四季 楓/2
見づらい、等ありましたらコメントお願いします。
気を付けているつもりですが、誤字脱字多いと思うのでよかったらこっそり教えていただけたら助かります。
◇◇◇
ガコン、と自販機からスチール缶落ちる。外気温と違い持っていられないだけ熱そうな缶。それを袖を伸ばした即席の手袋で持つ。
気持ちの良い音と共に甘い匂いが鼻腔に広がる。刻一刻と冷えていくココアを啜る音。
「暖かいなあ」
飲めば飲むほど心も体も休まるその甘さは、小学生の特権というものだろう。
隣接されたベンチに座り真冬の空を見上げる。一時間前まで夕暮れ色に色に燃えてた空は、いつの間にか紫を黒で塗りたくったような色の小夜。目が慣れてきたのか、遠くに転々と星々がまばらに散っているのが見えた。
はあ、と手に一息。ホットココアの熱はとっくに冷め始めていて手で持つと冷たさすら感じた。さっさと飲めばよかったという後悔も程ほどに。
結局持っていられず袖で持ちながら一気に呷る。喉から胃腸へ落ちていく冷たさは最早、毒となんら変わりはない。
飲み終わった缶をしばらく見つめ、おもむろに立ち上がりスローイング。ゆっくりと弧を描いたスチール缶はそのままゴミ箱へ。
ピーッ。三点先取のホイッスルと共に歓声が沸いた。
「なんちゃってね」
一人遊びも程ほどに。乗ってきた自転車を回収しに駐輪場へ。ブーツが雪を踏みしめる音が響く。どうやら勉強中に降ったのか駐車場が真っ白で彩られていた。
景色はまるで広大なキャンパス。
先程ひとり遊びは程々に、なんて考えたばかりだろうに。またもや遊びを考えついたのだろう。
冬季限定のナスカの地上絵を描きあげようなんて考えたのか。
駐車場の縁をグルグル回り始める。縁石で平均台。前へ後ろへ右往左往。もうすぐ出入口が見えて絵の構図も浮かび上がるころだろうか。
楓の口端がニコニコと上がっていった。
そんな苦労も知らずと車が一台、あざ笑うかのようにキャンパスを破いていく。一瞬のうちに黒のペンキで塗り立てられるのには時間はかからなかった。
湧いて出た楽しい遊びは、タイヤ痕で雪景色を侵していく光景を見せつけられ途端に萎えていく。
まるで先ほど飲んでたココアのように冷めていく楓の笑み。それを隠すためにか巻いたマフラーを口元に寄せ歩き出す。自転車は明日取りに行くことにした。
「もうすぐ中学生か……」
切り替えの早い子どもだ。もう違うことを考えていた。
予習、復習はしているつもり。でもアルファベットとか、xyzとか言われても実感はないけれど、慣れていかなければいけない。
ということで十五分の帰り道は暗記カードに頑張ってもらうことにした。視線はカードに落ち、捲っていく。意識はカード七割、他三割。
この時は大分疲れており集中力は半減したもいいところ。たぶん、それが悪かったのか。
――脚を滑らせる楓。
短く間抜けな声が漏れた。ずるりと聞こえたような気がするくらい綺麗に滑っていく。視界の先には二つ目がギラギラとこちらを狙っていた。言うまでもなく一台の乗用車。見ればさっきの車ではないか。
回避運動を試みるも、三メートル程の距離しかないのはどうにもならないのでショックに目を閉じる。
…………。
衝撃は来ない。もしかして、もう逝ってしまったのだろうか。ゆっくり目を開く。広がるのは一筋の大河ではなく一面の星空。
「えっ」
凡そ一秒の十分の一秒にも満たない悲鳴。車に跳ねられた訳では無く痛みもない。それなのに出てしまった悲鳴の正体は、気がつけば宙を舞っていた事の他ないだろう。
何がどうなったのか、あろうことか四季楓はガードレールを飛び越え空中浮遊を成功させていた。
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