英雄達の決意
キラーとの戦いで私達はなぜ戦わなくてはいけないのか?疑問に思ってしまう。
メルヘルも私達の演奏を聴いて、半分邪心の心を改心させ私達のゴブリン達と人間達との和解をする事を協力してくれるみたいだ。
メルヘルはなぜ私に手加減をしたのかは、彼もまた、争いは憎しみしか生まないことを知っていたからだ。
私達の世界でも、歴史を勉強して争いのプロフィールだ。
でも争うことにより、親睦を強める事だってあることをキラーとの戦いで学んだことだった。
けれども争いはよくないと私は思う。
でも私達は戦うしかないんだ。
ゴブリン達と人間達を和解させるには争いを避けて通れないだろう。
だから私達は必死に楽器の演奏の練習をする。
そして何曲か曲を作ってゴブリン達と人間達を和解させることに人力を尽くしている。
でもメルヘルは言っていた。
メルヘルはレベル5のゴブリンだが、レベル5の中でも最下位の位置に就いていると。
ちなみに私達の演奏で昇天したキラーはレベル5の第6位に位置するとメルヘルから聞いた話であった。
それにレベル5のゴブリンの一位はメルヘルやキラーが束になっても勝てない相手だと言っていた。
そんなゴブリンに私達の演奏はどこまで通用するのか?いや通用しなければ私達はそれで終わりになってしまう。
演奏している最中に私がギターを止めると、心音も明も演奏をやめて心音が「どうしたの?」と心配そうに私に言いかけてくる。
「メルヘルが言うように、今の私達の演奏ではレベル5最強のゴブリンにかなわない」
「だからってそのまま指を加えてやられるのを待っていろと言うの?」
「そうは言っていない。ただ・・・」
「ただ?」
「とりあえず今日はお店に行ってみよう。リリィなら何か知っているかもしれない?」
心音は演奏を中断してまでリリィに会いに行くことは不本意だと思っていたが、私はこのままではレベル5最強のゴブリンを改心させるにはどうしたら良いのか聞いてみるしかなかった。
国道を通って、女亭主の妖精が経営する店へと入っていく。
そこはゴブリン達と人間達が共存して楽しんでいるところだった。それは相変わらずなのだが・・・。
私達に気がつくとゴブリン達と人間達は待ってましたと言わんばかりに私達の演奏を待ち望んでいる。
心音が「とりあえず二三曲歌ってからリリィさんに、聞いて見ようよ」
「そうだね」
私はドラムの明に合図を送り、演奏を開始した。
やっぱり演奏して、みんなが盛り上がってくるとテンションがあがる。
私達の練習の成果は出ていて、とりあえず三曲歌って、今日のところは終わりにしてリリィさんの元へと行った。
「お主達が来ることをわしは知っていたよ。きっとこれから襲ってくるだろうゴブリンレベル5最強のレベッカの事についてじゃろう」
「リリィさんはレベル5最強のゴブリンをご存じなのですね」
「ああ知っているとも、今のお前達にレベッカに会ったら、間違いなく返り討ちにされてしまうのが落ちじゃろう」
「じゃあ、もっと練習を重ねて、レベッカに対抗するしかないんですか!?」
「お主達が演奏をうまくなってもレベッカを改心させることは不可能だろう」
「じゃあ、どうすれば!!?」
リリィは窓の外を示した。
何やら山脈らしき物が見えた。
「あの山脈が何か?」
「あそこはキーレンドの山と言って、その聖剣エクスカリバーをラグナロクに変え、心音が持つ炎の杖を召還の杖に変え、明が持つ賢者の杖をパワーアップさせることが出来る」
「じゃあ、私達がパワーアップすれば、レベッカを改心させる事が出来るんですね」
「ああ、レベッカ以上の力を得る事が出来、お主達の演奏もパワーアップするじゃろう」
「じゃあ、今からキーレンド山に向かおう」
と私が提案すると心音が「リリィの話を聞いて、そう簡単には行かないような気がするんだけど」
「心音の言う通りじゃ」
そこで女亭主の妖精は「私もキーレンド山の洞窟に入り、それらの武器を手にしようとしたけれど、何者かに私の二人の仲間の命を奪われて、私は命からがら逃げてきたんだけどね」
話によるとキーレンド山に行き、武器を強くしてもらうには、簡単な事じゃないと分かった。
でもレベッカに対抗するには私達の武器を強くさせ、演奏もより魅力的にするしかない。
「行こう。心音、明」
でも心音が私の耳元でささやくように「あんた本気で言っているの?後三ヶ月よ、それまでに私達は危険を避けて元の世界に戻ろうと約束したじゃない」
「確かにしたけれど、この世界をほおっておけないよ」
「あんたって人は、どこまでお人好しなの?」
「だって私達の世界では味わえないことだよ。仮に私達が元の世界に戻れば、私達の演奏は聴いてくれる人はまずいないでしょうね。だからこの世界では私達は英雄なのよ」
「英雄なのは良いけれど、命の保証がないじゃない!あたしはごめんよ」
そういって心音は店から出ていってしまった。
私達はこの世界では三人そろわなくては意味がない。だから心音にも力を貸してもらえれば、私達はキーレンド山に行き私達の武器をより強力にする事が出来る。
そこでぼんやりとしている明に聞く「あんたはキーレンド山に行く気はあるの?」
「僕は盟ちゃんが行くところならどこへでも」
かわいいなあ明は。
それより心音がかわいくない。
とにかく私と明は心音を説得しなければならない。
元の世界に帰りたいかあ・・・。
元の世界では私達は周りから蛇渇のごとく嫌われて来たんだしな。
でもこの世界では私達は英雄だ。
こんなにおいしい目に遭っているのに心音はそれでも元の世界にこだわると言うのか?
私と明は心音を手分けして探した。
「明は城の方をお願い、私はいつも町の人が演奏するところに行くから」
「分かったよ」
とにかく心音を説得しなければ。
私は心音を捜しながら思った。
そんなに元の世界に帰りたいのかよ。
確かにキーレンド山は命がいくつ会っても足りないくらいに危険な事だとは知ったところだ。
でも心音考えて見ろよ、私達が元の世界に戻っても、今よりももっと悲惨な事があるんだぞ。
学校にはろくにいけない成績を取らされたり、中学では私達の演奏に嫉妬した市議会委員の娘に雑巾の水を飲まされたり、零点をとらされたりと大変な目に遭ってきたじゃないか。
それでも元にいる世界に戻りたいか?
私はこの世界で私と明とそして心音とで、輝きたいんだよ。
今日も町の中央広場で演奏しなければならない。
キーボードの心音がいなければ私達の演奏は成り立たない。
もしかしたら心音、中央広場に到着したんじゃないかと思って中央広場に行くと心音は町の中央広場で体躯座りをして待っていた。
「心音、こんなところで何をしている?」
「あなた達が来るのを待っていたのよ」
そこで明が来て、「心音ちゃんやっぱりここに居たんだね」
心音が大きなため息をついて、私達に言いかける。
「この世界では私達は英雄だよな。元の私達が住む世界のことを考えていた。私達は演奏したことによって、クラスの市議会委員の娘の嫉妬をかって成績を下げさせたり、雑巾の水を飲まされたりもしたよね」
心音の言っている事は私が心音を捜すときに思ったことだった。
そう私達はこの世界では英雄だ。誰にも負けない英雄だ。私達の住む世界では音楽がこんなにも素晴らしい事なんて思わなかった。
そんな事を思っていると、町の人達やゴブリン達が私達のところまでやってきた。
私は聖剣エクスカリバーをギターに変えて、心音は炎の杖をキーボードに変えて、明は賢者の杖をドラムに変えた。
町の住民達とゴブリン達は私達の演奏を待ち望んでいる。
私がギターをかき鳴らして、心音がキーボードを奏で、明がドラムを鳴らした。
町の人達とゴブリン達を会わせて五千人くらいの人々が私達の演奏をまだかまだかと待っている。
私は明に合図を送り、演奏を開始した。
楽器をならす私達はまさに英雄その者、町の住人達もゴブリン達も一つになっている。
私達の手でゴブリン達と人間達が共存したら、もっと素敵な事だとは思わない心音。
そう演奏しながらアイコンタクトをとる。
すると心音はにっこりと笑ってくれた。
これで決まりだ。私達はキーレンド山に続くところを行くことが決定した。
確かに命の危険はあるけれど、私達は誰もまねできないいわば青春を味わっている。
心音、明、ここは胸を張って行けば良いよ。
そして演奏が終わり、私達は町の住民達とゴブリン達に告知をする。
「私達はキーレンド山に行き、もっとパワーアップして帰ってきます。それまで私達はここでの演奏をやめる事にします」
町の住民やゴブリン達は何か深刻な様子で語り合っていた。
町の住民の一人が「本当にキーレンド山に行くのか!?」
「ええ、そのつもりだけれども」
「悪いことは言わない、あそこから帰った者は誰一人としていないのだ!?」
その忠告を聞いて私達は深刻な状況に陥って葛藤した。
町の住民の一人は言っていた。キーレンド山から帰ってきた者は今だ誰もいないと。
私はそんな葛藤を振り払い「私達はキーレンド山に行って、演奏と戦いに強くならなければなりません」
町の人はがやがやと言って「これであんた達の演奏が聴けなくなるのかよ」と悔やむ人も居た。
「大丈夫です。私達は帰ってきます」
私はボブカットの髪を整えて、キリッとした表情でみんなに告げた。
それでも町の住民達もゴブリン達も動揺を隠せない感じで、私達に告げる。
ここで心音が「みんな、そんな深刻な顔していると幸せが逃げていってしまうわよ。私達があなた達の約束を破った事がある」
「心音」
あれだけ元の世界に生きて戻りたいと言っていたのに今ではやる気満々だ。
私はそういういつも私達のバンドのまとめ役を担っている心音の事が好きだ。
明が「僕たちは必ず帰ってきます」
すると町の住民達とゴブリン達は拍手を送ってくれた。
「分かった。私達は信じているから。あなた達の事を」「確かにあんた達は俺達を裏切ったりはしなかったよな」等々黄色い歓声が私達を包み込んだ。
確かにキーレンド山は危険なところだと言うことは分かった。でも今の私達なら出来そうな気がした。
そして私は町の住民達とゴブリン達に「私達はよりパワーアップをして帰ってきます。それまで私達の事を信じて待っていてね」
すると観客達は「ワーーーーー」と歓声が轟いた。
そうだ。私達は負けるわけには行かないんだ。
キーレンド山がどんな危険なところなのかは分からないが、私達は必ず帰って、またみんなのところに戻るつもりだ。
演奏が終わり、城の来賓客を招く部屋と行こうとすると、オルガメッシュ王とレベル5のメルヘルが、私達の事を待っていたみたいだ。
「どうしたんですか二人して」
メルヘルが「お前達、本当にキーレンド山に行くつもりなのか?」険しくちょっと怖い顔をしてメルヘルが言う。
そこでオルガメッシュ王が「悪いことは言わない、あそこに行かない方がいい」
「何ですか二人して、私達はもう決めました。キーレンド山に行って、この聖剣でもあり楽器でもあるエクスカリバーをもっと強くして帰ってきます。
心音も明もね」
心音と明の方を見てウインクする。
すると二人は笑ってくれた。
オルガメッシュ王は「そこまで言うのなら、お主達は本気みたいだな!」
「本気ですよ。私達は行きます。キーレンド山に」
「全くお主達にはいつも感服させられてしまう。よし、ならキーレンドの山の麓まで馬車で送るとしよう。我はお主達を信じておるぞ」
「ありがとうございます」
と私はオルガメッシュ王の手を両手で握った。
そして私達は来賓客用の部屋に戻った。
心音が「本当に大丈夫かしら?そのキーレンド山に行くのは」
「何を今更言っているんだ。あそこの山に登るのは私達しか居ないんだよ。それに私達はこの世界の英雄よ。その英雄が前人未踏のキーレンド山に行くのよ」
「相変わらずおめでたい頭をしているのね」
と心音は半心私の事を疑って居るみたいだ。
そこで明が「ねえ、心音ちゃん」
「何よ明」
「私達は盟ちゃんについていって散々な目に遭っていたけれど、それがすべて悪い事だったと思う?」
心音は胸に手を当てて考え始めた。
「確かに悪い事ばかりじゃないわね」
「でしょ。だから私は盟ちゃんの事を信頼しているし尊敬もしているんだ。盟ちゃんは私達を素敵な場所につれていってくれるんだから」
「明、そこまで言われるとさすがに照れるな」
「全く、でも今度は本当にやばそうな気配がムンムンしてくるのはなぜだろうかね」
「大丈夫だよ。心音と明には損はさせないつもりで居るから。それにキーレンド山にも危険は承知だけれどもおもしろいことがありそうで、私はわくわくしているんだけどな」
「全くあんたのはかなわないよ。とにかく今日のところは寝ましょう。明日はキーレンド山の麓まで馬車で行くんだから」
そういって私達は蝋燭についた明かりを消した。