最終話 お礼の言葉
あれから、晴斗に話してからまた少し時が経ち、今日はこの前言った"予定"の日。
それと、あの後晴斗は何も言わなかった。その後の三時間目も普通に出て、先程にあったことも忘れたかのように、瑞穂と楓に怪しまれもせずに接してきた。まぁ俺に何かあったのか聞かれたけどね?適当に誤魔化したけど……。
そんで今日はさっきも言った通り"予定"の日。今日までの時間、俺も普通どおりに過ごしてきた。瑞穂や楓、紗癒や心優にも、気付かれないように……。
そう、今日で紗癒と心優との関係も、終わってしまう。いや、元に戻るだけ。
紗癒達とは元々は赤の他人で、会うことも関わることもなかったのかもしれない。でも籐波家の人が繋がりを持たせてくれて、今の俺がいるわけだ。
晴斗に話してからの時間、やっと気付いたんだ。籐波家での父親、柳[リュウ]さん。母親の瞳さん。感謝しても感謝しきれない、大切なものを貰った。紗癒に心優、それに晴斗と瑞穂に楓や勇也との思い出。みんなに出逢えたのも籐波の両親のおかげ。確かに、与えられた生活かもしれないけど、自分に嘘をついていたけど、結局はそれが幸せだったんだ。みんなとの繋がりが、これ以上ないくらい、幸せだった。
……だからこそ、断ち切るんだ。これ以上、なにも知らない「籐波 夏紀」を演じるのは止めて、母さんの名字「南 夏紀」として、籐波の家に恩返しがしたいから。あのままだったら母方の親戚、あるいはどこかの孤児院での生活で、つまらない人生を送っていたかもしれない。それを、知り合いの子供っていう理由だけで、俺を養ってくれた両親に。
知ったときは全然意味が分からなかった。
成長していくに連れ意味も分かり、絶望的でずっと悩んでいた。
だけど今では、絶望が感謝に変わった。
家族と思ってた人達が家族じゃなく、俺は赤の他人。でも裏を返せば、赤の他人の俺をここまで育ててくれたんだ。
ちょっと考えれば簡単なことなのに、そのことに気付くのが遅すぎた。もっと早く気付いていれば、悩まなくても済んだのかもしれない。
だけど、そんなことはもうどうでもいい。
今は、俺に繋がりと幸せをくれたみんなに伝えたいんだ…。
柳さん。あまり喋らなかったけど、柳さんが俺のこと心配してたこと伝わっています。それに、本当の子供じゃないのに、今まで育ててくれて。
瞳さん。まずは、ごめんなさい。学校とかで悪いことして、迷惑をいっぱいかけてしまいました。でも叱ってもらって嬉しかったです。本当の母親みたいに接してくれて。
紗癒姉。今は昔の呼び方で呼びます。紗癒姉と一緒にいると、とても楽しかったです。まぁ時には冷や汗まじりでしたが…。とにかく、俺にとっては優しくてとても頼もしい姉さんでした。
心優。いつも俺に笑顔を向けてくれてたな。心優が困って、俺に相談してくれたとき嬉しかったよ。家族の輪を明るくしてたのも心優でさ、心優のおかげで楽しい生活を送れました。
晴斗。なんか弄ったっていう記憶の方が多いけど、いつでも俺の味方でいてくれた。晴斗にも感謝でいっぱいで、何言ったらいいか分からないけど、これだけは言える。お前は最高の親友だよ。
瑞穂。瑞穂には俺等のことで、よくとばっちり受けてたよな。迷惑掛け過ぎて悪かったな。最近少しだけ疎遠気味な気がするけど、それでも俺は瑞穂と一緒にいれてよかったと思ってる。
楓。天真爛漫って言う言葉がよく似合う子だったな。でも昔は違ったよな?凄く大人しくて控えめな子だった。まぁ俺は今の方が似合ってると思うぞ。楓がいるだけで学校生活が楽しかったよ。
勇也。中等部の時、俺と晴斗と連んでたとき、教師に言われてたよな?あんな奴らと友達になるなって、でもお前は否定してくれてさ、凄く嬉しかったんだ。恥ずかしくて言えなかったけどな…。
最後に蒼空。蒼空との過ごした日々、短かったかもしれないけど、楽しかった。蒼空に出逢えて本当によかったと思ってるよ。
実はさ、こうして踏ん切りがついたのも、蒼空のおかげなんだ。蒼空と話していくうちに、本当の自分が恋しくなったって言うか………まぁ、蒼空も今まで逃げないで生きてきたのに、俺は何やってるんだろうと思ってさ、決心がついたんだよ。
だからみんな、俺に出逢いをくれて、繋がりをくれて、幸せをくれて、愛を教えてくれて、思い出も沢山もらって………。
「……ありがとう。みんな」
こんにちは、作者の四季です。お話はの方は、取り敢えずこれで終わりということになります。始まって約7ヶ月、早かったような長かったような、微妙ですね。それでも、こんな駄文を読んでくれている人がいることに、感謝と驚きです。え〜っと本編はもっとあるんですけど、勝手ながら私事都合上、時間がなくてですね、完結という形で休載させていただきます。ほとんど……って言ってもいないと思いますが、この続きが気になる。読んでみたいという、心お優しい人は、小説評価/感想等でお願いします。それでは、今まで読んでくださったみなさん。本当にありがとうございました。またお目にかかる日を願っています(私が)。長々とすいません。




