第二話 最奥学園 3
その人が教室に入ってくると周りが騒ぎ出した。
来客者とは我が姉の紗癒だった。顔を見ると申し訳なさそうに苦笑いして、手にはピンク色の包みを持ってこちらへ来た。
「どうし」
「ごめん断れなかったの」
俺の言葉遮っていきなり謝罪?皆見てるからやめて欲しいんだけど。
「えっと…なにがでしょう?」
「はいこれ……渡したからね」
そう言って手に持ってたピンク色の包みを机の上に置いた。
「紗癒、これは?」
「え?……その……」
「ん?」
「お弁当だよ」
わかってる お弁当だってことはわかってるよ 俺が聞きたいのは
「誰のですか?」
「えっと……真央のかな〜」
「…………」
その名前を聞いた途端、寒気が走った。
真央と言う人物は、本名 美咲 真央[ミサキ マオ] 三年生で紗癒の友達 はっきり言って変態だ
「ナツくん?大丈夫?」
どうしよう友達の名前を言っただけで彼が固まってしまった。
「美咲…先輩の…弁当?…毒?」
「入ってないよ!しっかりして!」
真央に至ってそんなもの入れないよ……多分。
「あの〜紗癒姉?」
「え?あ、ハルくん」
紗癒姉と呼ぶのは幼馴染みの晴斗君だけだ
「どうしようナツくんが!」
「何があったんっすか?」
「えっと、お弁当を持ってきたんだけど」
「紗癒姉がつくった?」
「う〜うん違うよ」
言っとくけど私は料理作れません。そりゃナツくんの為に作ってあげたいよ?でも私が作るとおいしくなくなるんだもん、しかもナツくんの方が料理上手なんだよ?やる気なくすでしょ?
「真央が作ったの」
「え?真央って……美咲先輩ですよね?」
「うん」
「でも美咲先輩の手料理なんて男共にとって夢のまた夢ですよ?それをどうして夏紀にあげちゃうんですか!?」
そんな力説されても困るよ。それに私、女だし
「元々ね真央がナツくんに渡してきてって頼まれたの」
「そ、そんな…憧れの美咲先輩まで」
なんか呟いていて正直怖い
「えっと、ハルくん?」
「夏紀の女ったらしぃーーーーーー!!」
そう叫んで彼は教室を出ていった。ホント何がしたいのかな?
* * *
何か大きい音で我に返ると隣で紗癒が教室の出入り口の方を見ていた。
「何かありましたか?」
「ふぇ!?あ!ナツくん!」
紗癒、今すごく変な声でたけど、って抱きつくなよ!胸があたってるって!あ、すげー柔らかい、って俺は変態じゃねー!
「さ、紗癒!離れてください!」
「別にいいじゃない、姉弟なんだし」
いや姉弟だからって抱きついていいわけねーだろ。って言うかかなり睨まれてるんですけど、特に男子から。一応僕の姉ですよ?
(仕方ない強行作戦に移るか)
離れない紗癒の耳に俺の口を近づけ警告した。
「今すぐ離れろ、でなきゃ」
「は、はい!」
これが一番効くらしい、この後に"嫌うぞ?"って言うともう少し効き目があるって心優が言ってたな。
「とりあえず、状況を説明してもらえますか?」
「はう〜、ナツくんが怖い〜」
「瑞穂か楓、見ていたならお願いします」
紗癒使えないし
「「え゛っ!!」」
そんな驚かなくても、っていうかお前ら普通に見てたろ
「あ!ボク用事あるんだった」
そう言いつつ颯爽と教室を出て行く[逃げてく]
「あ!楓ずるい」
「では瑞穂、お願いします」
「は、はい」
っていうかもう時間無いじゃん!飯が食えなくなる
「か、簡単でいいので」
「え、うん?えっと紗癒ちゃんが美咲先輩のお弁当を持ってきて、夏紀くんが固まったの」
美咲先輩?なぜあの人が俺に弁当を持ってきたかわからなかった。ってか説明ホント簡単だな
「紗癒、言付けは?」
「んにゃ?えっとね…お箸を使って食べて、持ってきてね♪だって」
箸使うってどういうことだ?それと紗癒、何故に音符?うわっ!男子すごく見てるよ、ちょっと引くわ〜
「わかりました。お礼はこちらから言いますので、帰って大丈夫ですよ?」
「え〜それだけ?お別れのキスは〜?」
なんでそういうこと言うんだよ?ただでさえ注目の的なのにそんなこと言ったら、ほら睨んでるって
「紗癒…さん?」
「し、失礼しましたー!!」
そう言い逃げるように教室を出ていった。