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第一話 出逢い 3

横になってから数分くらいたった後、ふと思い出した。



「あれ?」



そういえば心優が、祖母のところに行くって言ってなかったか?祖母のところと言っても病院だ。俺の祖母は入院しているから、詳しくは知らないけど数ヶ月前に体調をくずして、ほとんど寝たきりだったという。でも母が言うには最近大分良くなったらしい。


俺は祖母が入院してから一度も見舞いに行ったことがない。いつもバイトが重なって行けなかったから、今日が初めての見舞いだ。



「行く準備でもするか」



そう言って準備をした。準備と言っても椅子に掛かってる衣服に着替えると言う単純作業だけど…。


着替え終わり、ドアを開けようとしたらノックの音がした。



「は〜い」



返事をした後にドアを開けると、そこには紗癒がいた。



「どしたん?」


「着替え終わった…ね。下で待ってよっか?」


「ん〜、いや、俺もう車に乗ってるよ」


「え?うん、わかった」



言った後、紗癒より先に一階に下り、玄関に向かい靴を履いて外に出た。


外に出て視界にはいるのは、青い空。やっぱり今日は凄く天気がいい。



「う〜ん」



外で伸びをした後、鍵が開いている車に乗りこんだ。




さっきまで寝ていたのに、車に乗ってから5、6分ぼーっとしてると睡魔が襲ってきた。



「ね、眠い……」



意識が朦朧とするなか、いろんな音が耳に入ってきた気がする。


玄関のドアが閉まる音、紗癒と愛の喋り声や笑い声、車のエンジンがかかる音など、これらの音を聞きながらいつの間にか寝ていた。






* * *






気がつくと草原にいた。回りには何もないが、目を凝らしてよく見ると人がいる。空と重なっていて見えにくいが確かに人がいる。


その人に近付くにつれ分かったが、どうやら女の子のようだ。その子の側まで行くと、声をかけてみた。



「あの……」



声をかけても返事はない。座わりながらずっと空を見ている彼女の顔を覗き込むと目が合った。



「大丈夫ですか?」



なぜこの言葉を言ったかというと、顔が青白く気分が悪そうで今にも倒れそうだったからだ。



「優しいんですね」



初めて喋ったときには驚いたが、それ以前にいつまでも聴いていたいと思う凄くきれいな声に驚いた。



「なにが?」


「貴方は私の顔色見て心配されたのでしょう?」


「えっと……その」


「ふふっ、気にしないでください、もともとですから」



その子は普通してても可愛いのだが、笑ったときの顔はすごく可愛かった。



「籐波夏紀さん」



彼女は微笑んだまま、俺の名前を呼んだ。



「ん?えっ?…あれ?俺教えたっけ?」


「いえ」


「じゃあ、なんで?」


「ふふっ、だって私は……」





* * *





「ナツくん、大丈夫?」



紗癒が俺の顔を心配そうに覗き込んでいる。



「あれ?……俺寝てた?」


「うん。ごめんね起こしちゃって、でもナツくん凄くうなされてたから」


「え?」



俺がうなされていた?綺麗な草原で綺麗な女の子と喋ったという夢を今でも鮮明に覚えてる。



「どんな夢だったの?」


「確か草原で女の子と会話してる夢なんだけどね、笑顔が凄く可愛かった」


「へぇ〜、それは良い夢だったわね?……詳しく教えて?」



紗癒は笑っているのだが、顔が引きつっていて怖い。そして俺は今気づいた。紗癒に女の子の話は駄目だって言う事を。昔、中等部二年生の頃に可愛い女子がいるって紗癒に言ったら、目の色変えて質問責めにされた。あれは怖かった……。



「いやでもさ、夢の話だよ?」


「いいから答えなさい、お姉ちゃん命令よ」



お姉ちゃん命令って、なんだよ?ってか紗癒さんが睨みつけてきて怖い…。



「分かったから、睨むの止めて下さい」



それから俺は、簡単にその女の子と夢の話をした。夢の中で気付いたら草原にいたこと、そこに綺麗な女の子がいたこと、その子と喋ったことや声がきれいだったことを説明した。その間紗癒は、相槌をうったり睨んだりしてた。



「ホントにそれだけ?そういう夢でうなされるかな?」


「まぁ、ちょっと忘れちゃったけど」



俺は紗癒に嘘をついた。そしてうなされた理由も思い出した。あの後、夢の少女が最後に言った言葉のせいだ。





* * *





「ふふっ、だって私は………死神ですから。だからと言って貴方の命は狙っていませんよ?でも貴方の大切な人、いや大切になる人と言った方が適切ですが、その人の命はもらいますけど」



この少女は自らを死神と名乗った。そして俺の大切な人の命をもらうと言ったんだ。


俺は困惑したよ?こんな綺麗な少女が死神だって?何が死神だよ、嘘だろ?最初は笑い飛ばすつもりだったんだが、その少女は嘘をついてる瞳じゃなかった。



「はは、何言ってんだよ?」



彼女は溜め息を吐いてある物を俺に見せてくれた。



「これで信じますか?」


「っ……!!」



彼女が見せてくれたのは"大鎌"だった。黒く、幻想的で綺麗という言葉がよく似合う"大鎌"。


だけど彼女はどうやったか分からないけど、消すようにしまった。



「あまり好きじゃないんですけどね」



そう言って彼女は綺麗な笑顔を見せた。……ふざけんなよ、なんだよそれ?



「あんたは、それで人を?」


「まぁ、そうなりますね」


「ふざけんなっ!なんで笑ってんだよ!?殺して何とも思わないのか!?」



「ナツくん!!」


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