8.極意
思いつくままに殴り書き。
三択の極意。
さくらさんによる、「男の夢!三択イベント」 にはある法則がある。
まず、それぞれ選ぶとどうなるか。
「お風呂」
これは普通にお風呂に案内される。
綺麗に畳まれたタオルと洋服が準備されて終わりだ。
湯加減はややぬるめ。背中などは流してもらえない。
「ご飯」
これもご飯が出てくるまでは普通である。
ただし食後のデザート扱いに、目の前で魚肉ソーセージを使って、芸術作品を作ってくれる。
魚肉アートと俺は呼んでいる。
ピサの斜塔、モアイ像、スカイツリーなど、主に縦長のものを作ってくれる。
最後に、選択するのにかなりの勇気が必要だったもの。
「さくらさん」
さくらさんを選択すると、薄暗い照明の寝室に案内され、アロマを焚かれマッサージをされる。
変な意味ではない。
正真正銘、ただのマッサージだ。
柑橘系のアロマ(なぜかほのかに生臭い)の香りに包まれて、仕事中座りっぱなしで硬くなった腰や足などを、さくらさんが全体重をかけて揉んでくれる。
なお、あまり効果はない。
実はこの三択、さくらさんの中では、選んで欲しいものが決まっているらしい。
そのことに俺が気付いたのは、初めての三択から2週間が経った頃だった。
いつものように、脳内あみだくじの結果でお風呂を選ぼうとしたところ、
ヒュンッ!!ヒュンッ!!
さくらさんがすごいスピードで尻尾を振っていたのだ。
なんてスピードだ。俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。
試しにご飯を選ぼうとすると、
…………。
何ともない。
「さくらさん」
…………。
何ともない。
「お風呂」
パタパタ!ヒュンッヒュンッ!!
は、はやい…。
その日のお風呂は、入浴剤が入っていて、ふかふかのタオルが用意されていた。
確かに今まで、少し豪華だと思うことがあった。
魚肉アートがいつもの縦長モデルと違って、質量保存の法則を無視した形になったり、マッサージのとき、アロマの生臭さが少し強かったり、体重を乗せるときにジャンプが加わったり。
なるほど。
さくらさんが尻尾を振ってるものを選ぶと良いのか。
1つ気になるのは尻尾を振る条件だ。
しばらく尻尾を振ったものを選んでみて思ったのは、どうも外の天気や気温・湿度、自分では気づかない俺の疲労度などを、さくらさんが瞬時に見極めて判断しているみたいだ。
雨だったり、いつもより寒かったりするとお風呂が多い。
マッサージをされると、意外と凝っていることに気づかされる。軽いのであまり効かないけど。
さくらさんは自分のオススメを選ばれると、とても嬉しそうにする。
その姿を見るのも最近の癒しになっている。
よし、明日も尻尾を見逃さないように頑張らないとな。
三択の極意。