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54.クリスマス①

お待たせしました。

クリスマスの話です。

男と女と雌の聖夜。




「お邪魔しまーす」


 おお、上がってくれ。




 12月24日。クリスマスイヴ。


 仕事中に後輩の方にさくらさんからメッセージが入っていたらしい。

 仕事が終わったら、うちでクリスマスパーティーをしようと。


 うん。仲が良いことだ。




実際はーーーーーー


「キュッキュッキュッ」

(あの女のことだから、私と彼が2人でクリスマスを過ごすのを全力で邪魔してくるに違いないわ)


 さくらさんはパーティーの準備をしながら思っていた。

 邪魔されるくらいならパーティーの名目で誘い、早々に酔い潰して帰してしまおうと。


 しかし、さくらさんは知らない。

 彼女が酒豪と呼ばれるほど酒に強いことを。



「キュー、キュゥゥウ。キュ!」

(今日終わったら、うちでクリスマスパーティーしない?抜け駆けは許さないから。イーブンでいきましょう)


 送信っと。


ーーーーーーーーー



 美味しい料理にお酒。

 弾む会話。


 みんなでパーティーを満喫する。


 時々、さくらさんの方から悔しそうな呻き声が聞こえてくるが、気にしたらいけないと思う。


「キュ…グルゥゥ」

(くっ、この女全然潰れないわ。化物じゃないの)


「先輩、このお酒美味しいですねー」



 そうだな。確かに美味しいけど、お前それ何杯目だ?


 後輩の後ろには空のワインボトルが6本転がっている。まさに酒豪である。



「さくらさん、チキンってもうないのか?」


「キュウ。キュキュ、キュウー」



 よし、通訳の出番だぞ。後輩!


「さくらさん、なんだって?」


「あと少しならあるらしいです。足りないなら、外にいる不躾な鳥を捕まえるって言ってますけど」



 外?捕まえる?



バサッバサッバサ!!!

『カァぁぁああーー』



 !?カラスの鳴き声?夜なのに?




「あの…先輩、ご飯も無くなってきましたし、そろそろ。クリスマスといえば…アレですよ。プレゼント…ちゃんと買ってきました…」



 カラスなんか気にしてる場合じゃないな。


「そうだな。俺もちゃんと準備したぞ」



ーーーーーーーーー


 恋する乙女は緊張していた。

 用意したマグカップが気に入ってもらえるか。

 優しい先輩のことだ。

 絶対に酷い対応はされないと分かっていても、不安になってしまうのは仕方ない。


(大丈夫。絶対気に入って貰えるはず。大丈夫よ)


 プレゼントを手に、顔を赤くして上目使いの可愛い年下の女の子。

 この破壊力は想像を絶する。

 大抵の男性には効果的だろう。


 

 目の前の男性も例外では無い。



(こいつ、こんなに可愛かったっけ?いや、顔は可愛いとは思ってたけど、これはなんか違う種類だ。なんだ?酒がまわってきたか?)


パシィィィッ


「痛っ!!」


 甘ったるい恋人同士みたいな雰囲気を黙って見ているさくらさんではない。

 尻尾を全力フルスイングだ。



「どうしたんですか?」


「いや、なんでもない。あれだ、プレゼント交換って言うのか?とにかくやるか」







〜メインイベント!プレゼント交換〜



「先輩これ!マグカップです!!開けてみてください!」

(うわー大丈夫かな。気に入るかな。内緒でおそろいのやつ、自分用に買っちゃったんだよなぁ。あざといなんて言わせないんだから)


 不安がっているように見えて、意外と図太い神経の恋する乙女だった。



ガサガサ。

 可愛くラッピングされた箱からは、濃い目の青色のマグカップが出てきた。

 少し重たくシンプルでしっかりした作りの、大人の男性が持っていても様になるものだ。


「ありがとう。大事に使わせてもらうよ」

そう言って彼はとてもイイ顔で笑った。


「あ…なんか、その顔だけで…もうお腹いっぱい…」


 笑顔にやられた乙女をジト目でカワウソが睨んでいた。

「……キュー」


「ちょっ、さくら先生!『どうせおそろい、あざといんだよ』とかなんてこと言うんですか!ソンナワケナイデスヨー。イヤダナー」


 さくらさんにはお見通しであった。




「良い色だな。どうしてこの色にしたんだ?」


「先輩、会社で青のネクタイをよくしているので、それに合わせてみたんです。ネクタイが薄めの青なので、マグカップは濃い目にしたんです」


……

…………


(明日から青色以外のネクタイを用意しなくちゃ)

さりげなく酷いことを考えているさくらさん。




「よし、じゃあ俺からはこれだ」


 渡してきたのはイヤリングだった。

 薄いピンクの天然石が使われた可愛らしいデザインで、若い女の子に人気のブランドのものだ。


「彼女でもないのに、アクセサリーはどうかと思ったんだが、他に良いのが見当たらなかったんでな。まぁ、嫌じゃなければ使ってくれ」


「………」


後輩は黙ったままうつむいている。



「どうした?」



「…………宝物にします…」


ボソっと噛み締めるように呟いた。




……


……





クリスマスイブ。

1組の男女が同じ屋根の下。

プレゼントを渡しあった。


普通これだけの条件がそろえば何が起きてもおかしくはない。



しかしここには、普通ではない存在がいた。







「キュー!!キュキュ!キュッ!ゥゥウウ!!」

(はい!良い雰囲気は終了!次は私の番なんだから!)



男と女と雌の聖夜。

次の話は25日までには更新します!

さくらさんのプレゼントが明らかになります。

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