自分の確信していた。遥輝に好きだと伝えるなら、今がチャンスだと。今を逃したら恥ずかしく言えないかもしれない。せっかく遥輝が勇気を振り絞ってくれたのだから



……私も勇気を振り絞って、好きだと伝えよう。



「ま!まって!わ、私も遥輝のことが好きで……」

「……え?」

「うー!正直に言うと遥輝が告白されてるの見て凄い焦ってました!わ、私も――は、遥輝のことが好きなので……付き合って頂けると嬉しいです。」

「ま、マジか……凄い嬉しい」

「う、うん」



「「…………」」



 なんでだろう、お互いに好きと伝えてあったはずなのに……何か恥ずかしいし、凄い気まずい空気だ。でも、心の中はとてもポカポカしている。



 よく考えると私たちはずっとカップルのようなことをしてきたし、付き合い始めたからといって、これといった変化はないのかもしれない。それでも、遥輝と付き合い始めたという事実が胸の温かくしてくれる。これから、私たちの関係がどのようになるかは分からない、それでも何だか良い未来を築いていけるような気がした。



とりあえず気まずい雰囲気を脱却する為に、私は遥輝に向かって言った。



「とりあえずゲームでもしよっか!」




ちなみに、後日クラスメイトの皆からは「え!本当にまだ付き合ってなかったんだ」と驚かれた。


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