00.プロローグ Place:渡り廊下
Time: 昼休み
戦乙女と書いてワルキューレと呼んでください。
世界から色と音が無くなるという経験をしたことがあるだろうか。
簡単に説明するとつまりは時が止まっている状態である。
僕は今まさにその状況下にあるわけだが、
このことに関しては実に冷静だ。
まあなんというか信じられないかもしれないが、今回が初めてではないからだ。
そして僕は片足が浮いた状態でかれこれ30分は静止している。一歩を踏み出す途中のポーズだ。そろそろ体力の限界だか絶対に動くわけにはいかない。気づかれてはいけないのだ。
この、時が止まった状況の原因である彼女に。
令嬢たちとの世間話の最中にシンキングタイムに入って、ひとり作戦会議を開催している僕の婚約者に。
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ここは王立魔術学院。幼稚舎から高等部までの学び舎である。この国では魔力を持つものは15歳になるまでに必ず魔術学院に入らなければならないという決まりがある。
基本的に15歳、高等部からの入学が多く、
僕も15歳で入学し今年で2年目になる。
幼稚舎から在籍している生徒は少なく、幼稚舎から在籍する生徒は基本的には貴族で、彼らは2つのケースにより通常より早くから教育が開始される。
一つ目は魔力量が多く、能力制御のためというケース。貴族は幼い頃に魔力が発現する傾向があり、魔力量が多いと、自分の意思と関係なく魔力が暴走してしまうことがあるからだ。
二つ目は戦闘向きの魔力を持つ女児のケース。例外もあるが、基本女性は癒しの魔力を持って生まれてくる。体の傷を治す、病気を治す、植物を癒す、動物を癒すなど様々な能力が存在する。
そんな中、ごく稀に戦闘タイプの魔力を持つ女児が生まれる。
彼女たちは魔力が発現した段階で魔術学院に入学する決まりになっている。
これは戦乙女のシステムが関係しているのだが、戦乙女については今は置いておく。
そして僕の婚約者である、オリビアは幼稚舎から魔術学院に通っている。理由は魔力量が多いためだ。
..............そろそろ1時間が経過する。
がんばれ僕の筋肉。限界を越えるんだ。やばいトイレ行きたい。
なんてことを考えているうちに、止まった世界に徐々に色と音が帰ってきた。
世界が元通り動き始めた。
そして僕は浮いた片足を自然に地面につけ、トイレに向かうべく歩みを続けようとしたが、全身がつってしまったため派手に倒れた。
かっこわるい。みんな、あんまりこっちを見ないでくれ。
あー時よ止まれ。
一応ジャンルは乙女ゲームですが、彼らはそんなことわかってません。
その設定は後々出てくる感じです。
魔術学院は幼稚舎、初等部、中等部、高等部があるという設定です。