第四話 真実 4
「俺は別にいいぞ?そっちの方が楽しそうだしな」
「ボクもさ〜んせ〜い!」
「私も西城さんとお話してみたいな?」
っ………良かった。これで一つ心配事が減った。晴斗達がいるから、俺がいなくなっても蒼空は学校で一人にはならない。学校での心配事はこれでなくなった。残すは紗癒と心優のこと、それと今度行く場所だけだな…。
俺がそんなことを思っていると、晴斗が口を開いた。
「大体よ〜、俺がそんな良いことを断るわけないだろ?」
「え?なんか良いことでもあるのか?」
「ふっふっふ。西城さんと親しくチャーンス!」
今の台詞を聞いて、やっぱり晴斗だけはちょっとな、瑞穂と楓も分かるくらいに引いてるしな〜。なんて思ったけど、確か晴斗だけには"あのこと"言ったんだった。多分そういうだらしないことを言って、俺の注意を逸らせたいんだろう。だが悪いけど、もう決めたんだよ。
「ありがとうな、晴斗」
「「???」」
「っ!……夏紀、ちょっと来い」
瑞穂と楓が不思議そうに俺を見つめる中、晴斗が俺にそう言った後、教室を出て行った。
俺も無言で立ち上がり、先に出て行った晴斗について行き教室を出た。
やっぱちゃんと話した方がいいのかな?ただ…………転校するかもって言っただけだしな………。
どちらも一言も喋らずに歩いている間、俺はそんなことを考えていた。
確か蒼空が来てからの一週間の一日、その日は蒼空が学校を休んだ日で、昼休みの時に晴斗と二人で飯を食ってたんだ。晴斗は誰かとメールしているのか携帯電話を弄くりながら飯を食ってて会話もないし、俺は暇だったから空を見ながら、考え事をしてた。そうしたら、その事をつい口に滑らせたことから始まったんだ。
「そろそろ………出てく時、かな……」
俺が呟いた言葉を晴斗は聞き逃さなかったねか、携帯電話を弄るのを止めて、不思議そうな顔で俺のことを見ていた。
「夏紀、それ、どういう意味だ?」
「え?……いや、なんでもない」
「隠さずに言え、どういうことだよ?」
この時の俺はどうかしてたのかもしれない、適当に誤魔化せばよかったものを、何故か話してしまったんだ。
「瑞穂や楓に黙ってるなら話す」
「………分かった」
二人に黙ってるならって理由で話したんだ。だけど全部を話した訳じゃない。ただ、もしかしたら……いなくなるかも、転校するかもしれないとだけ、晴斗に言った。
二時間目の授業開始のチャイムが鳴る中、晴斗に連れて来られたのは学校の屋上。
晴斗達も俺が鍵を壊したのは知っているし、今では俺らの良いたまり場になっているけど、最初入ったときは凄く汚かった。よくわからないゴミとか、どこからか舞い上がった葉っぱで座る場所もなかった。それで少しだけ掃除をして、その上にブルーシートを敷き座れる場所を作ったんだ。
それはほんの一ヶ月くらい前、やっぱり時間が経つのは早い。
俺がシートの上に寝転がり、仰向けで空を見ながら思ってると、晴斗がフェンス越しに街並みを見ているのが視界に入り、その後に俺が寝ているシートに近付き腰を下ろし、俺も体を起こして、向き合う感じで座った。
「夏紀、やっぱ納得できねぇよ」
「なにが?」
「なにがじゃねぇだろ!?この前言った転校の理由、まだ聞いてない」
転校……はは、ホントは転校じゃないんだけどな。やっぱり誰かには知ってもらう必要があるかな?………だとしたら一番良いのは晴斗だ。瑞穂は押しに弱いから聞かれたら言っちゃいそうだし、楓は感情に流されて何するか分からない。晴斗はいつもふざけてるけどちゃんとしたことには凄く真面目だから……。
「晴斗、今から言うことは絶対に秘密にしといてくれ」
「分かった」
…………決めた。晴斗には言っておこう。俺の幼馴染みであり一番の親友だ。それに晴斗には、このことを知っていて欲しいんだ。
多分これを言えば、晴斗の俺を見る目が変わる。だけどそれは承知の上、俺の決心だからこそ言うんだ。
「最初に言っとく、これは俺の問題だからお前は気にするなよ?」
「ん?……あ、ああ」
狡いよな?自分で言うのに気にするなって、これを知れば気にするに決まってるのに……。
悪いな……晴斗。
「まず…………俺と、紗癒達は、姉弟じゃないんだ」
「……は?どういう意味だよ?」
「そのまんまの意味。俺はあの家族にとって、赤の他人ってことなんだよ」
俺が淡々と喋る中、目に見えるように困惑する晴斗。当たり前だよな、ずっと一緒に暮らしてて姉弟じゃないんだぞ?俺も知ったときは冗談としか思えなかったもんな…。
「話を続けるぞ。そんで俺の、ホントの家族のことな?…………父親は調べたけど全然分からなかった。んで母親は………俺が産まれて何日か経った頃、病院で死んだらしい。病院の屋上から飛び降り自殺だってさ」
「っ…………」
「これは全部、俺が中学に上がる前に知ったことだ」
きっかけは些細な事で、小学生の頃に同級生に言われてたことから始まったんだ。




