表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/25

第四話 真実 3

チャイムが鳴り、それと同時に教師が号令を掛けて授業が終わった。


一時間目の授業の教科書とノートを片付け、二時間目の嫌いな英語の準備をしていると、前の二人がほぼ同時に振り向き、隣から変な視線を感じて見てみると瑞穂が何か聞きたそうな目で訴えてくる。



「な、なんか用か?」


「ああ。まず俺からな、お前ら付き合ってるのか?」



……はぁ〜。またこれだよ。男女が一緒にいるだけで、付き合ってるのかとかどうのとか。なんでそういうことを聞くんだろうな、例え付き合っていたとしてもそれを聞いて何かあるのか?まったく面倒くさい。…………ん?まてよ、俺が聞かれてるなら蒼空にも聞く奴はいるよな?だったら、悪いことしたな〜。ただでさえ学校に来る日が少なくて慣れてもいないのに、そんな下らない噂がたってるならますます来たくなくなるよな……。あとで謝っとくか。



っと、話が逸れた。今は晴斗と喋ってたんだな。



「蒼空は友達だよ」


「…そ、そうか」


「はいはい!じゃあ次はボクね?西城さんってどんな人なの?」



俺の答えになにか腑に落ちなさそうな晴斗。何が不満なんだろうと思っていたら、次は楓がそう聞いてきた。


蒼空か…………どんな人だ?俺が蒼空と関わって分かったことは、まぁ、少し口調が変わってるだけで、あとは普通の女の子だ。蒼空を簡単に表せば……。



「おもしろい子だぞ?少し変わってるけど」



そう。おもしろいし、一緒にいて楽しいって思える、良い子だよ蒼空は。本人の前では恥ずかしくて言えないけどな…。



「へ〜、意外。西城さんって頭良いし難しい人かな〜って思ってたけど、そういう人じゃないならボクも友達になりたいな〜」


「ああ。お前等も会ったら一声でも掛けてやれ、そしたら蒼空も喜ぶし」


「会ったらって、いつもお前と一緒で声の掛けようもねーんだよ!」



確かにそうだけど、いつも一緒って訳じゃ………だな。考えれば、授業中やトイレとか意外ほとんど一緒だな。それなら付き合ってるのか?とか聞くよな普通。ても、俺が一緒にいても声ぐらい掛けられるだろう。朝だったら"おはよう"とかね?………だけど、晴斗と蒼空が話してたらムカつくな。なんていうか蒼空にきたない虫がついたというか、そんな感じがしてムカつく。



これはあれだ。晴斗は無視しよう。なんとなくムカついたから。



「瑞穂はなにか聞きたいことあるか?」


「私は……えっと」


「ちょ、ちょい待て!俺のこと無視かよ?」



ちっ、バカ晴斗が、今は瑞穂と喋ってんだよ、静かにしてろ。ってな感じで睨みつけたら、すんなり黙った晴斗。ホントに何がしたいんだろうね?意見があれば貫き通せってんだよ。まぁ、仕方ないか、晴斗だしね……。



「ほらミズ、聞きたいことあるなら聞きなよ?」


「あ、うん。夏紀くんにとって、その、西城さんはどういう人、かな?」


「あ!それボクも聞きたいかな〜、ねぇいいでしょナッちゃん?」



いいでしょって言われてもな……瑞穂の質問はちょっと難しい。つまりそれって俺が蒼空をどう想ってるかだろ?……蒼空は、大切な友達だ。……でもなんだろう?友達って言うより、もっと違う感情がある。よくわからないけど友達って想う感情と、他の感情があるってのは確かだ。まぁ、自分でもわかってないからそういう事は置いといて、取り敢えず大切な人なんだ。これも確かだ。



「蒼空は、大切な友達だよ」


「夏紀………こんなこと聞くのはアレだってのはわかってるけど、お前にとって、その西城さんと俺達、どっちが大切だ?」



これも難しい質問だ。しかも晴斗の質問。見ると真剣な顔をしてるし、冗談とかじゃ無いんだろうな。



蒼空と晴斗達か………考えるまでもなかったな。答えは複雑だけど、簡単だ。



「もし、晴斗達と他のクラスの人達、どっちも死にそうだけど、俺はどちらかしか助けられないって言う状況の話。俺は迷わず晴斗達を助ける。…………だけど、晴斗達か蒼空って言ったら……選べない」


「っ………そっか、わりーな、変な質問して」



その質問は確かに野暮だけど、晴斗の気持ちも分かる。俺達は約十年という長い年月を共にした。だけど蒼空は、俺と関わって一ヶ月にも満たないのに同じ立場にいる。


でも晴斗。複雑なのは分かるけど、俺達にはその十年分の思い出がある。だけど、蒼空にはそれがない。ましてや蒼空には思い出という思い出がない。そんなの哀しすぎるだろ?だから作ってあげたいんだよ。今からでも遅くないし出来ることだからさ……。



「それでな、みんなに頼みがある。………蒼空を、俺達の輪に入れて欲しいんだ」



これは本人が望んだことじゃなく、俺が望んだこと。今のうちに出来ることを、楽しくてもつまらなくてもいいからみんなでバカやって、思い出を、みんなで共感できる思い出を沢山作るんだ。


その時笑えないことでも、成長して大人になったら、笑えるようになってる。そんな思い出も、みんなでいっぱい作ってさ……。俺がいなくなった後でも、笑えるように……。



だから、それが今、俺のやるべきことなんだ……。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ