エピローグ/
初投稿です。
小説家になろう、では処女作となるので至らぬ点も多いかと思いますがよろしくお願いします。
それでは、どうぞ。
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――月が二つの蠱惑的な空が世界を覆っていた。
まん丸のお月様はとても大きくて、燃えるような金色に照らされている。それは両手で覆っても溢れてしまうほど。
対して、まん丸のお月様は小さい。凍えるような銀色に陰り、手を伸ばせど伸ばせど遠のくばかり。
そんな景色を大木に寄りかかりながら見上げる。踏ん張っていた足から力が抜けていき、ぬるりとした感覚が大木に延びていく。息を吐くのも吸うのも辛くてヒューと、喉笛が鳴るたびに自身の生命力も失っていくようだった。
「――、――っ」
傍らには一人、啜り泣く少女。長い髪は反射して黄金にも、白銀にも見える。普段は太陽のように笑ってくれるのに、今日は大きな雨模様。心なしか、月も陰っていくようだった。
頭を撫でようかとも思ったがやめた。泣いてるこの子を慰めるにはそれが一番いいのだけれど生憎。三枚におろされ辛うじて繋がってるだけの腕では綺麗な髪を汚してしまう。
この子には申し訳ないことをしたと思っている。両親を、仮ではあったが親だった俺を。三人とも亡くさせる羽目になるとは。それもまだ十にも満たない少女。
ごめん、と呟くと自身から十年以上流れなかった透明な雫が落ちていく。
「ごめん……ごめんな。俺、君を守れなかった」
口を動かすたび、涙が流れるたびに大事なものが溢れていくようで頭がぼやける。
釣られたのか少女は嗚咽を漏らし抱きついてくる。血で濡れた身体に縋り付いてくるせいで洒落た装いも汚れてしまった。せっかく気を使ってやったのに。これじゃあ台無しだ。
「……汚れるよ」
「――っ」
そんなもの知るかということだろうか。さっきよりも強く抱きついてくる。
――なら、もう、いいかな。
諦めて少女を抱き寄せる。力入らないけど、めいいっぱいの力で抱くとお互いしゃくり上げるのだった。
もうこの子の名前すら思い出せないけど、いつも暖かかった事だけは覚えている。目だってもう見えないけど優しい笑顔は忘れない。
「――、――!」
――――どうか、俺が居なくても、どうか、この子にだけは幸あれ。
やがて微睡み、静かに彼は息を引き取る。変化に気づいたのか、少女は涙を溜めながら必死に揺する。
揺する。
揺する。
でも動かない。紐の切れた操り人形が動く道理がないのと同じ。人は生命力という繰りが無ければただの人形と変わらないのだから。
――――夜半、薄暮れの森で少女の悲鳴が絶叫した。
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見づらい、等ありましたらコメントお願いします。
気を付けているつもりですが、誤字脱字多いと思うのでよかったらこっそり教えていただけたら助かります。