6.帰宅
何と答えれば正解なのか。
「先輩って彼女いたんですか?」
芸術的なお弁当を目の前に固まっていると、
後ろから声をかけられた。
明るい性格にふわふわとしたショートな髪型、癒し系の笑顔で社内でも人気の女の子だ。
彼女なんかいないと伝えると
「なら、先輩が自分でそのお弁当を作ったんですか?なんか、変わってますね」
カワウソが作りましたなんて言っても、信じてもらえるはずもないので、苦笑いで返すしかない。
すると、何を思ったのか
「ふふふ」
「特別に、先輩に今度良いモノを作ってプレゼントしてあげましょう」と
いきなりそんなことを言って、嬉しそうに去っ行ってしまった。
なんだったんだ…?
「ふーん…なるほどな」
相変わらず目の前の先輩はニヤニヤしている。
そんな先輩は無視して、俺は目の前の芸術作品に手をつけた。
仕事を終え、帰宅途中にお惣菜屋さんが目に入った。
かなりの頻度でお世話になっている所だ。
普段ならば寄って帰るが、
俺の予想が正しければ、さくらさんがご飯を作って待っているはずだ。
しかも絶対にサバだ。自信がある。
とりあえず、さくらさんの好物(?)の魚肉ソーセージだけスーパーで買って帰る。
ガチャ
「ただいま。さくらさん」
玄関を開けると、さくらさんがリビングから走って来た。
奥のテレビにはサスペンスドラマが映っているのが見える。
さくらさん、サスペンス見るんだ……
そもそもテレビ見るんだ……
何とも言えない気持ちになりつつも、さくらさんを見ると、小さな紙を持っていた。
受け取って見てみると…
3つの絵が描いてある。
めちゃくちゃ上手い。
お風呂の絵と魚の絵、いや、サバの絵か。
そして、やけに可愛らしくデフォルメされたカワウソの絵だ。
?
??
!!!!
これは…まさか……。
「キュイ?キュキュ?キュー……キュ?」
『お風呂にする?ご飯にする?
それとも、あ・た・し?』
的なやつか?
いや、意味がわからない。
てか、いつもの恥じらいはどうした!?
いや、そこは問題じゃない!!
なんだこれは!?
わからない。
何と答えれば正解なのか。